今週はそろそろ梅雨明け、夏山シーズン到来か!と思っていたが、
九州・中国地方は開けたものの四国地方は足踏み状態。
今日の予報も曇り空と所によって雷となっている。先週と同じような感じだが、
雷が怖い稜線をお昼過ぎにやり過ごせば、何とかなるだろうと決行する事にした。
今日は大永山トンネル出口に駐車して、フォレスターハウスから前回歩いた分岐まで登り、
先ずは平家平までを線で繋ぐ。平家平と冠山は同行の奥様の二人も既踏の山なので、
そこから先のちち山の分れまでを繋いだ後、獅子舞の鼻へと下って大永山トンネルに
戻って行く周回コース。距離にして14km弱。我々としては比較的ローングコースとなる。
いつもの大永山トンネルの南の公衆電話のある路肩に車を停めてスタート。
県道47号線をフォレスターハウスへと下って行く。
フォレスターハウスの入り口には鎖がかかり、閉館中のボードが掛けられていた。
その鎖を跨いで園内へ入り建屋の横を通って進んで行く。
二週間前には通った道を間違えて、一段下の道を歩いて行くとゲートには鍵がかかっていた。
そのままゲートの下を少し広げて通らせてもらって遊歩道を歩いて行く。
橋を渡り遊歩道が終わるといよいよ山道となる。
沢沿いの左岸の道を涼し気な水の音を聞きながらゆっくりと高度を上げていくと、
前回あっちゃんが足を滑らせもがいていた渡渉の場所に出た。
今日は『前回の轍を踏まないように!』とストックを持ってくるように連絡していたので、
意外とすんなりと渡ることができた。前回の仕返しとばかりにあっちゃんがカメラを
構えているが、そうは問屋が卸さない。余裕の笑顔で先ずは今日一番の課題をクリア!
ここから何度が渡渉を繰り返すが、思ったより水の量が少なく助かった。
他人ごとではなく自身の登山靴も濡れた岩の上ではほぼグリップが効かず、
何度かひやっとする場面も。前を行く二人も慎重に渡って行っている。
やはりこの道は雨が降った後はけっこう難易度が上がってしまう感じがする。
沢の中を進み、尾根道の分岐となる穴の開いた橋を右手に見て、更に登って行くと
大規模崩落場所に着いた。数十メートルに渡り崩れた斜面の下に、何とか難を逃れた
足場の階段があり、そこを登るとロープが掛った岩場になる。
このロープの岩場を登るのが楽しみです!と言っていたあっちゃんが先ずは取りつく。
続いてルリちゃんが後に続いて行くが、あっちゃんの期待に反して
思ったより簡単に登れて『大した事はなかったね!』と今日の第二関門クリア!
崩落個所の最上部をトラバースすると足元は杉の木の根っこの道になる。
木の根の道が終わると九十九折れの急登が始まる。
九十九折れの道が終わると一つ目の鉄塔広場に着いた。ここで水分補給の小休止。
周りは雲がかかっていたが一部青空が見えた。鉄塔の間から最後の目的地の
ちち山の分れが見えている。『う~ん、なかなか遠いな~!』
鉄塔広場からはもう一ヵ所鉄塔のある場所を通過して、森の中の道になる。
前回歩いて見覚えのある木々を、横目に見ながら登って行くと尾根の分岐に着いた。
ここから平家平までは1.3kmと道標には書かれてある。二人がYAMAPを見るとコースタイムが
55分となっている。『1.3kmで55分もかかるんかな?』とあっちゃん。
『と言う事は稜線でも登りがけっこうあると言う事ですね!』と。
その横でルリちゃんは『ここまでほぼYAMAPのコースタイム通りやね!』と。
ここ最近奥様お二人はYAMAPのコースタイムに拘っていて、平均タイムの100%以下は
許せないらしく、へっぽこリーダーとしては急かされ付いて行くのがやっとなのだ。ト・ホ・ホ!
分岐からしばらくは歩きやすい尾根道。すると前を歩くルリちゃんから悲鳴が聞こえてきた。
近づいて行くと二人が大騒ぎしている。その騒動の正体は岩の上で素知らぬ顔でドクロを巻いていた。
道に笹が現れると視界が開けてきた。振り返ると前回歩いた三ツ森山と
前方には第一目的地の平家平が見え始めた。
道は徐々に高度を上げていく。しばらくすると笹の中に薄黄緑色の綺麗なバイケソウの花が目立ち始める。
この辺りまでは笹は刈り払われていてまだスムーズに歩いて行ける。
二人の頼もしい背中を見ながら付いて行くと、既に到着してザックを降ろしているあっちゃんは
もぐもぐタイムに入っていた。遅れてへっぽこリーダーも到着!
