
母の初盆が迫り、実家の草取りをした。お茶になり、弟嫁が小型パンを「どうぞ」と出してくれた。朝食もパンだったので、あまり食べたくなかった。気が進まないでいると、様子を見かねた弟が「パンが可哀そうだから僕は食べるよ」と。「では私も」。食べてみると、小豆のあんが入っていて、とてもおいしい。嫁への思いやりか、パンへの同情心か、弟の優しさを察する。以来、小型パンを好んで買うようになった。無事に初盆の大役を果たし、弟夫婦は千葉へ帰った。秋も深まって涼風が頬をなでる縁側で、繊細な心の弟を思うティータイムである。
肝付町 鳥取部京子 2014/11/15 毎日新聞鹿児島版掲載