はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

熟した柿の実

2011-10-27 22:07:27 | はがき随筆


 庭に柿の木がある。秋風が吹き始めると葉が落ち実も落ちる。
青い実は割れて中をさらしているが、
熟した実は地面にベタッと赤い実を広げて落ちている。美味そうだ。
中には運良く、そのまま落ちている実もある。
 これをそーっと拾って、
へたの方から両手でそーっと割って熟した部分を口に入れる。
柔らかく甘い実が口いっぱいに広がる。
両手には、まだ皮にくっついた実が残っている。
また、そーっとなめるように食べる。今朝も、
ほうきを持ちながらの運の良い熟した実を食べた。
 明日もまた朝の楽しみを期待しよう。
  出水市 畠中大喜 2011/10/27 毎日新聞鹿児島版掲載

約束のハワイ

2011-10-27 21:58:11 | はがき随筆
 「ハワイは一番最後でいいよね」「そうそう、いつでも行けるからね」。書棚に並んだアルバムを眺めていたら妻との会話を思い出した。アルバムの内容は「怪しい探検隊(嫁いだ一人娘と私たち夫婦のこと)」の世界50カ国漫遊の記録である。小心者の「怖いもの見たさ」でイエメン・キューバ・ジンバブエ・チュニジアなどを10年ほどの間に駆け足で巡った。未知の世界へ足を踏み入れるドキドキ感がたまらなかったが、もう10年間途絶えたまま。果たして妻との約束は実現できるだろうか?
 急速に「好奇心」の衰えた自分に問いかける日々である。
  霧島市 久野茂樹 2011/10/26 毎日新聞鹿児島版掲載

赤と黄の競演

2011-10-27 21:51:01 | はがき随筆


 彼岸花の赤と黄色が競演している。
例年だと、赤が咲き終わったころ黄色が咲くのだが、
今年は赤がまだ頑張っている間に黄色が咲き出したのだ。
 道路の反対側の釣具屋さんの奥さんが、
店から出てきてカミさんに声をかけてきた。
 「ヒガンバナがよく咲いていますね。毎日楽しませてもらっています」
 「ありがとうございます。ヒガンバナも喜んでいます」
 道路の向こうとこっちで、カミさん同士が声を張り上げて話し合う。
こんな様子を、スーパー帰りの奥さんたちが、にこやかに眺めながら通り過ぎる。
  西之表市 武田静瞭 2011/10/25 毎日新聞鹿児島版掲載 写真は武田さん提供

「色あせぬ友の輝き」

2011-10-27 15:27:36 | 岩国エッセイサロンより




2011年10月27日 (木)

  岩国市  会員  吉岡 賢一

 この秋、五十数年ぶりに本格的な稲刈りに汗を流した。同級生の友の作業の手伝いなのだ。
 彼は農家の養子だが、繊維製品会社に勤めた後、文字通り定年後の六十の手習いで、約5千平方㍍に及ぶ米作りに挑んだ。
 その悪戦苦闘ぶりを同級生が集まる飲み会のたびに聞いていた。
 
 昨年までは「あまり無理をするなよ」と冷やかし半分で終わっていた。
 今年4月、そろそろ古稀を迎えるに至り、彼らと語らって「体力減退はお互い様。少しでも手を貸そうではないか」と手伝うことにした。

 私の場合、本格的な稲刈りは小6の時以来のこと。足手まといにならないようにすれば、枯れ木も山のにぎわいだ、それらしい仕事があるだろうと開き直ってもう1人と一緒に臨んだ。

 先月末、現場に着くと「これがあんたたちの仕事」とカマを渡された。
 コンバインがターンしやすいように田んぼの四隅を手で刈り取る。
 「こうやれば簡単だから」と3株か4株刈るのを教わった。手伝った2人の作業は夕方まで続き、16カ所も手で刈り終えた。
 「ありがとう、お陰で仕事が3倍はかどったよ」と彼の声は弾む。
 こちらは体調回復に3日はかかったが、あの笑顔ですべて帳消し。

 出会いから半世紀以上。愚痴も自慢も織り交ぜて、いまなおさりげなく寄り添える友は、稲穂に勝る黄金色の輝き。

         2011.10.27 朝日新聞「声」 テーマ「親友」 掲載 岩國エッセイサロンより転載

秋から冬へ

2011-10-27 14:01:33 | ペン&ぺん
 ──ススキの開花を観測しました。
 そんな一文を、鹿児島地方気象台のホームページで見つけました。日付は10月14日です。冷房も暖房も不必要。ススキを揺らす天然の秋風が心地よい季節ということでしょう。
 ススキの開花などは、生物季節観測というそうです。動植物の季節変化を観測し、その結果から巡る季節の進み具合を察するのが目的とのことです。
 ススキの場合、葉の根元、サヤの部分から出てきた穂の数が全体の2割ほどに達した段階が開花日。14日の開花は昨年より1日遅く、平年の9月25日よりも3週間ほど遅れています。秋が深まるのが今年は遅かったのでしょうか。
  ◇
 秋と言えば、スポーツの秋。今年も10月29日から全国高校ラグビーフットボール大会の県予選が始まります。合同3チームを含む24校18チームが出場し、年末から年明けにかけて東大阪市の近鉄花園ラグビー場で開かれる全国大会を目指し、熱戦を展開します。
 昨年の県予選では、大口高校が29年ぶりに決勝に進出し、決戦は鹿児島実業戦。破れはしたものの序盤は一時リード。私も会場にいて、大いに盛り上がりました。
 今年も大口高校はシード校の一角に入っています。今年は、どのチームが “台風の目„になるか注目されます。
   ◇
 ところで、深まる秋は近づく冬かもしれません。20日の朝刊に「冬の電力 九電ピンチ」の記事が掲載されていました。12月には玄海原発、川内原発の全6基が稼働停止するとみられ、来年1月には電力供給予備率がマイナスになると指摘した記事でした。
 冬の全国大会を目指す高校生たちの健闘を期待しつつ、こちらも寒さを忘れる節電の冬支度を考えてみますか。

  鹿児島支局長・馬原浩 2011/10/24 毎日新聞掲載