先週の里山歩きの女体三昧を堪能?した後、さてさて今週はと考え、
五名から東女体山に続く保線路から時折顔を覗かせていた檀特山に先ずは的を絞った。
以前に北側からの登山道を登った事はあるけれど、今回は東に続く尾根が目に入った。
たしかエントツ山さんが以前のレポートに本宮山~笠ケ峰さらに檀特山を周回していたのを思い出し、
レポートを再読して見ると、東の日下峠からの尾根道はどうやら問題ないようだ。
ただその時のエントツ山さんは北側に下りているので、そのコースだと半分は下道歩きとなる。
色々と頭を悩ませていたところアンジーパパさんから救いの手が差し伸べられた。
先週の東女体山への麓からの参道がどう考えても保線路を辿ったのでは距離が長すぎ腑に落ちないと
レポートに書いたところ、『北側の鈴竹からの林道に女体宮の鳥居があり、東女体山に続いている』と、
さらに『檀特山から西への町境も籔いていなく問題ない』とコメントを頂いた。
これで頭に圧し掛かっていた雲が一挙に晴れ、檀特山と東女体山も繋がり
一挙両得、檀特山から東女体山への周回コースが出来上がった。
大川ダムから南に走ると日下峠の道の脇にある広場に車を停めスタートする。
傍らには旧来の峠道らしいお地蔵さんが祀られ、その横には290mの水準点があった。
少し北側に下がった所から西に林道を歩いて行く。ここでエントツ山さんは340mの三角点へ登っているが、
直ぐ奥に植林地の作業道が見える。WOC登山部の三角点マニア?のセニョさんがいたら
絶対藪こきしてでも340mへ取り付くだろうけど(笑)、あっさりとこちらの道を選択。
杉林の中の作業道は伐採地となりここから檀特山からの尾根と340mとの鞍部へと登って行く。
町境となっている尾根は防火帯を思わすような予想以上に広い道が続いている。
途中で南側の伐採地からは340mのピークの右にガスのかかった笠ケ峰が見える。
時折道幅が狭くなるが尾根を外さなければ問題なく、今日初めての鮮やかなミツバツツジ。
道は緩やかになったり急坂になったりを繰り返す。
そのうちに410m辺りで尾根を塞ぐように大岩が現れる。この辺りから尾根の地質が変わったのか
ウバメカシが密生し植生が変わってきた。
時々立ち止まっては自撮りをしていくが、足元が悪かったり急坂だったりすると
10秒タイマーでは間に合わず、こんな写真になったりする。
531mの標高点を過ぎると今日唯一、北側の大川町の眺望があるが
麓の大川ダムが確認できるほかはガスがかかっていて遠くまでは見渡せない。
道は相変わらず小さくアップダウンを繰り返しながら続いていく。地形図の等高線ではさほどではないけれど、
実際に歩いてみるとかなりの急登がある。
しばらくすると右手に作業道が見えた。ここからは尾根の北側は杉林、南側は自然林の尾根になる。
目の前に大きな桐の花がぶら下がっている。聞こえてくるのは鳥の鳴く声だけ。
春先から練習をしてきたおかげでウグイスもきれいな声で鳴いている。
痩せ尾根を過ぎると尾根は藪いてきた。通れそうなところはかき分け歩き、
無理な場所は北側の植林地へ逃げながら進んで行く。
藪を抜け、鮮やかなオンツツジを横目に見ながら進むと見覚えのある檀特山に着いた。
ここまでで約2時間弱かかっている。先週同様約15kmの周回コース。全時間は6時間ほどを考えていたが
エントツ山さんの日下峠~檀特山の1時間30分を参考にしたのが間違いだった。
清滝大権現が祀られる石祠の周りは広場になっていて、その昔は雨乞いの祭事が行われていたという。
檀特山は男得山?かななんて先週に続いて不純な考えでいたら
インドの仏道修行山にならって付けられた霊験あらたかな山名だという。
広場には三等三角点・檀特山。
さぁ~ここからが今日のメインイベント?南西への町境を辿ってまずは下って行く。
ところが石祠の後ろの道を進むとどうやら北側の登山道を下っているのに気づき後戻り。
山頂に出る手前に張られていた白いビニールテープが道迷い防止?の
道かなと思い戻ってみるもGPSでは町境の線を外している。
一旦また戻ってみてまた登山道を少し下ってみるも痩せ尾根で南西側は崖になっている。
いよいよ困り果ててとにかくGPSを見ながら町境の線に沿って山頂から急斜面を下ると
途中からは所々にテープがあり、まずは安心。これなら山頂でも取り付きのテープがあったはずだが
どうやら見逃してしまったようだ。
一旦、山頂から鞍部まで降り何度がアップダウンを繰り返す。鞍部には大きな大きな桐の木。
振り返ると檀特山山頂が見え、少しだけ南東の眺望が開けているが相変わらずのガスの中。
三つ目のピークの533mの標高点からはガラッと道の風景が変わってきた。
ウバメカシがすき間なく密生する尾根道。
四方八方にくねくねと枝が伸び密集しているウバメガシの林は何だか騒がしい。
どこでも同じだが表面がツルっとしていて乾いた小さな葉の積もる道は滑りやすい。
最後のピークを過ぎると岩とウバメガシのけっこう急な尾根になる。
