2009年刊行の、著者には珍しい短編集。
テーマは音楽と、人が別れていくこと。どれも大きい事件があるわけではいけれど、売れない音楽家の悲哀、人の縁のはかなさが無駄なく深く描かれている。
その上に飛び切りのユーモアも仕掛けられていて、「降っても晴れても」では友人と結婚した昔の彼女の家に泊めてもらい、ちょっとした失敗を隠すため犬が暴れたように見せかけろと友人に言われて、言われたままにするうちに元カノが帰ってくる。
鍋で古いブーツを逆さにして煮込んでいるのを見た時の彼女の反応…ノーベル賞作家の作品と構えずに楽しめる作品になっている。おかしくておかしくて、しばらく笑いが止まらなかった。
長編だけではなく短編もうまい。面白かったです。短いけど、仕掛けはあって深く考えるようにもなっている。