はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

心コロコロ

2014-11-02 08:29:12 | はがき随筆
 子供の頃は心ワクワク、台風を待った。だって学校はお休みになる。台風一過、秋晴れに登校すると、授業はなくて、校庭の落ち葉集めだし、家に帰れば、柿やミカン、クリ広いが待っていた。楽しいことずくめだったのだから。大人になるとそうはいかない。裏が竹林で毎回、後始末にうんざり。お顔のしわがますます増える。台風18号通過の日のミサの帰り、荒れ地の石垣の下にハヤトウリが転がっていた。拾って、お漬物にするとサキサキしておいしい。台風のプレゼントに気をよくして、また吹いてくれないかと、心待ちにしている現金な私がいる。
  鹿屋市 伊地知咲子 2014/11/2 毎日新聞鹿児島版掲載

黄金の箸置き

2014-11-02 08:20:45 | はがき随筆
 庭の柿の落葉が始まった。毎朝、ほうきで掃いている。今日はその一葉を手にしてみた。鮮やかな朱色地に黄や緑色の複雑な模様である。じっと見ていると、なぜか平安時代が思われてしまう。日本の古来種の柿だ。紫式部も目にしたに違いない。
 今朝は落葉が多い。掃き捨てるのが惜しい。が、取り置いても3日ともたないし……。
 ベンチに落ちた二葉を選ぶと、台所で水洗いし、布巾に挟んで水気を取り除いた。朝食担当の私はみそ汁を作り、デザートの準備が終わると、そのみずみずしい彩りの二葉を箸置きにして、妻を待つことにした。
  出水市 中島征士 2014/11/1 毎日新聞鹿児島版掲載