落ち葉の積もる斜面を避け岩を辿り辿り一歩づつ下るので時間がかかる。
枝を握り岩の上に足を置きゆっくりと降りて行くが、時折トラップ岩に騙されて
足を置いた途端に崩れていく。『あぶない、あぶない』。こんな所で転んだら・・・・。
頭から血を流す自分の顔が目に浮かんできた。里山にしては随分とワイルドな道だ。
少し余裕が出てきたのでGPSを見ると町境の線は西に振れているがそのまま真直ぐに進んでいる。
仕方がないので町境の方向へと谷側の斜面へ修正。
ところがどっこいここからが悪戦苦闘の斜面。先ほどの岩の道とは打って変わって
腐葉土のような柔らかい土の斜面は足を踏み出した途端に滑って行く。
木から木へ、まるでムササビのように飛びつき木の根元に足を置く。
そうでもしないと立っているだけで足元が滑って行く。
その内に今度は枯れた立木のトラップに引っ掛かり、手を当てた途端に木は倒れ、
体重移動をしたあとだったので大きく尻もちをついた。
木と木の間隔が広く飛び移れないところで躊躇していたら上から太いツルが伸びている。
これ幸いにとロープのようにして掴んで降りるとツル全部が頭の上から落ちてきて
思わずひっくり返りそうになる。今日3回目のトラップ!
こうなると手に持つストックが邪魔だが、ザックに仕舞う余裕もない。
ヤレヤレいい歳したおっさんがこんな山の中でひとり何してるのかと思いながら、
『エイッ!』と声を出しながら木から木へと飛び移るのを繰り返し、何とか谷筋に下りると
地形図に載っている林道の間地ブロック積みが頭の上に見えた。
何とか林道まで這い上がった時にはどっと疲れが出た。僅か40mほどの下りだったが
随分と時間がかかってしまい体力も消耗してしまった。腰を降ろして大休憩。
鈴竹地区へと続く林道は所々で崩れているがしばらくは緩やかな下り坂。
ガスが流れて青空が広がり東女体山の尾根と鉄塔が見えた。
先ほどあれだけ悪戦苦闘して下った山の斜面は人の苦労も知らぬ顔で
涼し気な新緑の色に包まれている。
見えた鉄塔が随分と遠く高く感じてだんだんと気力が萎えてきた。
このまま林道を下って鈴竹へ歩いて行こうか・・・という軟弱な気持ちが頭を過る。
砂防ダムの下の古い橋を渡り道を回り込むと、アンジーパパさんが教えてくれた木の鳥居が見えた。
近づいて見上げると確かに額塚には女体宮の三文字が刻まれている。
女体・女体・女体~!とさっきまでの萎えた気持ちから、何故か気力が湧いてきた。
『男って単純よね~』とどこからか声が聞こえてきそうだが、心機一転気持ちを新たにして?山道へと取り付いた。
ここからは参道のはずだが道は崩れほとんど道の体をなしていない。
山側から崩れた土で埋もれ油断すると足を踏み外し谷側に落ちそうになる。
『しかしこんな道。いくら信心深くても普通の人は登れないだろうな~』と思いながら歩いて行くと
次第に道が怪しくなってきた。アンジーパパさんが教えてくれたのは472mの標高点を通る支尾根のはずだが
取り付きから所々に付けられたピンクのテープを辿るとどんどん谷筋を進んで行く。
最後は472mとは谷の反対側にテープは続いている。
このピンクのテープは林業関係者や国土調査の人も使っているので、
果たして道を導いてくれているテープかどうか?所々で小さな滝がある。
流れる水は少ないが岩肌はぬめっているので雨の後には結構な水量になるのだろう。
谷筋を高巻くようになると道はまた急登となり10歩歩いてはひと呼吸の繰り返し。
女体への道はそう簡単には攻略させてくれそうにない。やれやれ~!
すると急登に長いロープが張られている。と言う事は・・・・?
普段登りではあまりロープを頼らず登って行ける場所がほとんどなのだが、
ここはとにかく足が滑る!片手にストック、片手にロープを握って登って行く。
そこを登りきると少し崩れた石積みが残る場所に出た。やはり人の行き来があったと言う事だ。
でもさっきのようなロープを使ってまで登る参拝者などいるはずもなくまた疑問が残る。
ここでも腰を降ろして菓子パンをひとつ頬張る。
この後も踏み跡と見れば見れないこともない登りが続き、取りあえずテープを信じて登って行く。
相変わらず足はほとんど前に進まない。
先ほどの谷筋の上流部になるのか空沢のような苔むした岩がゴロゴロする場所にでた。
落ち葉が積もり柔らかく滑りやすい斜面よりは、ガタガタするがグリップの取れる岩の間を登る。
城壁と見間違えるような割れ目の入った大岩が現れた。
いつものように岩が現れると尾根もそろそろ近いかなと
思ったが最後に支尾根に取り付くまでがザレていてもうほとんど立つこともできず、
さっきの下りのように木を掴み、根元に足を置きながら這い上がる。
『人~生、楽ありゃ苦~もあるさ』と水戸黄門の歌を口ずさむが、今日は苦ばかりのような気がする。
支尾根もまだまだ楽はさせてくれそうにない。ただ木の根としっかりとした足元は
今までの不安定な足元と比べると天国と地獄。いつもなら愚痴りそうな急登もなんのその!
