はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

トルコ紀行2

2012-03-13 17:17:00 | はがき随筆


 紀元前10万人余りが生活した都市国家。今は遺跡として残る全貌を目の当たりにすると、石畳の道には人が溢れ、2万4000人を収容する劇場からは絶叫する役者の声が聞こえてきそうだ。エフェスの遺跡は、世界各地からの観光客がそこかしこに佇み、流れてゆく。
 神殿、図書館、浴場、娼館、水道に沿って出水や池があり公衆トイレも残っている。地中海交易の拠点らしい栄華の痕跡は随所に見られる。気が遠くなるような歴史を前にして、石の文化の凄さを思い知らされるし、巨大な石を自在に操った人たちに心打たれ、エフェスを去る。
 志布志市 若宮庸成 2012/3/9 毎日新聞鹿児島版掲載

つながった夢

2012-03-13 17:11:47 | はがき随筆
 もう3月なのに私は、まだ感激がおさまらない。
 2月19日、私の拙い作詞曲を「グリーンエコー」という混声合唱団が歌ってくれたからだ。加音ホールで歌ってもらえた曲は「川内川」「ふるさとの街」など3曲。
 福島から出水に避難されているある方も「被災前の故郷が浮かぶ」と喜ばれた。
 夢をかなえてくれたのは、はがき随筆の友Mさんに、すぐれた作曲者を紹介してもらったお陰だ。
 はがき随筆、Mさん、作曲者や混声合唱団の縁は、夢と夢を次々とつないでくれた。
  出水市 小村忍 2012/3/8 毎日新聞鹿児島版掲載

地球のために

2012-03-13 17:06:37 | はがき随筆
 中学生T君の英語の勉強をみていたことがある。教科書に環境問題がテーマの章があり、設問に「地球のために何をしたらいいと思うか」とあった。
 私は水を大切に使うしか資源ゴミを分別するというような答えが出るものと思っていた。
 ところが、彼が考えた末に言ったのは「子どもを生まない」。すごい! 人間は地球の癌であると聞いたことがある。癌がなくなれば地球は健康になる。究極の答えだ。
 でも学校の先生の指導要領にそんな答えは載っていないだろうなあ。T君がはなまるをもらったかどうか聞きそびれた。
  鹿児島市 種子田真理 2012/3/9 毎日新聞鹿児島版掲載

迷翻訳家

2012-03-13 16:53:46 | はがき随筆
 幼稚園で英語を習っていると聞いたので、英語の絵本を買った。遊びに来た孫に読んでやろうとすると私の顔をのぞき込み「ABCはだめよ。ねっ」とかわいい手で私の口をふさいだ。
 それではと適当に訳しながら読んでやった。せがまれて7,8回は読んだだろうか。その都度、話が微妙に違ってくるので孫は私の顔と絵本を見比べながら聞いている。私は笑いをこらえながらも少々やけっぱち。
 ようやく開放されて絵本を置くと、そばにいた息子が手に取った。そして一通り目を通すと私を見てニヤリ。あらら、そんなに違っていた?
  出水市 清水昌子 2012/3/6 毎日新聞鹿児島版掲載

「めん食い夫婦」

2012-03-13 12:43:57 | 岩国エッセイサロンより
2012年3月13日 (火)

   山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 私は面食いだ。祖母の「子供のために旦那さんは男前を選ぶように」という教えに従ったからだ。主人もめん食いだ。こちらは面ではなく、無類のメン好き人間だ。西原理恵子さんの「毎日かあさん」に1日1メンという言葉が出てきたが、まさにそれである。

 子供のころ食べたラーメンが、よっぽどおいしかったのだろうか。大人になった今も食べ続けている。それも必ず自分で作る。私の実家に行っても自分で作って食べるのにはあきれる。

 結婚30年。私の面食いは主人似の娘を2人産み、主人のメン食いは体重20㌔増のメタボ腹を生み出した。
  (2012.03.13 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩國エッセイサロンより転載

節電いつも心掛けて

2012-03-12 19:35:35 | 岩国エッセイサロンより
2012年3月12日 (月)

  岩国市   会 員  片山 清勝

 大阪万博。その開会式で日本原子力発電(原電)敦賀1号機から送られた電気で会場の灯がともった。原子力の灯に、当時の日本人の多くが明るい大きな未来を夢見た。

 あれから40年余り、日本では初めて経験する原発事故が起き、電気エネルギー政策が大きく見直されている。電力の逼迫を解決し、日本再生のためにも結論が急がれる。

 電気の原点は水力発電。水の落下エネルギーを電気に変えていた「水車・発電機」が、山口・広島県境の小瀬川上流の湖面を見下ろす吹きさらしの建屋に置かれている。

 弥栄ダム建設に伴う発電所廃止を記念したという。

 子どものころ、家庭の電気使用量が超過するとヒューズが飛んで節電を強制された。いつのころからか、電気が思いのままに使える時世に変わった。

 ヒューズの時代へは戻れないが、いま節電社会が求められている。「それをいつも心掛けよう」。発電機を通り抜ける冷たい風がささやく。  

 2012年03月12日 中国新聞「広場」掲載 岩國エッセイサロンより転載

久々にお出かけ取材でした

2012-03-10 18:16:10 | アカショウビンのつぶやき
ボランティアパーソナリティとしてかかわっている、
地域FMのラジオ番組「心のメモ帖」。
いつの間にか7年目を迎えました。
何年やっても未だにビギナーの域を越えられず、
毎回冷や汗夏ものの取材ですが、今日も技術担当のO氏とパソコン下げて取材に行ってきました。
S家の皆さんが揃って待っていて下さいました。



