2019年6月 7日 (金)
亡き父は退職後、庭の一角を耕して畑にした。「畑作りは土作りじゃ」と言って堆肥を作り、大根やトマト、つくね芋にも挑戦。亡き母の好物の文豆は毎年作った。
しかし7年前、突然の事故で急死。畑が広く感じられた。傷心の日々の中、戸棚の隅に文豆の種を見つけた。秋にまいたら翌春、実がなった。小粒の豆がいとおしく、込み上げるものがあった。
今年は豊作。早速豆ご飯を仏壇へ。父の後ろ姿を思い出しつつ、試行錯誤の野菜作り。空からはらはらしながら見ていた両親も「おーやっとるなー」と少しは安堵しているだろうか。
(2019.06.07 毎日新聞「はがき随筆」掲載)