いつもなら360度の絶景が広がる山頂だが、ちょうどガスがかかって眺望もほとんどない。
ここでリーダーも腰を降ろしてスパスパタイム。
さぁそれでは次の冠山へ行きますか~。名前の通りしばらく平らな笹原道を歩いて行くと
ガスが流れて冠山が見え始めた。
一旦プチ岩場を下って稜線に出ると、ここからは笹は刈られてなく、足元の見えない
歩きにくい道にスピードが上がらない。最後に目指すちち山の分れも見え始めた。
背の低いクマザサの所々に、背の高いバイケソウの花が頭を出している。
振り返って今歩いて来た平家平の笹原と前方に冠山への稜線。
冠山が近づくにつれクマザサの勢いが益々酷くなってきた。
時々隠れた笹や木の根に躓きそうになるが、親切に危ない根にはピンクのテープが巻かれ、
注意を促してくれている。ストックで掻き分け掻き分け進んで行く。
山頂手前のピークを乗越と遠くからも見えていた山頂直下の大岩が現れる。
この辺りになるとクマザサは胸の辺りまでになり、前の二人が笹に埋もれている。
大岩の横を通り、山頂へ左側から回り込むようにして登って行く。
もうすでにズボンの膝から下は笹の露でびしょ濡れ状態。
写真だけなら未だしも、立ち止まって動画を撮るとけっこう時間を取られる。
元気な二人にどんどん離されていく。やっぱり撮影班は被写体の人より、基本的に達者でないと・・・・。
田中陽希さんのカメラマンの駒井研二さんや平出和也さんは
田中陽希さん以上の最強山岳クライマーだという。比べられるものではないが、
へっぽこリーダーカメラマンももっと鍛えないといい絵が撮れない・・・・・と思うのだが。
冠山山頂からは北から西の眺望が曇り空の下だが広がっていた。
ちち山の分れの笹原、そして来週下りで歩く予定の笹ヶ峰の南尾根。
先週の激辛冷麺で失敗したあっちゃんは、いつものように素麺でお昼。
頭の上では青空と入道雲が眩しいが、南の空には気味悪い灰色の雲の中でゴロゴロなり始めた。
やはり雷が気になり始めたので、食べ終わって間もなく最後のちち山の分れへと急ぐ。
山頂からは更に笹が生い茂り、足元が全く見えない。
時折岩に躓き尻もちを付きそうになりながらどんどん下って行く。
あまりに下って行くので先頭のルリちゃんが『道は合ってる?』と。
稜線にでても足元が斜めになっていて、笹の根が滑って歩きずらい。
道がぬかるんで急な坂には太いロープが掛けられていて、随分と助けられた。
ロープがが終わるとやっと笹道が終わり一の谷越えに着いた。
ナスビ屋敷への道はやはり通行止めになっていた。反対側の一の谷やかたからの
道も今はほとんど歩く人もいない道になっている。
しばらく樹林帯の中は歩きやすかったが、直ぐにまた笹原尾根の稜線になる。
ここからは笹と一緒に萱が生え、手で掴むと切れそうで厄介だ。
ちょっとしたピークで前の二人がごぞごぞと何かを探している。
どうやら三角点を探しているようだ。するとあっちゃんの『ギャ~』という悲鳴がした。
『た・た・たぬきが足にぶつかった!』と。足元の笹の下で昼寝でもしていたのだろうか、
慌てた狸が足にぶつかりながら逃げて行ったという。
狸の寝床の三等三角点・奥七番・1619mを通過。
振り返ると冠山から随分下って来たのが判る。
その内に来週に登ってくる予定の寒風大座礼線林道からの分岐に着いた。
『じゃ~このまま、ちち山まで歩けば、今日で線が繋がりますね!』とあっちゃん。
『え・え~! (^_^;)』とへっぽこリーダー。
『でも私、前回歩いた笹が峰からちち山のトラックが記録できていないの』とルリちゃん。
『ん~ん、やっぱり来週に持ち越しやな』とホッとする、へっぽこリーダー。
稜線を越えて北からどんどんガスが上がってきている。
次第に周りはガスが濃くなってきた。手元のジンバルカメラの調子が悪く、
設定をいじくっている内に、前の二人がどんどん遠ざかって行く。
ついにはガスの中に姿が見えなくなってきた。ひょっとしてこれはガスのせいではなく
疲れで目が霞んできたのかもしれない・・・・・(笑)
ひっこらひっこら登って行くと、ちち山の分れの道標とその横に佇む二人が見えてきた。
『もう、だらしがないわねリーダー』と陰口が聞こえてきそうだ!
