はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

我が家の秋の味覚です

2012-10-25 22:42:45 | アカショウビンのつぶやき


事情がいろいろありまして、最近は更新が滞っております。
折角おいでいただきました方々、ホントにゴメンナサイ。

今日は久々にちょっと時間ができたので…。
我が家自慢のフルーツをアップします。

フェイジョアの季節になりました。
毎日、ボトボトと落ちています。
フェイジョアは、枝をゆすって落ちたときが食べ頃。

毎朝、ゆさゆさと揺すっては拾います。
今年は台風の被害がなかったので、
摘果のチャンスがありませんでした。
そのため小粒ですが、香りもよくお味も申し分ありません。
毎年楽しみにしてくださる方々に召し上がっていただきます。


今日は、立派な、からいも(サツマイモ)と、ムベをいただきました。



本当に久しぶりのムベをおいしくいただきました。


あら、まあ

2012-10-25 18:30:18 | はがき随筆
 夏休みに帰省した孫娘ナディアは、認知症の曾祖母が気になって仕方がない様子でした。
 「ナアちゃんよ、分かる?」
 「うん」とうなずけば大喜び。
 「由井おばあちゃんは誰がお世話するの? ママは私がみるのよね」
 小学3年生なりに考えている感じでした。 
 帰る朝は大粒の涙を流して「ひいおばあちゃん、お願いだから、ひとこと語ってよ」と言っていました。
 iPad(アイパッド)に、可愛いダンスと、私のほうれい線入りの似顔絵を残し、帰っていきました。
  阿久根市 別枝由井 2012/10/22 毎日新聞鹿児島版掲載

生まれ変わる

2012-10-25 18:25:18 | はがき随筆
 郷里の出水の自宅の車庫と倉庫を解体することになった。
 この車庫と倉庫は、長年さくさんの人たちの役に立って生きてきた。その思い出を、こんなこともあったね、そんなこともあったねと、母と語る。
 やがて、車庫と倉庫は、静かにその役目を終え、広々とした広場に生まれ変わった。
 近所の方々も、その広場を眺めて、きれいになりましたねと、皆ほめてくださる。私も母もうれしい。車庫も倉庫も広場も喜んでいることだろう。
 新しく誕生した広場は、これからまた新しい歴史をつくっていく。心からありがとう。
  屋久島町 山岡淳子 2012/10/21 毎日新聞鹿児島版掲載

サプライズ

2012-10-25 17:58:23 | はがき随筆
 昭和37年度、松山中卒業生の教え子たちの同窓会が名古屋で行われ、招待された。特に卒業50年を記念しての同窓会だからどうしても都合をつけて出席してほしいと、往復の航空券まで送ってきた。当時の卒業生の多くは関西や中京などの工業地帯に集団で就職し、名古屋市周辺には多くの物が在住している。
 還暦同窓会に続いての同窓会だが、五十数人が参加の予定だという。ただ私の出席は幹事数人で決めたサプライズだという。
 当日は幹事の手配通り部屋に待機し、集合写真のセットが終わったその時、サプライズは解かれた。
  志布志市、一木法明 2012/10/20 毎日新聞鹿児島版掲載

キジバト誕生

2012-10-25 17:46:07 | はがき随筆









7月初旬のことだった。
キウイ棚付近で、唸るような低いキジバトの声。
確かにキジバトの声なのだが
、姿も見えず不気味な響きが気になっていた。
ある日、庭仕事中にスコップが倒れ大きな音を立てた。
すると頭の上で、バタバタとキジバトが飛び立った。
よく見るとキウイの茂みに巣があった。
驚かせたので巣を放棄するかと心配したが、
親鳥は雨の日も風のもじっと動かない。
 やがて巣立ちした雛は我が家の庭で一週間ほど過ごし、
カメラを向けても動じない。
私は動物カメラマン気どりで愛らしい姿を撮りまくった。
  鹿屋市 西尾フミ子 2012/10/19 毎日新聞鹿児島版掲載

中秋の名月

2012-10-25 17:22:42 | はがき随筆
 台風17号が通り過ぎた夜は中秋の名月。台風情報にかまけて危うく忘れるところだった。
 子供の頃、十五夜が近づくと私たちは農家からワラをもらいカズラを集め、大人が大綱をなってくれた。十五夜には吹上浜で綱引きをした後、立派な土俵の上で相撲に興じた。しこ名は当時の大相撲の力士名だった。
 桜島の方角から月が静かに昇ってきた。昨年の十五夜は母も2階から月を眺めた。その後、足を骨折したので、今回は車椅子に乗せて庭に出てみた。「今年も月が見られてよかった!」と、97歳になる母はしきりに手を合わせていた。
  鹿児島市 田中健一郎 2012/10/18 毎日新聞鹿児島版掲載

野菊

2012-10-25 16:48:51 | はがき随筆


 ヨガ教室から帰る途中、道からたんぼに下る土手に、薄紫の野菊が目に留まり、そそとした花にたたずんた。そしてふと、木造校舎の教室で窓際の柱に竹の花筒が掛けてあり、野菊が挿してある風景が浮かんだ。遠い昔のことだ。
 野菊の印象を深めたのは、文庫本「野菊の墓」を手にした学生の時。作中の二人の成り行きを一気に読んだ。あの頃を懐かしむ。
 野菊には白や黄色もあるが、私は薄紫の花が好きでひときわ、かれんに思う。手折りたいと思ったが「野の花は野に」。快い風が吹いてきた。
  出水市 年神貞子 2012/10/17 毎日新聞鹿児島版掲載

