はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ソウメンカボチャ

2012-08-30 15:58:43 | はがき随筆


 春、ソウメンカボチャの種をもらい、まいた。初夏にダイダイ色の花が咲き、初めて受粉の作業をしてみた。実は日ごとに大きくなり、淡緑色のウリになった。7月になると成長は止まり、淡黄色のつるりとした肌は収穫の合図だろう飼う。迷いながら収穫。1.5㌔あった。輪切りにすると渦のようなスジが薄く見える。泡は淡黄色のそうめんになって解けた。その不思議さ。自然の造詣に驚いた。
 ソウメンカボチャの名の由来に納得。三杯酢で食したが、カボチャの味と、シャキッとした食感がいい。
  出水市 年神貞子 2012/8/31 毎日新聞鹿児島版掲載

おイモさん

2012-08-30 15:50:18 | はがき随筆


 中学の同期会で旧友が「学校の昼食時間が一番つらかった」と語った。彼は兄弟が多く、弁当を持たせてもらえず、朝食時間には小学校の裏山に逃れていたという。
 戦後誰もがひもじい思いをした。当時なんとか命をつないだのはサツマイモのお陰であり、私はおイモさんと呼んでいる。
 小学校では豚を飼っており、豚の当番は楽しみだった。イモをふかして豚に与えたが、私たちは先生の目を盗んで、イモをむさぼるようにして食べた。
 昭和23年に学校給食が始まった。脱脂粉乳とおイモさんの味は忘れることはできない。
 鹿児島市 田中健一郎 2012/8/29 毎日新聞鹿児島版掲載

「おみやげは帰った」

2012-08-30 15:32:41 | 岩国エッセイサロンより
岩国市  会 員   安西 詩代

お盆に息子たち5入家族が墓参りに来た。わざと「おみやげはないの」と聞くと、間髪入れず息子と嫁が年の離れた5歳の孫を指さした。「おじいちゃんが可愛い孫と一緒にお風呂に入れるので、これがおみやげ」と答える。
「おみやげなら置いていってね」。本当は困るけれど言ってみた。「それはできません。次回も使い回ししますので……」と大笑いになった。
昔おみやげだった上2人の孫も、今では欲しい物を買ってもらうのが自的のようだ。皆、私たちの弱みをよく知っている。それでもうれしい。

  (2012.08.28 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩國エッセイサロンより転載