はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

退山式

2014-11-24 15:18:06 | はがき随筆
 台風一過秋晴れの土曜日。お寺の退山式に出席した。住職を副住職(ご子息)に引き継がれるための儀式で、参列者の椅子は満席だった。
 柔和なご住職も心なしか、感慨深そうである。入寺されて45年目の退山だそうだ。
 髪をそられた新住職の頭は青く光り、真新しい法衣に袈裟がいっそう輝いて見えた。京都大本山の管長ほか、十数人の和尚たちの読経が厳粛に本堂に響き渡り、身の引き締まる思いで合掌する。式が終わり、にこやかに出てこられた前住職は、いつもの口調で笑いをまかれ、その様子に安堵の表情を感じた。
  鹿児島市 竹之内美知子 2014/11/24 毎日新聞鹿児島版掲載

落語ざんまい

2014-11-24 15:05:07 | はがき随筆
 「博多天神落語まつり」を3日間楽しんだ。今年は事前に案内が届き、優先予約ができたので、花禄、小朝、文枝、文珍、円楽出演の6公演を選んだ。2時間半で、5人から7人が次々噺をするので、どうしてもおなじみの短めに演目になってしまう。最終日、昼席のトリは志の輔師匠。「そらい豆腐」を1時間以上みっちり語った。聴くのは2回目だが、涙をこらえきれずハンカチで何度も拭った。夜のトリ、円楽師匠も左甚五郎にまつわる「ねずみ」を予定時刻過ぎても語り続けた。この2席で得した気分になり、大満足で帰りの新幹線に乗った。
  鹿児島市 本山るみ子 2014/11/23 毎日新聞鹿児島版掲載

デラックス弁当

2014-11-24 14:59:38 | はがき随筆
 毎日の弁当作りの大変さを十分承知している私は、息子の結婚が決まった時、弁当当番を申し出た。
 それ以来、火木土は隣に住む息子の弁当作りを楽しんでいる。出勤時間の変更や出張もあるので、メールで確認する。先日も「明日はいつも通りですか?」に「デラックス弁当でお願いします」との返信メール。
 翌日の弁当は、白ご飯の上に黒ごまでデラックスと書いた。昼過ぎ、「デラックス弁当をおいしくいただきました」と、ごく普通の反応。ユーモアはユーモアで返してほしいとお嫁さんと笑い合った。
  垂水市 竹之内政子 2014/11/22 毎日新聞鹿児島版掲載

覚悟を決めて!

2014-11-24 14:52:46 | はがき随筆
 遠方に住む父の危篤と復活と認知症。それに伴う介護とケア。息子の大手術とリハビリ。間を置かず起こった夫の大病と手術。バッドケースの連続に涙する間もなく笑ってしまいそうになる。自分のやりたいこと全てが後回しになった。
 その同時期にママ友2人が相次いで亡くなった。突然だった。「お茶行こう」と誘われていたのに、私は断ってばかりいた。彼女達と永遠に会えなくなるとも知りもせずに。
 だから今は、覚悟を決めた。「やりたいことは即実行」。今日この日、この一瞬を悔いなく生きるのだ、と。
  鹿児島市 奥村美枝 2014/11/21 毎日新聞鹿児島版掲載

優しい微笑を

2014-11-24 14:45:05 | はがき随筆
 身体の一部に痛みを覚えると、優しい笑顔になれない。夫に体の調子を聞く。「まずまず」とうなずく。帯状疱疹の枯れた傷痕が痛々しい。入院中、厳しいリハビリに耐え、ようやく歩けるほどになり「皆のおかげで今日がある」。「感謝、感謝」。今朝は自転車をこいで海岸を一巡り。息も弾んで帰宅する。喉が渇いたので野菜ジュースを1.2杯飲み干した。ああ「生きた心地だね」。今は自転車でのリハビリが1日の日課。お昼には秋ナス、きのこ、シャケ、トマトのサラダを試みた。夫の顔が緩んだ。舌鼓を打った。凜とした空間に優しい微笑が……。
  姶良市 堀美代子 2014/11/20 毎日新聞鹿児島版掲載

恥ずかしい

2014-11-24 14:38:43 | はがき随筆
 「もうそろそろ」と、目覚め一番、新聞受けへ。「やったー! 今朝のおかずは1品増」。月初めに載ったら余裕、余裕。だが、月末まであと何日あるかな。ボツの寂しさが増す。日めくりカレンダーに「自信はなくてうぬぼればかの。ああ、恥ずかしい、恥ずかしい」と。
 選び抜かれたことばで書かれた随筆に比べ、頭に浮かんだままを並べた文だ。けれども、久々に載るとうれしくなり、また投稿したくなる。不思議な力を持つ「はがき随筆コーナー」。私にも参加できる数少ない楽しみの泉。こんな場所があるから、新聞はやめられない。
  阿久根市 的場豊子 2014/11/19 毎日新聞鹿児島版掲載

うれしい遺伝

2014-11-24 14:32:23 | はがき随筆
 東京に住む孫の「らら」は5歳の女の子。
 6月4日生まれということもあり、ママが歯には特に気を配っていて、今年は東京都の「よい子の歯のコンクール」で2位だったとのこと。「やっぱりね」と納得する私。
 というのは、私も今年の検診で「とてもきれいで丈夫な40代の歯です」と太鼓判を押された。今でも梅干しは歯で割って中の種子を食べるのが楽しみ。
 亡くなった母のように、ビール瓶の蓋を歯で開けることは怖くて出来ないが、先祖から授かった丈夫な歯は、これからも大切にしていこうと思う。
  鹿児島市 斉藤三千代 2014/11/18 毎日新聞鹿児島版掲載