透き通るような青空にヒコーキ雲がくっきりと白い線を引く。どこに行くのだろう。
下界は新型コロナウイルスが蔓延し「不要不急」の掛け声に人は惑い、うろたえ右往左往している。
機内は機長さん、乗務員さん、それに数えるほどのお客さんだろうか。人はそれぞれの想いを白いマスクに秘めて黙して語らず。ああ、悲しいかな。
機体は我が使命を銀翼にかけ、天空を突き進む。もの言わない機体と、牧水が詠んだ「白鳥はかなしからずや……」の白鳥が混然一体となって目に映る。
鹿児島市 内山陽子(82) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載