ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

睡眠不足で悪くなった記憶力を改善する方法

2023-03-16 10:35:57 | 自然
私が受験をしたもう半世紀も前のころには「四当五落」という言葉があり、睡眠時間4時間で頑張れば合格するが5時間も寝てしまうと落ちるという意味でした。

寝食を忘れて頑張るのが美徳された高度成長期の昭和らしい造語といえそうです。睡眠不足があると十分なパフォーマンスが発揮できず、かえって損をするという科学的な知見が増え、最近の受験の指導書では「六当五落」などに代わってきているようです。

睡眠時間を削ってやみくもに記憶するよりも、新しい単語や動作を覚えた後にぐっすり眠ると記憶をよりしっかりと保つことができる(記憶固定)ことがヒトや動物のを対象にした数多くの研究で明らかにされています。

睡眠不足は単に日中の眠気や集中力低下をもたらす結果として学習効率を低下させるだけでなく、記憶を固定するために必要な脳内の神経活動を妨害することが明らかになっています。

睡眠不足時にはせっかく新たに獲得した記憶を失ってしまう、もしくは記憶すること自体が難しくなるような印象ですが、必ずしもそうではないようです。

最近オランダのフローニンゲン大学の研究者は、睡眠不足の時には記憶を引き出す力が低下するが、必ずしも不可逆的ではなくある方法によって思い出せることを示しました。

動物が新たな記憶を獲得する際に海馬内で特定の神経活動が活発化し、神経細胞間の結合(シナプス結合)が増加する結果、記憶したエピソードや技能に連動して活動する神経細胞ネットワークが形成されます。

これらは「記憶エングラム」と呼ばれ、記憶を保持したり想起する際に再度活性化する必要があります。フローニンゲン大学の研究者は、マウスを飼育ケージから物体をいくつか置いたアリーナに移して自由に探索させました。

マウスは好奇心が強く熱心に物体を探索し、その位置を記憶します。数日後に物体のひとつを移動させて再度アリーナに入れたところ、記憶固定期に睡眠不足にさせられたマウスはすべての物体を均等に探索しました。

これは先に探索した物体の配置を記憶できていないことを意味します。ところが「光遺伝学」という手法を駆使して睡眠不足マウスの記憶エングラムを外部から活性化させると、睡眠不足の影響がみられず、新たに移動した物体を集中的に探索し始めました。

こういった記憶エングラムを刺激する方法として、日本では未承認ですが海外では喘息などの治療薬として承認されているロフルミラストという薬物を投与すると、光による記憶エングラムの活性化と同様の効果が得られることが分かりました。

これを試験前に服用するにはまだ長い臨床試験がありますし、人で成功するかも不明です。こういった薬剤での活性化よりは、単に良く寝ても同じような活性化ができるというのが簡単な方法といえるようです。

30年以上放置されてきた「少子化問題」の本質 その2

2023-03-15 10:32:28 | 時事
前回「少子化問題」は30年以上放置されてきたことを書きました。

出生数が80万人を割り込んでおり、このまま人口減少が続けば1億人を切ってしまうのはそれほど先ではないという予測もされています。

岸田首相も「異次元の少子化対策」と騒いでいますが、このトレンドを反転させることは極めて難しいといえそうです。これまでの出生数減少で、出産可能な年齢の女性人口が今後どんどん減少していくためです。

厚生労働省の人口動態統計によれば、2021年に出産した女性の9割近くが25〜39歳となっていますが、この女性人口と25年後にこの年齢に達する0〜14歳の女性人口を比較すると約25%も少なくなっています。

わずか25年でここまで「少母化」が進んだのでは、何らかの対策が講じられて仮に出生率が上昇したとしても、出生数は減り続けてしまいます。少子化の理由をめぐっては専門家などがさまざまな分析を加えていますが、この「少母化」こそが本当の原因ではないでしょうか。

これは政策によって解決できる問題ではありません。さらにある専門家によれば、日本社会は「低出生率の罠」にかかっているとしています。

合計特殊出生率の低迷が長期化して出生数が激減していくと、当然社会は子供が少ないことを前提として形作られて行きます。こうなると子供を持つ人の経済的コストは増加し、いつしか子供を持つこと自体が負担となり、「損なこと」と受け止める価値観が定着し始めます。

こうして人々が子供を持とうとする意欲を失っていきます。こうした一連の状況をさして「低出生率の罠」と呼ぶようです。これは簡単にいえば子供向け産業の需要の減少です。

出産費用や教育機関の授業料の値上げが続いているのも、「低出生率の罠」の影響といえるのかもしれません。ただこの辺りは政策によって改善することは可能な分野であり、何らかの対策を期待するところでもあります。

少母化対策としては、近年下がり続けている結婚率を上げる工夫が必要ではないでしょうか。数字は出しませんが私のような団塊の世代がほぼ100%の結婚率に対して、現在は大幅に減少しています。

当時活躍した「お見合いおばさん」の減少が婚姻率を下げ生涯未婚の人たちが増えている原因とする説もあります。もちろん子供支援を拡充することによって、育てやすい環境を作ることは必要ですが、結婚する人の数を増やすことの取り組みがまず必要な気がします。

