はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

コロナウイルス

2020-06-20 20:04:18 | はがき随筆
 透き通るような青空にヒコーキ雲がくっきりと白い線を引く。どこに行くのだろう。
 下界は新型コロナウイルスが蔓延し「不要不急」の掛け声に人は惑い、うろたえ右往左往している。
 機内は機長さん、乗務員さん、それに数えるほどのお客さんだろうか。人はそれぞれの想いを白いマスクに秘めて黙して語らず。ああ、悲しいかな。
 機体は我が使命を銀翼にかけ、天空を突き進む。もの言わない機体と、牧水が詠んだ「白鳥はかなしからずや……」の白鳥が混然一体となって目に映る。
 鹿児島市 内山陽子(82) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

八十の手習い

2020-06-20 19:50:29 | はがき随筆
「お久しぶり」「会いたかったわ」。3カ月ぶりの仲間の顔が生き生きと弾んでいる。
 25年続けた「はがき随筆」グループのお世話をKさんに託して引退したのが6年前。高齢だったし、ほっとしたのも事実。けれど何となく身辺が物足りない。この物足りなさは何だろう。そう「書くことを語り合う人が身近にいないからだ」と気付く。そんな時、市広報で「俳句教室」の案内を知り、一も二もなく飛び付いた。あれから3年、すっかりはまっている私。
 指導者がいる気楽さも存分に味わっている。
 宮崎市 松尾順子(88) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載


なんてこっちゃ

2020-06-20 19:43:42 | はがき随筆
 近ごろオンラインという言葉がにわかに氾濫するようになったが、その事に全く無関心だった私にはさっぱり分からない。折から10万円給付金の申請がオンラインでできるという。この際、良い勉強の機会だと思っておっかなびっくりマイポータルサイトを開いた。ところがいけません。マイナンバーカードの暗証番号をスコッと忘れていた。我ながら間抜けだなあ。結局郵送申請の方が簡単で6月の初めにはちゃんと振り込まれていた。皮肉な事に同じ日にアベノマスクがやっと届いた。そのどちらも使うべきか使わざるべきかハムレット的心境である。
 熊本市中央区 増永陽(89) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

誕生

2020-06-20 19:35:24 | はがき随筆
 私は分娩台の上にいた。ベルトで両手両足を留められて。陣痛が強くなり、大波のように寄せて返す。拷問のよう。おなかの子よ早く出て来てえ……。
 いよいよとなった。分娩時に麻酔をかけると聞いていた。胎児を押し出すように、助産師が腹を押して加勢した。それからはもうろうとして覚えがない。
 赤子を始めて見たのは翌日だった。可愛いというより、何か不思議なものにみえた。人形を抱くようにその子を抱いた。子は乳首に舌を巻きつけて、初乳を飲もうとするけれど、うまくいかない。それでも5日を待たずに私達は親子になっていた。
 宮崎県延岡市 佐藤桂子(72) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

復興の兆し

2020-06-20 19:28:07 | はがき随筆
 熊本地震は、我らに自然の恐ろしさを教えてくれた。それから4年、今、新型コロナウイルスの流行で世界中がゆれているが、阿蘇には、復興の気配が感じられる。豊肥線、国道57号、阿蘇大橋の建て替え、更には、二重の峠を貫通したトンネルで新しい道が完成予定である。また、熊本の至る所で復興の兆しを感じる。
 最近、地震や津波等の自然災害の恐ろしさと共に、そこから立ち上がる人間の底力を知る。現実は、厳しいことの連続であるが、力強い復興から多くのことを学び、我らに生きる勇気を与えてくれる。
 熊本県大津町 小堀徳広(72) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

改革は起きる?

2020-06-20 19:19:26 | はがき随筆
 働き方改革がうたわれて、娘の職場でも改革が。木曜に加え、土曜も半ドンになった。娘の配偶者の休みは土曜日終日なので喜んだ。が、患者さんの一人は休みが土曜の午後のみらしく、そこの医院はお客様を失うこととなった。やむを得ない。
 さて、我が家の改革はどうか。夫と2人の生活も長い。夫は退職後、ご飯炊き、おみそ汁作りもできていた。なのに気がつけば台所仕事はほとんど私。昼食後、話を向ける。「お茶わん洗いでも……」に「俺がやるとお前のすることがなくなるではないか」と。体よく断られた。仕方ない。やるっきゃない。
 鹿児島県いちき串木野市 奥吉志代子(71) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

三かき

2020-06-20 19:11:19 | はがき随筆
 老化防止のために、汗かき、物書き、恥かきの「三かき」が大事だという。
 散歩して汗をかく。四季折々の花々をめでながらの散歩は気分爽快である。そして「はがき随筆」を書いて恥をかく。また毎週1回、団地の仲間と「ヘボ碁」を打って頭をかく。つまり、何かに挑戦した結果、得られるだいごみである。
 世の中には使えば減るものが多いが、頭と筋力は使わなければ衰える。その対策は「今日用(教養)」と「今日行く(教育)」が大事。四季折々の花をめでながらの散歩と週1回の碁会への参加が欠かせない。
 宮崎市 高岡善徳(85) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

分散教育

2020-06-20 17:51:00 | はがき随筆
 コロナ一色で憂欝な毎日ですが懐かしい言葉に出会いました。分散という言葉です。国民学校4年生の時、学校に兵隊さんが来るのでこれからは分散教育になりますと言われて、集落ごとにお宮などに集まって授業を受けることになりました。学校が近かったので机は持ち出しましたが、黒板もなく先生も足りません。女学校を卒業したばかりの人が来ました。
 古い小さなお宮の境内での青空教室。どれ位の期間だったのか追憶の彼方ですが大木の木陰に机を並べての勉強はそれなりに新鮮でした。そのまま夏休みに入り終戦の日を迎えました。
 熊本市中央区 山口妙子(84) 2020/6/19 毎日新聞鹿児島版掲載