はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

「台風一過の通学」

2011-10-21 21:31:42 | 岩国エッセイサロンより
   岩国市  会 員   片山 清勝

台風で錦帯橋が流失した翌年、その下流の橋も流れた。橋の代わりは渡し舟。小学生は集団登校。初めのころは、舟が沈まぬかと恐れ、黙って身動きもせず、じっと座ったまま。舟は弧を描いて向こう岸に着く。6年生が先に降り、下級生の手を取って降ろした。

 後に仮橋が完成。船頭さんにみんなで「ありがとう」と言った。あれから60年余。増水した流れを見ると思い出す。その乗り場への道筋は宅地に変わり、当時をしのぶものは消えた。変わらぬのは、錦帯橋の下を通り抜け、流域に恵みをもたらす清流。永遠に続いてと願う。
  (2011.10.21 毎日新聞「はがき随筆」掲載)
岩國エッセイサロンより転載