はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

マスク美人?

2020-06-23 12:14:20 | 女の気持ち/男の気持ち
 友人が送ってくれた手作りマスクを着けて鏡の中の自分にニンマリする。マスクを着けた顔は当然のことだがマスクが一番、目に付く。
 目立ち始めた口元のしわも控えめな鼻も全然見えない。目立つのは白髪に映える、淡く明るい色柄のガーゼハンカチマスクだけ。布のカットの具合で鼻も少々、高く見える。
 友は私という人間をよく分かっている。さすが、付き合い46年。オヒョヒョヒョヒョだ。
 どこかの無精者は、常々扇で顔を隠せる平安時代の姫君を羨ましがっていた。あれなら化粧をサボろうが、雑に済まそうがOKだ。
 紫式部の時代から1000年あまり。待てば海路の日和あり。新型コロナの感染予防でマスクが必要になり、煩わしいと思っていたが、効用もあるじゃありませんか。
 フッフッフ。マスクの色柄のお蔭で目も生き生きして見えるような……。指で押すとフニャッとくぼむ上げ底鼻に、ちょっと詐欺かもという気もするけれど。
 なんの、別に誰かをだますわけではない。何の努力もせず、マスク美人になれた? と思うと気分がいいのだ。さて、こっちもお礼にサバイバルグッズでも送ってやろう。
 一緒に送られてきた黒猫模様のバッグを袈裟懸けにして美魔女になったつもりの私は日傘を片手に外に飛び出した。自転車に乗って薫風と共に気分は舞い上がる。どけどけカラス。マスク美人が通る。
 北九州市小倉南区 吉田典子(59) 2020/6/23 女の気持ち掲載

ウイルスとの闘い

2020-06-23 10:52:22 | はがき随筆
 畑に緑色が一面に広がりつつある。新しい芋が順調に育っているとは感じている。
 昨年、基腐病というウイルス性の病気が流行し、甘藷農家は大打撃を受けた。芋が腐れて商品にならなかった。我が家も10月に収穫、貯蔵した藷はほとんどダメだった。この病気に効く薬がなく、土壌、苗など消毒の徹底しかない。正にコロナだと思ってしまう。先の見通しがつかず廃業や減反する農家が増え、我が家も4反減らした。
 築き上げた地域ブランドが消え去るのではないかと危惧している。今年は正念場。感染が広がらないことを願っている。
 宮崎県串間市 林和江(63) 2020/6/23 毎日新聞鹿児島版掲載
 

休刊日

2020-06-23 10:43:49 | はがき随筆
 今日は新聞の休刊日。読み手の勝手な言い分だと思うが、何とも寂しい朝になる。ましてや読者参加の「はがき随筆」大ファンの一人としては相当につまらない。働く人の休養以上に待ち遠しい。
 自粛、自粛の毎日が続き、心も体も限度と言っている。「今日は休刊日よ」と言うと怪訝な顔をする相棒。休肝日と言われたと呑み助の考えそうな事だ。「新聞の事ばい」と言われて急に安堵の顔。子供だ。
 最近チラシがとんと少ない。三蜜を避ける為か? なんだか心もとない。そろそろ日常に戻ってほしい。みな頑張っている。
 熊本県八代市 鍬本恵子(74) 2020/6/22 毎日新聞鹿児島版掲載

沖縄慰霊の日

2020-06-23 10:35:41 | はがき随筆
 6月23日、沖縄慰霊の日。思い起こせば私が初めて沖縄の地を踏んだのは本土返還の前年、早稲田の学生のときでした。赤線が存在し、車は右側通行、流通貨幣はドルの時代です。その沖縄で……。ディスコで踊っていた私の顔に突然浴びせられたビール。気色ばんだ私とMPの仲裁に入った店主の言葉は「ここは沖縄だから……」。横断歩道を渡っていた少女をはねた米兵がおとがめなしに本国に送還された話も聞かされました。
 <日米地位協定>。あれからどれほどの年月が流れたでしょう。沖縄は今日も叫び続けています。
 鹿児島県霧島市 久野茂樹(70) 2020/6/21 毎日新聞鹿児島版掲載