今年、すでに2回行ったスンチョン湾。どうやら、今年も数回は行きそうです^^ せっかく行くのですから、行くごとに新しい何かを仕入れようと思っていますが、今回はスンチョン湾保全運動の歩みをまとめた論文を手に入れましたので、紹介しましょう。というのも、ここ2~3年はスンチョン市役所(生態公園のビジターセンター)などからの情報が中心でしたので、昔のことがよくわかりませんでした。もう一度、スンチョン湾保全運動の原点をふりかえり、スンチョン湾の魅力と可能性を考えて見ましょう。(論文名;スンチョン湾保全市民運動/著:全南東部地域社会研究所)
1996年、スンチョン湾に流れ込んでいる東川(トンチョン)の直線化と河口での砂の採取事業に対して、スンチョン湾での湿地保全運動が始まりました。スンチョンに事務所を置く<全南東部地域社会研究所(以下、東社研)>という民間の市民団体が中心になり、<スンチョン湾を守る市民委員会>が結成され、討論会、集会、署名運動、座り込みなどさまざまな活動を行い、またハンギョレ新聞、東亜日報、MBC, KBSなどマスコミを通してスンチョン湾の生態系の価値が全国的に知られるようになり、一方で行政裁判(日本とは制度が違います)、監査院への監査請求など法的な手段で問題提起を行いました。
特に1996年10月、監査院で砂利採取事業の許可で問題点があったという監査請求を受付けて、監査を行うと決定しました。これは市民団体の監査請求が始めて認められたケースです。また、市議会でも砂利採取事業許可に対する特別委員会が作られ、スンチョン湾河口での生態系調査を市民団体と共同して実施し、砂利採取反対運動はいっそう拡大していきました。
1996年11月、初めての生態系調査が行われます。市議会の特別委員会と東社研が協力し、故キム・スイル教授(教員大学)、イ・インシク代表(馬山昌原環境運動連合)、ヤン・ウンジョン教授(慶尚大)、オ・ギョンファン先生などの専門化がボランティアで参加して実施されました。この調査の結果、ナベヅルをはじめ、コウノトリ、マナヅル、ズグロカモメなど国際的な絶滅危惧種の渡り鳥が確認され、翌年の調査でもミヤコドリ、クロツラヘラサギ、オグロシギなどが発見されます。
翌1997年1月、NGOの活動家がスンチョンに集まり全国湿地保全大会が開かれ、スンチョン湾の保全運動は韓国全土から支援を受けるようになります。スンチョン湾の湿地が国際的にも重要であることが知られるようになり、日本からも野鳥の会の活動家などがスンチョンを訪問して、調査活動に参加しています。同年5月、スンチョン市は事業許可をそのままにした状態で、市民団体の要求を受け入れ、スンチョン湾の環境保存と生態公園化に関する討論会を開催しましたが、スンチョン湾の保存運動に反対する住民が鉢巻をして集団で参加して大声で怒鳴るなどして、保存運動には超えなければならない課題が山積していました。
スンチョン湾の保全運動が内外で拡大していくに従い、砂利採取事業を早く着手しようと、装備や機械を河口にあるデデ桟橋(漁港)に置き、試験採取の許可を取って強行しました。これに対して市民団体は現場での座り込みと市役所前での集会など5月いっぱい開発と保全をめぐって対立が激しくなっていきました。(続く)
スンチョン湾の葦原にある干潟観察場所。