腰の調子がぼちぼち良くなり始めた矢先に、今度はお腹の調子が悪くなってきた。
便意をもよおした時のような腹痛が続き、排便した後も収まらない、
二日ほどそんな状態が続いたので病院へ行ってみると、WBC(白血球数)が異常に
多くなっているとの事。先生は『お腹にバイキンが入ってるようです』と。
薬をもらって腹痛はその日のうちに収まったが、しばらく下痢が続いていた。
病院へ行った後の次の日、年に一度の健康診断の問診票にそのことを書いたら、
『お腹の調子が戻ってからの検査になります』と言って受け付けてくれなかった。
五月に入ってからどうも調子が出ないし何だかやる気も出ない。これはひょっとしたら
五月病かな?と思ったりしたが、新入社員じゃあるまいし、還暦を
迎えようというおっさんが今更・・・・・。ん、還暦!といえば今年は本厄。世間では
体調を崩しやすい、大病を患いやすいなどのイメージがある。そうか厄年だから体の
調子がイマイチなのか、それとも最近言われ始めた男性の更年期障害かもしれない。
などと色々考えたが、答えはでないままやはり体調は回復しないままでいた。
今週は線で繋ぐ石鎚山~剣山を再開して、カガマシ山・橡尾山・笹ヶ峰を歩く予定でいたが、
今回は初めてのコースで、計画したコースと同じ周回コースを歩いている人も見当たらない
のもあって、体調も含めてどうも気乗りがしないので、奥様たちに計画の順延の連絡を入れた。
その代わりに『勝手知ったる剣山を、のんびりと歩きます』と伝えると、同行すると返事が来た。
昨年の秋に剣山に出かけた時は、集合場所は貞光の道の駅の第二駐車場にして、そこから
乗り合せをして見ノ越までは一台で出かけたが、帰りにその第二駐車まで戻ってくると
『長時間の駐車は禁止』と張り紙をされていた。仕方がないので今回は貞光から438号線を
南に少し車を走らせ、旧皆瀬小学校の手前の路肩が広くなった場所に車を停めて、
そこから乗り合せで見ノ越へと出かけて行った。
ところが七つのヘアピンカーブを過ぎ、スキー場跡の手前で警備員のおばちゃんに止められた。
『は~い!50分まで通行止め!』といやに明るくそして素っ気なく旗を振って次々来る車を
止めている。がけ崩れの復旧でなんと火曜日と水曜日だけの時間通行止めで工事をしていた。
見ノ越の駐車場には平日にもかかわらずけっこう車が停まっていた。しかも半分近くが四国
以外のナンバー。車から降りてくる人達を見るとやはり年配の方が多い。『GWも日曜も関係
ない人たちね~』と三人で言いながら、そういえば自分たちも十分に年配。そして三人の内の
二人は平日も土・日も関係ない人なのだ。
支度を終えて劔神社へと向かって行くが、他の人たちは何故かほとんどの人が
リフトに乗って上がっていっている。遠くからわざわざ来ているのに、せっかくなら登山道を
歩いて登ったらいいのにね~と三人で話をしながら、石段を登って行く。
神社に参拝した後、奥にある簡易宿泊所の横の注連縄を潜って山へと立ち入って行く。
するとあっちゃんが『あれ~こんな注連縄あったっけ?』と。今まで何度もここを
通っているのに、初めて注連縄がかかっているのに気づいたという。
1400mの見ノ越からはリフトを使うと一気に1750mに西島駅に着くが、
やはりこの道をゆっくりと登って行くのがいい。夏のキレンゲショウマの咲く頃や、
秋の真っ赤に染まる紅葉の頃はよく来るが、新緑のこの季節に訪れた記憶があまりない。
見慣れた登山道も緑のシャワーが降り注いで、いつになく新鮮に感じる。
そして山頂から広がる広葉樹林の中にあるこの道の、ブナやミズナラの巨木の多さに
今更ながら気づく。芽吹いたばかりの木々の緑の色に、自分たちの身体まで染まりそうだ。
リフト下のトンネルまで、そんな木々を眺めながらゆっくりと登って来た。トンネルを
潜った先にある分岐から、いつもは下りでは歩いた事のある遊歩道コースを今日は登りに
使ってみよう。
上りのリフトには膝の上にザックを抱えた人たちが乗っている。見ノ越の奥には
山頂の笹原が目立たないくらい裾野の緑が瑞々しい丸笹山が見える。
この遊歩道コースはいつもの道と比べると西島駅まで倍近くの距離があるが、その分
傾斜も緩やかでのんびり歩くのにはもってこいの道。
途中、何ヵ所も道の谷側には巨木が倒れていた。
この谷間から流れ出た水は祖谷川となり、そして吉野川へと流れ込む。
竹筒の中から流れ落ちる水に手をやると、その手を戻すくらい未だ水が冷たい。
ダケカンバの森に入れば西島の尾根はもう近い。いつもと反対に歩く方向が違うと、
見える景色も違って見える。またこの辺りの植生がいつもの道と大きく雰囲気が異なる。
『まるで違う山を歩いているみたいね!』とあっちゃん。
石灰岩の岩が道に現れると、西島神社の大岩が左上に見え始める。
直登をすれば直ぐなのだが、道は回り込むようにして緩やかに大岩の足元へと続いている。
西島駅の前の店は工事が終わって外観が綺麗になっていた。休憩所と張り紙がしてあったが
