8年前の今頃、孫娘にウールの着物買ってあげた(やった)。帯は私の振袖用で代用。
これで法事に出て、親族デビューしたのでした。
森茉莉(鴎外の娘)から谷川俊太郎まで、文筆界の有名人の忘れられない人を描いたエッセィを集める。
どれも短くて読みやすいかなと思ったけど、扱うのが個人的な体験に傾くので、よほどうまく書かないと、字数も限られているし単なる世間話になってしまう。それはどんな高名な作家も同じことで、また一世を風靡したサブカル系の人は、古びるのも早く、その文章は今では古色蒼然。読みにくかった。
意外だったのはこの中で唯一、画家の岡本太郎の達意の文章。晩年の奇行、それだって戦略的なものだったかもしれないけど、の印象ばかりが強い人だけど、母岡本かの子を適度な距離感で描き、読ませる。一芸に秀でる人は何でも秀でているのでしょうか。
そして、この母にしてこの子あり、常識にとらわれない自由な生き方は親譲りのようです。
中原中也もよかった。詩人ですが、散文もピカイチ。弱々しい頼りない人との印象は一変した。死にゆく弟の往診に毎日来る医者、さじを投げているので、諦めると一日でも長く生きられると話しているらしい。兄は憤慨し、死後、挨拶を兼ねて、そのことを抗議しに行く。死ぬと分かっていれば、わずかな日数でも結婚させたかった、と。
中也の実家は山口県湯田温泉の名家、そのくらいの財力はあるのでそう言ったのだろうが、医師との心理的駆け引きが読みどころかと思う。
その他に松本清張が、清張少年の家が貧しくても差別しなかった小学校の先生のことを取り上げていて、素直に感動した。
某自治体の長にして作家のある人が、映画スターだった弟の最後を書いたものは、芸能人が好きな人には興味深いはずだけど、身内に作家がいるのも大変である。奥さんにしたら書かれたくないこともあったのでは。それともスターにプライバシーはないと、初めから腹をくくっていたのでしょうか。
奥さんの家系が半島出身なので兄はほとんど付き合ってなかったと、誰かから聞いたことがあります。そのせいか、ここでも一回出て来るだけ。
しかし日本列島に住んでる私たちは、大陸、半島、はたまた南西諸島からとルートはいろいろあったかもしれないけど、渡来人。早く来るか遅く来るの違いだけ。あまりきっちり分けてどうこう言うのもね。