やっとのことで鳥居から初めて平らな場所に出た。距離にすれば大したことはないが
標高差250m程度を1時間以上かかったことになる。『恐るべし女体山!』
と言うか自分の体力のなさが悔やまれる。木々の隙間から保線路の途中にあった603mのピークが見える。
一服した後さらに岩の点在する尾根を少し登ると保線路に出た。この先を鉄塔広場を通り
保線路から分かれて直登すると先週も来た東女体山にやっとこさ着いた。
『遥~々~来たぜ女体山!』と言うほどの距離ではないけれど、疲労感としては十分!
ここでまた新たな疑問が湧いてきた。取りついた麓の鳥居には、
しめ縄を模した藁の綱には真新しい御幣が付いていた。
この女体宮の石祠にも同じく御幣が巻かれている。雨に濡れて痛んでなければ色褪せてもない。
誰かがやはり絞めなおしているはずだが、とてもじゃないけどさっきの道を麓の人が
登ってくるはずもなく、やはりアンジーパパさんが歩いたという472mからは古道があったのだろうか?
取りあえず『今日はここまでで勘弁してやら~』とうそぶいて、先週登った保線路を下って行く。
この道も山側からの土が溜まって谷側に傾斜が付いていて、先週はとても歩きづらいと感じたが
今までの難路に比べたら格段に歩きやすく感じ、道の脇に咲く草花を愛でる余裕も出てきた。
『ほ~せんろ・保線路(とりゃんせ、とおりゃんせ)、ここはど~この細道じゃ』などと
バカな替え歌を謳いながら保線路を下って行く。
道の脇の木の枝からあちこちで細い糸をだして虫がぶら下がり、顔についたり腕についたりする。
その内に襟元から入った虫がチクっと噛んだ。蜘蛛の巣だと直ぐに気が付くが、糸が細くて見えにくい。
何度も顔に付いた糸を指で除きながら歩いて行くと林道の取り付きに出た。
荒れてザラついた林道を進むと今日初めてのアスファルト道に着いた。
それにしても今日はこのユキモチソウがやたらと目につく。
計画した時には下道歩きを出来るだけしないようにとコース取りをしたはずなのに
今日は散々な悪路に苦戦したせいか、アスファルトを見た途端ホッとした。
ここからの下道は予定ではまだ5km以上はあるはず。時間はすでに歩き始めて6時間30分を経過していが
まだまだ先は長い!
先週歩いた浄水所のある分岐まで下り大坂峠に向かって歩いて行く。
コンクリート道からは笠ケ峰が遠くに見えた。まだあの左側まで歩いて行かないといけない。
『ふ~う』とため息ひとつつく。
少し登ってから下ると国道377号線。ここからしばらくは下り坂が続いていく。
鈴竹の集落まで来ると西に先ほど下った東女体山からの稜線が見える。
田には水がはられて田植えをする人の姿も。
アスファルトの照り返しが強く、喉が渇いて度々水分を口にする。
道の脇にあった集会所のような建物のベンチに腰掛け、最後の休憩。
足の疲れよりも腰と背中が痛い。
集会所からの先から国道を離れて日下峠への県道2号線を登って行く。
予定では途中で県道から林道を入り北に登るつもりだったが、
しばらく歩くと上の方からワンワン、キャンキャンと吠える犬の声が聞こえてきた。
そして目の前の道を大きな猿が横切って行く。なんだかめんどくさくなって、引き返して県道に。
相変わらずアスファルトの暑さが伝わってくるが、日陰を選びながら少しづつ高度を上げていくと
南に開けた谷地の奥に高平山に続く県境の稜線が見える。
水分を摂っても直ぐに唇が渇いてくる。峠の手前の日下まで来ると西から南の景色が広がっている。
足元の花が『あと少し、ガンバレ!』と声を掛けてくれてるような気がした。
モミジの新緑やオンツツジに励まされながら、なんとか日下峠に到着。
距離にしたら15kmほどだったが何といってもスタートしてから8時間もかかった。
普通の道ならこんなにも時間がかからなかっただろうが、今日はとにかく道が悪くて
この3週間の里山歩きでは最長時間となった。今日の最高気温は25度。
そろそろ暑さが気になる里山歩き。さらには蜘蛛の巣もニョロニョロやマダニも気になる。
ネットではアケボノツツジが咲いている写真も目にするようになった。
具体的な数字を示すこともなく、ただただ外出自粛を呼びかける人たち。
いつになったら県をまたいでの移動がよくなるのだろう。
今日のトラック
この3週間で前山ダムから日下峠が繋がった。
今日の3Dトラック