待ってましたとばかりに元気な二人の写真を撮らされる。
それでは下って行きますか、と登山靴の紐を締め直しスタートする。
相変わらず真っ白なガスの中の笹原の下り坂。以前に比べると随分笹が刈り払われていて
前の二人のスピードが上がっていく。『スピード違反やで~!』
下って行く途中で少しガスが流れて右手に稜線が見えてきた。
『今日はどの辺りから登ってきたんだろう?』とあっちゃん。
『真ん中の烏帽子のように見えるのが冠山やから、左の端辺りかな~』
ちち山の分れから続く笹原が終わり樹林帯の中の道になる。
すると今度は前を歩くあっちゃんの悲鳴がまた聞こえてきた。
今度もまたドクロを巻いてジロリとこちらをみている。出来るだけ距離を取り
飛びついてこないか冷や冷やしながら、その横を足早に通り過ぎる。
しばらく下りだった道が一旦登りになり、登りきると獅子舞の鼻に着いた。
獅子舞の鼻から少し下がって行くと、このコースの主の大ブナ。足元に立つとその大きさが判る。
最近巷では人生100年時代と騒がれている人間界を、『なん~んだ、それぽっちで』と
涼しげな顔をして見下ろしているような気がする。
ヒメシャラ兄弟の横を通りどんどん下って行くと、道は次第に緩やかになって来た。
その内に馬道の別れと書かれた左右に幅の広い道が続く場所に出た。
馬道(炭の道)は別子銅山開坑夫たちの生活物資や、坑道保持の木材や銅鉱石焚き上げ用の
木炭などが地元や土佐から運び込むために造られた道。
ここからは等高線に沿うようにほぼ水平な道が続いて行く。
ここまで降りてくるとあと一息。ザレ場のなんのその、二人のスピードも上がってくる。
中七番の道標からは更に幅の広い作業道になる。頭の上ではゴロゴロと音がし始めたが、
ここまで降りてくれば何とか大丈夫だろう。
作業道から少し下がってまた馬道をを歩くと大坂屋敷越。
(ここから昔話)
以前に入会していた山の会で、笹が峰南尾根を登り、ちち山からバスの待つ大永山トンネルに降りた際、
途中で女性一人が転倒して動けなくなった。担ごうとするが腕をケガしているらしく、
痛がって担ぐこともできない。仕方がないので数名残して下山して、トンネル横の公衆電話から
連絡をすると1時間ほどしてレスキュー隊が着いた。隊員から道案内をしてくれと言われ、
当事メンバーの中で一番若かった私に白羽の矢が当たった。山から下りて疲労した上に
外は既に真っ暗で雨が降っている。渋々下りて来た道をレスキュー隊と一緒に登って行ったが
この大坂屋敷越で力尽き、『もうこれ以上歩けません』と言うと、二次遭難を恐れて
『ここから絶対に動かないでください』と言われて、雨の中真っ暗なこの場所で独りで座り込んでいた。
その時はライトもなく、時折何か音がするとその度ビクビクして数時間過ごした思い出?の場所。
大坂屋敷越からはまずは間伐され、手入れの行き届いた杉林の中を下って行く。
杉林が終わると沢沿いの道になる。左岸から右岸へと渡渉し小滝の横を通る。
馬道の面影が残る石垣の道を下って行くと林道に出た。
三人そろったところで『お・つ・か・さま!』と。疲れ切ったへっぽこリーダーを他所に
奥様二人は元気いっぱいのバンザ~イ!
線で繋ぐ石鎚山~剣山。提案した本人に比べて賛同してついて来た二人が俄然元気。
このままではリーダーの地位も危うい。とは言え歩く時間が長くなってくると、
足の疲れよりも腰の痛みが酷くなるのをどうにかしないと・・・といつも思うだけ。
徐々に西へと繋がって行くトラック。来週こそは梅雨明け一週間の青空が期待できそうだ!