グアバがなった

2012-10-25 16:42:51 | はがき随筆
 「うそっ!」。思わず叫びました。ベランダで育てているグアバが実を結んだのです。8月27日のこの欄に掲載されたあのグアバがです。
 私はあの時「一生面倒をみるから」とグアバに約束しましたが自信はなかったのです。
 いえ、世話はしましたよ。毎日水もやりましたし、風の強い日には支えもあてがいました。
 グアバもうれしかったんでしょうね。まだ直径3㌢の若い緑色の小さな子供ですが。
 しかし今年中になるとは思いませんでしたよ。早速一回りもふた周りも大きな植木鉢を仕入れてきました。
  鹿児島市 野幸祐 2012/10/16 毎日新聞鹿児島版掲載

紺碧の空

2012-10-25 16:36:25 | はがき随筆
 球場全体が一つの生き物となって「ぐわあん」とほえる。45年ぶり。神宮球場。どうしても妻に見せたかった伝統の早慶戦は旅程が合わず……。はやる気持ちを抑えてスタンドへ。
 見方打者のホームランに間髪入れず応援歌「紺碧の空」。対戦相手の大学の校歌までまで歌った。あの頃はグランドに谷沢がいた。「谷沢ーっ、外野のアベックに当ててやれーっ!」。ヤジまで覚えている。まさに秋晴れ。大東京の真ん中なのに風が心地いい。大空を飛行船がゆったり進む。あの日の若者は今、老いのうろこを脱ぎ捨てるように、一つ大きく伸びをした。
  霧島市 久野茂樹 2012/10/14 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆9月度

2012-10-25 16:11:03 | 受賞作品
 はがき随筆9月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略)

【月間賞】3日「ミカン泥棒」清水恒(64)=伊佐市
【佳 作】24日「わっはっはっ」吉井三男(70)=肝付町
26日「同じ歌でも」馬渡浩子(64)=鹿児島市

ミカン泥棒 小学校の下校時にミカンを盗んで怒られた話です。怒るKさんの、まず親の名を言わせ、罰に歌を歌わせ、図らずもミカンに関係のある歌を歌ってしまったら、表情が和らいだという態度に、かつては確かにあった、地域全体で子供を育てるという共同体意識がほうふつとしていて、懐かしい気分にさせてくれる文章です。
 わっはっはっ 夕方を待たずにしぼむ朝顔の花に、しぼんでも確実に種子を残して行く生命の持続を感じるにつけても、古希の自分は何を残したのかと忸怩たる思いにとらわれわれながらも、ふと気がつくと、立派な子供と孫が居るではないかと、高笑いする心境が描かれています。知足といいますか、多くを望まない幸福も確かにあります。
 同じ歌でも 中学校の時は心をこめて歌えといわれても、将来の希望に燃えていた年ごろで、心のこめようがなかった「オールド・ブラック・ジョー」の歌が、六十路の半ばにさしかかった今、「若き日早や夢とすぎ、我が友皆世を去りて」の歌詞が心にしみてきたという、落ち着いた内容です。何故あの歌詞を中学生に歌わせたのでしょうか。
 以上のほかに3編を紹介します。
 中鶴裕子さんの「義父」は、97歳で亡くなられた義父は、自分が介護されている立場なのに、家庭や施設で周囲を和ませてくれる達人であった。その毎日は、周囲の人々への感謝の念に満ちていた。身近に学ぶべき手本があるのは良いことですね。若宮庸成さんの「行く末考」は、50歳ごろ、残りの人生は奥さまと自由奔放に生きようと決め、実践してきた。ところが、そろそろ往生際考(?)が必要になってきた。誰でもが通る道ですが、これが一番難しい。久野茂樹さんの「懐かしの母校」は、45年ぶりの母校再訪です。今昔の感のある高校生たちの清新な態度に、往事の思い出を抱えて帰ってきた。老いの兆しとともに、過去がよみがえってくる様子が具体的なイメージで描かれています。
  (鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)

ハナも見た

2012-10-25 16:00:32 | はがき随筆
 2回の窓から夕日を眺めていると、愛犬ハナと夕暮れ時を楽しんだことを思い出す。
 元気なハナは階段をかけ上がってきて、私の腕の中に飛び込み外を見たいとねだる。あかね色に染まる空や咲き誇る美男カズラを見て、飛び交う赤トンボを目で追う様は人間的でいとしかった。そのハナは3年前、突然短い命を終えた。今でも彼女の体のぬくもりは私の胸や両腕に残っていて、つい「ハナ…」とつぶやく自分がおかしい。
 ホルトの木に絡む美男カズラは、初夏から秋まで朱色の花を咲かせ、5匹のペットが眠る塚を暖かく見守っている。
  出水市 清田文夫 2012/10/12 毎日新聞鹿児島版掲載