キャンドル集会1周年のスタディツアーで<参与連帯>という市民団体の事務所を訪問しましたが、一緒に訪問して意見交換をした参加者の皆さんは、とてもショックを受けたようです。わずか1時間半しかいませんでしたが、韓国の市民運動の強さとレベルの高さを実感したようです。意見交換で出た内容と、僕が知っていたり調べた情報を合わせて、<参与連帯>がどのような団体なのか、どんな社会的な動きの中から出てきたのか、僕たちが学ぶべきことは何なのか、などを書いてみましょう。いちおう、カテゴリーを<韓国の市民運動>と新しく作りましたので、僕が知っている韓国の市民運動の様々な姿を紹介して行こうと思います。
<参与連帯>の事務所では日本語になったパンフレットをもらいましたので、その中から大事なことを、いくつか紹介しましょう。まず、<参与連帯>の説明をしましょう。
<参与連帯>は1994年、「参加と人権を二つの軸とする希望の共同体」を実現するために、活動家、学者、法曹家たちが設立した非営利民間団体です。<参与連帯>は政治、経済、社会の各分野の権力の乱用と集中、機会の独占を監視し告発することで、市民の民主的参加に基づく法の支配を定着させるために、活動に取り組んできました。構成員すべてに人間らしい暮らしが権利として保障されるように、多くの政策と代案を提案し、制度化することに専念しました。正義と平和のために行動するすべての市民と進んで連帯し、国境を越えて仲間愛を広げてきました。
まず、設立された1994年がどのような時期なのかを確認しましょう。韓国では民主化運動が70年代ごろから格化しますが、軍事独裁政権に対抗して民主化を求める闘いの頂点が、1987年6月民主化運動、そして7月~9月の労働運動の高揚、8月の全国大学生代表者協議会の結成と続きます。
詳しくは別の機会にしますが、1987年からの民主化運動の広がりは90年代に入って、労働運動、市民運動、農民運動、生協運動、労働者に基盤を置く政党作りなど、様々な分野に広がります。87年以降の民主化運動を体験した世代が中心になって、それらの組織を立ち上げ、会員を集め、事務所を準備し、活動をしていくという流れの中、<参与連帯>が結成されるわけです。
今、<参与連帯>には、15000人の会員がいて、毎月、1000~2000円の会費を払って組織と専従スタッフを支えています。会費収入だけで月に1500~2000万円以上の資金が確保されます。ソウルにある本部事務所には50人以上の専従スタッフがいますが、これらの専従スタッフとボランティアの専門家が300人ほどいて、日常の活動をしています。
現在は、次の12のセンター(または委員会)に分かれて活動しています。
1)司法監視センター=法治国家の番人となり、裁判所・検察・弁護士を正します。専任の弁護士もいます。
2)議会政治監視センター=国民が選んだ国会議員を国民が監視します。
3)行政監視センター=公職社会の腐敗や権力の乱用を監視します。
4)公益通報支援センター=不正義に抵抗する公益通報者を支援します。
5)公益法センター=公益訴訟で人権と民主主義を守ります。
6)労働社会委員会=差別のない労働のための労働政策代案を提示します。
7)民生希望本部=庶民が幸せに生きる社会のために民生代案を提示します。
8)社会福祉委員会=施しでない権利としての福祉を作ります。
9)経済金融センター=公正で民主的な経済秩序のために活動します。
10)租税財政改革センター=租税正義の具現のために活動します。
11)国際連帯委員会=国境を越え、人権を民主主義のために共にします。
12)平和軍縮センター=朝鮮半島の平和のために非核軍縮運動を広げます。
このような広範囲の活動を20年以上にわたって実践しているわけで、それぞれのセンターには専従スタッフだけでなくボランティアで参加している専門家(大学教授や弁護士、新聞記者など)が加わって、監視をしたり、対案を出したりしている。なので、シンクタンクだという評価を受ける時があると言っていた。
僕などは、市民団体というより、政党の大衆運動部門の各パートという感じがした。なにしろ、90年代の中ごろからのデータがあり、また分析や批判の蓄積があるわけだから、ものすごい話だ。そして、民主化運動の中から生まれたので、政府に対する批判や抗議もしっかり行っている。昨年のキャンドル集会でも<参与連帯>の中心スタッフは退陣行動の事務局スタッフとして活動をしていた。
さて、このような説明を聞いて、ふと思った。<参与連帯>と政党との関係はどうなっているのだろう? 政党が大衆団体である市民運動を「指導」しているのだろうか? あるいは、政党の介入などもあるのだろうか?