今日は、お母様のエッセイと、ご長男瑛紀くんの作文を同時に収録させて頂きました。
お母様のエッセイは、鹿屋市立図書館・エッセイコンテスト入賞作品「蛙の子」。
瑛紀くんの作文は、鹿屋市文化祭、小学校低学年の部で、
優秀賞をいただいた「ぼくにできること」。
2編とも素晴らしい作品です。
瑛紀君の作文は家族で協力して、節電や物の大切さを学んでいる様子が、よく描かれています。

あのいたましい災害から、明日で1年を迎えます。
東北大震災から学ぶものを瑛紀くんの作文から改めて教えられました。

作文の講評に
「じぶんにできることをやりたいと心にきめたことはとてもりっぱな心がけだと思います…」とありました。

番組の中ではインタビューの時間がありますが、
元気な元気な弟さんのあつやくんも一緒におしゃべりしました。
楽しい取材でした。

匂い

2012-03-06 12:10:35 | ペン&ぺん

 三寒四温というのだろう。寒かったり暖かかったりを繰り返しながら、弥生3月を迎えた。
 テレビのニュースや地方版の記事でも、梅や早咲きの桜が咲き、春のにおいを感じさせる。
   ◇
 匂いと言えば、先日「酒の匂いのする水」という言い伝えを本で読んだ。県立短大名誉教授、高向嘉昭さんがまとめた「鹿児島ふるさとの神社伝説」(南方新社刊)に紹介されている。出水市の厳島神社にまつわるものだ。
 昔、下僕が農作業から帰るたびに、ほろ酔いの様子。不思議に思った主人が尋ねると、おいしい水が湧き出る所があり、それを飲んで帰るのだという。翌日、連れだって行ってみると、確かに酒の匂いのする水があふれ出していた。主人は、欲を出して、そこを深く掘ったが、水は枯れ果ててしまった。しかし、下僕が行くと再び水が湧き出した。下僕は厳島大神を信仰しており、のちに富を得て、この神社を建てたという。
 何やら、花さかじいさんと欲深いじいさんの昔話のようで、欲深さを戒める教訓を感じる。何ごとも花を咲かせるには、欲は禁物ということか。
   ◇
 先日、この鹿児島版の「はがき随筆」で、出水市の橋口礼子さんが、「プランターの花々も、じっと寒さに耐えて、春を待っている気がする」と書いていた。あるいは土の中で、あるいは木々の小枝で芽吹きに備えている時がきっとあるのだろう。
 雪深い東北で春の匂いと言えば、長い冬の間、雪の下に隠れていた土の匂いだという話を聞いたことがある。橋口さんも「一日も早く東日本の人々に暖かい春が訪れますように」と随筆を結んでいた。
 3月11日が近づく。東日本大震災から1年になる。被災地に復興の春が訪れることを心から祈りたい。
  鹿児島支局長 馬原浩 2012/3/5 毎日新聞掲載

「スズメよスズメ」

2012-03-06 10:15:38 | 岩国エッセイサロンより


2012年3月 6日 (火)

岩国市  会 員   吉岡 賢一

 スズメがいない。チュンチュンの鳴き声さえ聞こえない。東側出窓下のブロックは毎年多くのアベックが、日向ぼっこしたり、お互いの羽づくろいをするデートスポットである。

 日当たりが良く、風は当たらない。餌もふんだんな畑が目の前。なのに今年は1羽も姿を見せない。スズメに限らずヒヨもツグミもやってこない。ごちそうのクロガネモチの実はいまだ手つかず。見慣れた小鳥たちがやってこないだけで、あれこれ取り越し苦労をしてしまう。元気なら早く姿を見せておくれ。みんなで一緒に春を待とうや。

