はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

友達だったの?

2020-06-16 22:44:10 | はがき随筆
 東京に暮らした頃、気候が良くなると近くの哲学堂公園を散策したものだった。
 ある日、草地でカラスがカアカア鳴いている。その先を見ると猫がニャアニャアと何か文句を言っているらしい。 
 どうみてもカラスが猫をからかっている。猫も負けじと一歩前に出る。するとカラスはちょっと後ずさりをして依然からかうそぶり。
 しばらくそうやっていたが、最後にカラスがピョンと近づくと猫は逃げていった。
 あのふたりはケンカをしていたのだろうか。それとも仲良く遊んでいたのだろうか。
 鹿児島市 種子田真理(68) 2020/6/13 毎日新聞鹿児島版掲載

新ジャガ

2020-06-16 22:37:41 | はがき随筆
 今年も新ジャガイモを掘り終えた。それほど広くはない菜園だが老骨には結構こたえる広さである。
 腰を曲げたり伸ばしたりしてようやく彫り上げたジャガイモである。「今年は小ぶりが多いね」と家内が言う。「そうでございますね」とわざと敬語で返す。「調理するにはこれくらいの大きさがちょうどいいとよ。いつもあげると喜ばれる〇〇さんとこに明日でも持って行っとくわ」と労をねぎらってくれる。「よろしくお願いします」とまた敬語。コロナ禍の中、聴けばカエルがあくびでもしそうななんとも平和なひとときである。
 宮崎県都城市 堀之内明(82) 2020/6/13 毎日新聞鹿児島版掲載

本能寺の変

2020-06-16 22:30:41 | はがき随筆
 呉座勇一さんの「陰謀の日本中世史」を読みました。本能寺の変で知らなかった事、大変勉強になりました。信長と光秀の人となりが描かれて吸い込まれる面白さを感じました。いつの時代でも語り継がれるのは信長の心と同じものが私たちの中にあるからだと思います。事件の心髄は作家や歴史研究家の方々がいろんな角度から書かれています。本能寺で信長の死体は発見されなかったので生存説をとなえる人も出たとか。本能寺の変の11日後に光秀は秀吉から討たれてしまう。人生の縮図を見る感じがします。歴史は人生を教えてくれます。
 熊本県八代市 相場和子(93) 2020/6/13 毎日新聞鹿児島版掲載

自然の価値

2020-06-16 22:21:21 | はがき随筆
 田舎に暮らしてみると、都会との価値観の違いに驚く。
 山があり川があり、藪があり空き地があり、ビルがなくて工場がなく人混みがない……。それを都会の人間は自然と賛美して深呼吸しながら田舎ってよいな、と景色を眺めて叫ぶ。その同じ風景を田舎の人間は町が寂れたさびれたと嘆く。
 銀行がなくなりコンビニがなくなり、果ては病院までがなくなりJRが廃線になる。人が暮らしに不便と出て行きまた寂れて、田舎の人が寂れて、田舎の人が寂れたさびれたとまた嘆き、都会の人が豊かな自然をよいな、いいなと声高らかにまた叫ぶ。
 鹿児島県湧水町 近藤安則(66) 2020/6/13 毎日新聞鹿児島版掲載

ビデオ通話

2020-06-16 22:14:30 | はがき随筆
 東京の長男一家の恒例の里帰りも、不要不急の外出自粛でかなわない。
 孫の発案で、初めてビデオ通話をすることになった。約束の時間、女房と緊張してスマホの画面を見入る。
 まず長男夫婦が笑顔で画面に登場、重なるように、宮崎の次男も画面に現れた。福岡、埼玉からも、孫らが次々に参加だ。「元気にしてる?」「変わりない?」のあいさつが行き交う。「お父さんが見えないよ」と催促。スマホの角度を変え、「ほら、元気だよ」と顔を出す。
 リアルタイムで語り合え、安心した一日だった。
 宮崎市 実広英機(74) 2020/6/13 毎日新聞鹿児島版掲載

法事に会うて

2020-06-16 22:06:02 | はがき随筆
 男の子は花を摘み、女の子は石を拾う。7歳と3歳の姪の子供が面白い。花を知る人。絵を描く人。畑や自然を教えたい人。パソコン上手のパパ。怒りん坊のママ。多くの大人を見知って、それぞれの性格で学ぶだろう。素直でやさしいと、聞かん気で恥ずかしがり。甘えん坊は共通。だが7歳ともなると、もう社交家。一人前の自己紹介をしお経を解らぬまでも最後まで読む。あまりの利口ぶりに、つい期待値があがってしまった。大人は身勝手。伸び伸び育てと言いつつ負荷を与える。でも子供時代はもっと子供らしくて良いんだよ。ただ健やかにあれ。
 熊本県阿蘇市 北窓和代(65) 2020/6/13 毎日新聞鹿児島版掲載

ラッキョウの味噌漬け

2020-06-16 21:57:24 | はがき随筆
 「おいしくて、今日は冷やっこにつけて食べましたよ」。ラッキョウの味噌漬けをおすそ分けした友からうれしいメール。
 ラッキョウが出始めると母は必ずこれを作った。ラッキョウを千切りにし、ほぐした生ま節と生味噌を混ぜ込む。暑いご飯によくあった。
 私もラッキョウを買うと作る。砂糖を加えるのが母との違い。夫も気に入り、友人にも届ける。生節もこの時期に出始めるから初夏の旬の味ともいえる。
 県外の子供たちには時折手作りの味を送るが、これは作ってほしい味。ラッキョウ好きの夫を持つ次女にまず伝えようか。
 宮崎県高鍋町 井手口あけみ(71) 2020/6/13 毎日新聞鹿児島版掲載

あら、しもた

2020-06-16 21:50:26 | はがき随筆
 ある朝、お茶配りに職員さんがやってきた。ベッドに寝そべり「ごめん日めくりカレンダーが高いから破ってくれない」とお願いした。職員さんは「それはいつもされている事ですよね。できない事はお手伝いします」とやってくれない。「冷たいね。もう何もしなくていい」。私は冗談ぽくすねてみた。「それじゃ爪切りも背中洗いもしないから」。職員さんもわざとらしく売り言葉に買い言葉で話された。次の日の入浴の時間、職員さんがさっと来て背中を洗ってくれた。その瞬間「あらしもた! 洗ってもた」。その言葉を聞いた途端2人で大笑いした。
 熊本県玉名市 馬場征子(78) 2020/6/12 毎日新聞鹿児島版掲載

体力

2020-06-16 21:29:53 | はがき随筆

 リハビリの理学療法士によれば100人中99人はできるというつま先立ちが、私にはできない。そのため立ったままの作業が困難。庭の花の写真撮影にも椅子を使わなくてはならない。
 アヤメを上から写したかったので、高めの椅子に座り、デジタル一眼レフの液晶画面を見ながらシャッターを切り、なんとか写すことができた。
 次にアマリリスを狙った。隅の方で咲いているため離れたところからズームレンズで写す。正面からとるために椅子を移動するのに大汗。写真撮影もボケ防止だが、体力がものをいうことを痛切に感じている。
 鹿児島県西之表市 武田静瞭(83) 2020/6/11 毎日新聞鹿児島版掲載