はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

老化にあらがう

2012-10-11 11:47:32 | はがき随筆
 歳月人を待たず。還暦からはや7年。重ねる年にあらがい、強い決意で独自の方法を取り入れ、五体を鍛えていた矢先、突然右肩に激痛が走り、肩が上がらなくなった。診断は「けん板断裂」。腕を支えるけん板には常に負担がかかっており、加えて長年の野球で右肩を酷使し、けん板がすり減っていたのが原因で切れたとの診断結果であった。薬物や手術ではなく現在、運動療法のリハビリで治療中。体の機能が衰える「老化という魔物」に正面から立ち向かい、高齢という嫌悪に押しつぶされないタフな体と精神を養うべく一念発起で己の鍛錬は続く。
  鹿児島市 鵜家育男 2012/10/4 毎日新聞鹿児島版掲載

マダム

2012-10-11 11:22:57 | はがき随筆


 赤い屋根に白い壁。窓を飾る赤い花。城塞。ドイツのローテンブルクで、その町並みを描いた絵にひかれて画廊に入った。ドイツ語で「いらっしゃい」と女店主。「ジャパニーズ、見せてくださいね」とに日本語で私。「オオ、ジャパニーズマダーム」とにこやかに言い、もどかしそうに両手を震わせていたが、記憶を呼び戻し「マダーム、ヨクイラッシャイマシタ」。そして更に絞り出すように「ドウゾゴユックリ」と言った。私は感動して記念に気に入った絵を1枚買いたいと思ったが、余裕がなくやめた。あの町と女店主を私は忘れない。
  霧島市 秋峯いくよ 2012/10/3 毎日新聞鹿児島版掲載