 (2012.03.06 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩國エッセイサロンより転載

腫瘍とハープ

2012-03-05 18:42:08 | 女の気持ち/男の気持ち
 40歳前後から視力が衰え始めた。あちこちの眼科を受診したが原因が分からず、脳外科でMRIを撮ったら大きな腫瘍がみつかった。
 手術室に入ったのは46歳最後の日の朝。47歳最初の日は集中治療室で迎えた。
 腫瘍ができてから10年以上もたっていたそうで、癒着がひどいため温存手術になった。残った腫瘍がまたいつ大きくなりだすかという不安にさいなまれた。退院後も一向に元気になれず、引きこもり、捨て鉢な気持でただ生きているだけだった。
 見かねた母が「何か新しいことを始めるといいかも。ハープなんかどう?」と勧めてくれたのがきっかけで、姪と一緒にハープを習い始めた。
 天使の声のように清らかでやさしい音色のハープは、干上がって固まりかけていた私の心を徐々にほぐし、生き生きとした気分にしてくれた。私が飽きてやめてしまわないようにと、母は姪にもハープを勧めたらしい。その心遣いに気づいて涙がたくさん出た。
 私は今も楽しむ程度にしか弾けないが、姪は上手になり、多くのコンサートに出演して活躍するようになった。
 「もしあなたが病気しなかったら、S子がハープを弾くことはなかったろうね」と母がしみじみと言う。
 姪も「おばちゃんのおかげ。ありがとう」と言ってくれる。
  鹿児島市 馬渡浩子 2012/3/5 毎日新聞の気持欄掲載

好きこそ

2012-03-05 18:34:44 | はがき随筆
 今、朝ドラの「カーネーション」が面白い。
 孫の綾子は今、小学5年生。前からミシン、ミシンと言っていたが、昨年の夏に来鹿した折に、私と一緒に袋を縫ってますますとりこになったようだ。そしてついに昨年暮れに彼女にミシンがプレゼントされた。冬休みに居候していた私の助けもほとんどいらず、袋を縫ったり、布を小さく切って人形の服らしきものを作ったり。
 先日も大きな布バッグを作ったと写メールが届いた。もっとも、今時のミシンは小型で安く、縫い始めに糸がからむことも全くないすぐれものである。
  霧島市 秋峯いくよ 2012/3/5 毎日新聞鹿児島版掲載

見えた

2012-03-05 18:29:30 | はがき随筆
 冬だが、今日は穏やかに晴れて暖かい。高台にある校舎の教室の窓から外を見ると、広々とした海がはっきりと見えた。一面に広がる広々とした海。
 あれ、この風景は、いつもの風景とは違う。いつの間にか、せんだんの木々が葉を落とし、枝々に実をつけている。ああ、そうか、葉を落としたせんだんの木のお陰で、海がきれいに見えたんだ。せんだんの木々たちよ、ありがとう。
 お日様の光を浴びてきらきら光る広大な海。太平洋を眺めながら、東北地方の1日も早い復興を心から願った。
  屋久島町 山岡淳子 2012/3/4 毎日新聞鹿児島版掲載

名画の楽しさ

2012-03-05 18:22:35 | はがき随筆
 昨年よりテレビで毎週日曜日夜10時から、山田洋次監督の推す映画百選が放送され、楽しい期待の2時間に夢中だ。年代にもよるが豊かでない昭和を生きた人間模様が、忘れかけている「やさしさ」「思いやり」「友情」「温かさ」などを思い出させてくれる。恥ずかしいけれど涙腺の弱い私は困る。「東京物語」「二十四の瞳」「真実一路」「愛染かつら」など心に残る名画シリーズは最後まで見たい。昭和も次第に遠くなる多忙な現代社会の時の流れでも、日本人の心の美しさは忘却しない。今は「絆」という表現で心を結んでいる。
  鹿屋市 小幡晋一郎 2012/3/3 毎日新聞鹿児島版掲載

積雪の夜道

2012-03-05 18:12:42 | はがき随筆
 南薩線伊作駅を降りると町は銀世界。タクシーは出ない。親しい本屋で長靴と懐中電灯を借りる。心配する店主に「若いから」と軽く応え雪道に挑む。
 標高300㍍の山あいにある教職員住宅までは10㌔の道のりだ。吹上温泉を過ぎ間道に入ると日が暮れた。頼りは懐中電灯と勘。吹雪の中、膝まで積もる雪に足は重い。傍らの崖や睡魔も怖い。飴をなめ、雪で顔をたたき“六根清浄”を唱え我を励ます。吹雪がやむと遠くに明かりが見えた。「集落だ!」。雪との6時間の戦いは終わった。
 北国の豪雪の報道を見て50年前の恐怖の体験が蘇った。
  出水市 清田文雄 2012/3/2 毎日新聞鹿児島版掲載

ふるさと語

2012-03-01 14:37:35 | はがき随筆


 「唐の国」から渡ってきたので「からいも」。「薩摩の国」から広まったので「さつまいも」と言うのだと教えられた。
 大学時代、四国の友人が「つけあげ」を「さつまあげ」と言った。言葉の変化の過程を見た気がした。
 東京に住む高校時代の親友に送ると「ちけあげ」とわざとなまり、はしゃいで喜ぶ。
 どこか泥くさくて、田舎っぽくてなつかしく、ほっとするふるさと語が好きだ。
 「薩摩の子ならやっぱり『からいも』『つけあげ』でなくちゃね」と、娘には私のこだわりを押しつけている。
  鹿屋市 伊地知咲子 2012/3/1 毎日新聞鹿児島版掲載