楽に読めました。
この中には悪い人は出てこない。というか類型的な善人や悪人というのは現実世界ではなかなか出会わないもの。
たいていの人は毎日の些細なことに喜んだり悲しんだり、つまずいたり、また立ち上がったりするその日暮らし。
そこのところがうまく書けている。
主人公、宇陀川静子75歳は、夫の死後、息子一家と同居。くよくよせず、人を悪く言わず、水泳のレッスンに通い、昔の馴染みの男性を施設に訪ねて行き、町内会のバス旅行でひとり者のじいちゃんにちょっかい出されるのをうまくかわしたり、といかにもありそうなことを、めげずに流していく。
誠に小気味よいお年寄り。
家族には小さな波が立つ。出会い系サイトにはまる息子、孫の恋愛…静子も昔、夫に女友達がいたことを思い出す。が、それも遠い景色。
体が丈夫で、暮らすに困らないお金があり、好奇心があれば、老いもまた楽し。しがらみから自由な分だけ、好きに生きていける。
勇気を貰えた小説でした。