はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「新米に感謝」

2011-09-28 21:09:03 | 岩国エッセイサロンより
2011年9月28日 (水)

   山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 科学技術が発達し、機械化が進んだ今日でさえ、農作物の収穫は天候に左右されている。今治市に住む叔母が、今年もふるさとの新米を送ってくれた。80歳近い叔母夫婦が丹精して作ってくれたお米だ。

 小さいころに手伝いをした、黄金色に色づいた田んぼの稲穂が目に浮かぶ。叔母の家はわが家からひと山越えた所にあり、父が手伝いに行くときは単車の後ろに乗って必ずついて行った。

 ついて行っても小学生の私にできることはあまりない。刈った稲をよいしょよいしょと稲架(はざ)まで運ぶのが私の役目だった。汗をかきながらも楽しそうにしていたら、いとこが言った。「仁美ちゃんは、たまに来て手伝うだけだから楽しいかもしれないけれど、僕はいつもせんといけんのだから」。その言葉が、40年以上たっても忘れられない。

 保育園のころ、「一粒のお米にも万人の人の苦労がこもっています。感謝をこめていただきます」と言っていたのを、今でも覚えている。炊きあがった新米を感謝をこめていただいた。

   (2011.09.25 愛媛新聞「へんろ道」掲載) 岩國エッセイサロンより転載