韓国雑記帳~韓国草の根塾&日韓環境情報センター&ジャパンフィルムプロジェクトブログ

韓国に暮らして30年。なぜか韓国、いまだに韓国、明日も韓国。2022年もよろしくお願いします。

参与連帯で衝撃を受けたこと、続き

2017-11-04 00:25:02 | 韓国の市民運動

<参与連帯>の事務所でいろいろ話しながら、今まで疑問に思っていたことを聞いてみました。ただ、とても微妙な問題で、とくに日本の運動圏(あまり日本では使いませんが、韓国で使うのであえて使います)の状況を知っていないと、何を聞きたいのかわからないのですが、どうにか伝わり、質疑応答が続きました。

僕の質問というのは、市民団体(大衆運動と言い換えてもいいです)と政党(労働者に基盤を置く政党や、進歩政党)との関係はどうなっているのか、という質問でした。というのも、日本の市民団体の場合、とくに政治課題を扱う市民団体の場合、政党の影響が、ときには<革命的指導>が行われた場合があるためでした。

この質疑応答には<参与連帯>の国際連帯の担当の専従スタッフと、7月に福岡で講演をした<市民社会団体連帯会議>のイスンフンさんが同席していましたが、二人の年代や活動経験が違うので、答えも若干違い、とても興味深いものでした。たぶん、一緒に参加していた日本人の皆さんも、よくわからない部分があったと思うので、僕の補充説明も含めてポイントを書いてみます。

すでに書いてあるように、<参与連帯>は政府や行政、政党、企業などから直接の補助金は一切もらっていません。政府や行政機関、企業などを監視し、対案を出すのが主な活動ですので、当然といえば当然です。環境団体の場合、例えば湿地の調査を5年ごとにしていますが、この調査作業は大学の研究所や環境団体が担当する場合が多いといえます。現場で保存活動をしている環境団体などが、その経験や知識、人材を提供して調査活動をするわけですが、一方で環境団体の財源的な基盤にもなっています。

このような調査や研究課題などを実行する能力は<参与連帯>にも十分ありますが、活動の目的のために、一線を引いていると理解できます。

では、政党はどうでしょうか。政党も国会議員や地方議員が持っている調査費などを活用して、シンポジウムなどを行う場合があります。この場合も、市民団体の専門性を活用して、講師の交渉やシンポジウムの運営などを市民団体が担当する場合もあります。以前、冬季オリンピックと自然保護のテーマでシンポジウムをしたとき、長野オリンピックに反対したグループの代表を招待したことがあります。これなども、グリーンコリアがシンポジウムを主管し、僕がコーディネートと通訳を担当しました。環境団体は、このやり方で国会議員会館でよくシンポジウムをやります。

これだけ政治的な課題について発言をしているのなら、政党との関係、とくに進歩的な政党との関係がもっと緊密だと思いましたが、建前ではどの政党とも<等距離外交>と答えていました。もちろん、個別メンバーはそれぞれ支持政党がありますし、政党の公認を得て地方議員になった環境運動連合の仲間もいますし、グリーンコリアの専従スタッフをやめて<緑の党>で活動している知り合いもいます。もしかすると、労働者階級に基盤を置く政党が市民団体の中にメンバーを送る、または市民団体のメンバーを党員として獲得する、という活動をしている場合もあるかもしれませんが、それほどの影響力はないようです。

質疑応答の中で、イ・スンフンさんが興味深い比較をしてくれましたが、政党は<権力>を目的にしていて、市民団体は<監視>や<告発>を目的にしている。政党が現実主義なのにたいして、市民団体は理想主義と言われると説明してくれました。たぶん、彼の大学時代の仲間の中には<政党>で活動している仲間がいるようですが、なかなか興味深い対比でした。

ここでは、政党と市民団体が同じレベルで認識されているな、と感じました。とくに<参与連帯>のような20年以上も続けて活動をしている市民団体の能力と影響力は、政党の大衆運動部門をはるかに凌駕しているなと、感じました。昨年のキャンドル集会でも国会議員は前のほうに座って参加していましたが、発言は初めの3~4回であっただけで、あとはすべて市民からの発言だったそうです。政党が躊躇したり、意見がまとまらない時、とくにパク・グネ弾劾なのか、自発的な辞職なのか、国会の中で意見がまとまらなかった時、市民は弾劾を主張するのを変えませんでした。このような、政治判断の正しさ、国民の意見をまとめる能力、そして状況を引っ張っていく力量と、政党をはるかに上回っていたと思います。そして、ここが大事ですが、政党も市民団体の政治判断や能力・力量を尊重したと思います。もちろん、お互いに不満や誤解や葛藤はあったと思いますが、それを乗り越える信頼関係が進歩的な政党と市民団体の中にあったと思います。今回の<参与連帯>との対話の中で、こんなことを考えました。

では、日本はどうでしょうか。<参与連帯>のメンバーは日本にも行ったことがあるメンバーで反核運動の交流をしようと思うと、二つの団体を訪問しないとダメなので、ちょっと……、と言っていました。この二つの団体、言葉を変えると二つの勢力がきちんと協力して活動をすればいいのですが、果たしてどうなのか。今回の選挙でも野党共闘ができた地域でも、果たしてどれだけ信頼関係を持ち、ともに行動したのか、そのへんは疑問です。二つの勢力の間できちんとした討論すらやってこなかった歴史があり、時にはお互いに裏切者とか日和見とか批判をしていたわけで、その点を乗り越えないといけないのですが、大変だなと思います。

ただ、希望があるのは、総がかり行動や市民連合ができて、すくなくとも土台はできたので、その土台をどれだけ強固にできるか、一人ひとりが何をするかが大切だと思います。例えば、僕のFBの友人を見ると、どちらかの勢力に属するのがはっきりしている人、ある勢力を最近やめた人、やめされられた人、あっちは今でも会いたくないという人など、いろいろいます。まず、これらの人と過去のいくつかのポイントについて、きちんと討論をして違いを確認して、信頼関係を築きたいと考えています。たぶん、韓国の運動の中でも、このような討論が積み重ねて来たのだと思います。このあたりのこと、韓国の仲間と機会があれば、もう少し話したいなと思います。年末年始、あるいは1~2月ぐらいに、討論会をきちんとやりたいなと思っているのですが、いかがでしょうか?