鍵が閉まっていて中へは入れない。店の前のベンチからは正面に三嶺。
駅舎の横まで来ると北側に矢筈山から寒峰への稜線が見える。リフト越しには
丸笹山と赤帽子山の笹原。振り返ると雲海荘の上の空に雲と一緒に虹が流れていた。
『時間通行止めの通行時間に間に合うように、2時30分には見ノ越に降りてきましょう。』
と言って、ここからはいつもの刀掛けの松から山頂への道を登って行く。
リフトに乗ってきた足元がスニーカーの人達の姿が目立ち始める。服には1号車・2号車の
バッチを付けている所を見ると観光客なんだろう。先頭で刀掛けの松に着き水分補給をしていると、
奥様たちの前後にも次から次と、そんな軽装の人たちが登って来た。
剣山本宮宝蔵石神社の鳥居の手前で何やら撮影隊が・・・・。その撮影隊のカメラを
向けた先には山神さんがいた。すれ違いざまに『ご苦労様です!』と声を掛けると、
『お疲れ様です!』と山神さんから返事が返ってきた。神社の社殿でお参りを済ませて
佇んでいると、いつまでたっても奥様たちが登ってこない。何人もの人たちが登ってきた
後にやっと二人の姿が見えた。『途中で花の名前にあ~だ、こ~だと二人で話していたのよ』
とるりちゃん。刀掛けの松から上にトリカブトの群生地があるが、
その周りに小さな芽がたくさん這うように生えていて、それをルリちゃんはトリカブトの芽
だといい、あっちゃんは違っていると二人で論争?になったようだ。
山頂ヒュッテから階段を登り、山頂の木道を歩いて先ずは三角点へ。後ろからは先ほどの
撮影隊が山神さんを先頭に歩いてきている。天気予報は午後からは晴れマークだったが、
軽そうな雲が高い位置でかかっていて、イマイチきれいな青空を覗かせてくれない。
三角点から早々に引き上げて西のテラスに移動する。テラスの先に立つと笹原を涼しい風が
吹き上げてきた。まだ肌寒い風に一枚薄手の上着を着こむ。テラスに腰を降ろしてさっそく
お弁当を広げる。今日はそれぞれ冷たい麺を持ってきたが、これなら温かいラーメンでも
充分よかったような気がする。食事の後はお湯を沸かしてコーヒータイム。
今日はスターバックスコーヒーを持ってきた。2時間近く車を走らせ、2時間近く歩いて
やっとたどり着く、ここはスターバックスコーヒー西のテラス店。ただ余り馴染みがなくて
袋に書いてある品名と内容がよく分らない。確かに説明書きに書いてある通りに、
かすかにナッツの香り?がするような、しないような・・・・。おじさんには判らない。
今日はのんびりとこのテラスでと思っていたのに、時間通行止めのせいで意外と
時間がないのに気づいた。コーヒーを飲んでスイートポテトを食べた後、ザックを
担いで下って行く。西のテラスから雲海荘への木道を歩き、宝蔵石神社のご神体に
なっている宝蔵石の前まで来ると『こんな所があったんや~!』とあっちゃん。
登山口の注連縄といい、このご神体の宝蔵石といい、奥様は意外と周りが見れていない。
これではなかなかDランクからの昇格は望めそうもない。
宝蔵石神社の鳥居の前まで降りると分岐がある。奥様たちが歩いたことにない左の
大剣神社への道を下って見ることにする。山頂直下は笹の中の道だったのが
途中からはダケカンバの中の道になる。
その林を抜けると大剣神社の背後に立つご神体の高さ50mにもなる御塔石が
目の前に現れる。ただこちら側からはそれほどの高さには見えず数メートル
ほどの岩に見える。その岩を眺めながらあっちゃんが、何やら登るルートは
ないかと『あそから右に行ってそこから上の岩に掴まって・・・』などと、
罰当たりな事を言っている。『そんな事、絶対にイカンよ!』とルリちゃんも
あきれている。とにかくこんな場所では首に縄を付けておかないと、何を
やらかすか、目が離せない・・・・。
大剣神社から西島駅までの間、背負子を背負った男性陣が前を歩いている。
山頂のトイレの横にある施設で自衛隊の人たちが何やら作業をしていた。
その作業に必要な物品を山頂まで運んで降りて来たそうだ。
西島駅まで降りた後、まだ少し時間に余裕があったので西島神社を覗いて見る。
巨大な岩を背に小さな社殿がひっそりと佇んでいた。
後は見ノ越までのいつもの道をのんびりと下って行く。道の脇の木々には名前を書いた
木札がかかっている。『こうして書いてくれていると憶えやすいわね!』と奥様たち。
ん~でもたぶん次には憶えていないでしょうね。
今日はのんびり山歩きに奥様たちにもお付き合いいただいた。
何度も通っている剣山だが、いつもと違う道そしていつになくゆっくりと歩くと
また違った景色が見えてきた。途中でお会いした山神さんのお陰で登山道は整備され、
安心して歩く事が出来たうえで、豊かな自然を感じることのできる剣山。
何度来ても飽きることのない、やっぱりいい山だ!
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