少子化問題を長年先送りしたことによる「少母化」は避けられませんが、せめて現在の若者の多くが結婚したくなるような環境づくりが必要なのではないでしょうか。

既に「危険水準」にある今の日本にとっては、出生数の減少スピードを幾分なりとも遅くするだけでも意味がありそうです。

進化し続ける喘息治療「自己注射療法」

2023-03-14 14:08:55 | 健康・医療
私の母は喘息に悩まされており、発作が出そうになるとステロイドを飲んで対処していました。

80歳を過ぎ認知症の症状が出始め自分で対応できるかを気にしていましたが、この頃から喘息がすっかり治まってしまいました。この辺りはヒトの身体の良い仕組みなのかもしれません。

私も10年ほど前ひどい咳に悩まされ、呼吸器科で喘息という診断を受け吸入薬を処方されましたが、その後すっかり治まりもう気にする必要は無くなったと感じています。

喘息は日本人の5〜10%が持っているありふれた病気で、慢性的に咳が続いたりひどい発作が出ることもあります。喘息治療は急速に進歩しており、最近は自宅で「自己注射」の治療を受ける患者も増えてきたようです。

喘息は何らかの刺激によって一時的に気管支が狭くなり、咳が出る病気です。悪化と改善を繰り返すことで、健康な気管支と比べて喘息の気管支は細くなっています。ほとんどの喘息はアレルギーによるものですが、気管支が過敏な人は軽く運動しただけでも咳が出ることがあります。

あまりにも狭くなると、増悪(発作)と呼ばれる状態になり、夜も眠れないほどぜえぜえ、ヒューヒューと呼吸がつらくなってしまいます。喘息と似た症状で、寒暖差で起こる乾いた咳では、咳喘息の可能性もあります。

喘息は吸入薬を使ってコントロールしますが、炎症を抑えるステロイドを吸入して、狭くなった気管支を穏やかな状態に保つ効果があります。国内で吸入薬が使われ始めたのは1970年代で、2000年以降たくさんの吸入薬が発売されました。

吸入薬が普及するまで喘息の死者数はかなり多かったのですが、最近は亡くなる患者は減り吸入薬は喘息の歴史を劇的に変えています。しかし重症のアレルギーを持っている人や、長い間喘息を患っている人は、喘息のコントロールができないことがあります。

そこで登場したのが、身体の喘息の反応を抑えるモノクローナル抗体と呼ばれる注射薬です。アレルギーに関与する物質をブロックする抗体を定期的に体内に注射することで、喘息を改善することができます。

コロナ禍において人前で咳をすると白い目を向けられ、つらい思いをした喘息患者は多いのですが、注射薬によって復職できたという患者もいるようです。2〜4週ごとの自己注射なので、定期的に自宅で注射すればよいというのがメリットとなっています。

この注射薬は主に重症の患者に使用されますが、吸入薬が喘息の歴史を変えたように、注射薬もまた歴史を変える薬といえるようです。

ただし注射薬は抗体ですのでどうしても薬価が高くなり、高額医療制度を適用する必要が多くなるのが問題かもしれません。

ずいぶん久しぶりの定例麻雀

2023-03-13 10:35:22 | ギャンブル
先日久しぶりの定例麻雀を行いました。

実は1月度の麻雀の3日前、STさんが急に体調が悪くなり、近所の総合病院に行ったところ「肝膿瘍」と診断され緊急入院となりました。この病気は初めて聞きましたが、感染症の1種で血液に入った病原菌が肝臓で繁殖してしまう病気でした。

すぐに私のところにSNSで連絡があり、当然麻雀は中止となりました。まだコロナ禍の時期でしたので見舞いにも行けずSNSで簡単な連絡を取るだけでしたが、当初は2週間程度の入院とのことでした。

ところが8日ほど経ってから、炎症が治まらず肝臓から膿を取る手術をすることなりました。結局入院期間が延びてしまいましたが、2月初めに3週間ほどで退院することができました。

この入院期間はほぼ寝たきり状態が続いたようで、体力の回復には時間がかかりそうですので、2月度の麻雀も中止としました。STさんが復帰できるかを気にしていたのですが、2月末に無事回復したので3月度は是非やりましょうとの連絡があり、開催の運びとなりました。

全員集まったところ、STさんもビールやタバコが復活していましたので一安心でした。さて久しぶりの麻雀は私の親で始まりましたが、安い手ですがすんなりあがれ3連荘となりこの調子ならばと喜んでいました。

次の親のSKさんが早めのリーチをかけて来たので勝負は避けていましたが、全く警戒しないで自摸切りした2枚目の南が当たってしまいました。これがチイトイドラ2の親満で、大きく沈んでしまいました。

これで私は不調となりましたが、その後よくなったのがH君で親満を自模ったりと絶好調でした。この半荘は毎回親が連荘するなどなかなか進まず、2時間近くかかりH君がトップで私はドベというスタートとなりました。

面白かったのはSTさんが親の時、2巡目に4ピンでリーチがかかりました。この時私はひどい手で1ピンも対子でしたので、苦労せず降りていましたが何とこのまま流れてしまいました。2巡リーチで流局というのも珍しいような気もします。

また中盤にH君のリーチにSTさんが追いかけたのですが、この時開くのが分からないといって全部の牌を見せてくれました。その手は中が頭のホンイツで、変則の4面待ちとなっていました。

これは跳満だと思っていましたが、やはりH君がついておりSTさんの振り込みで終わりました。私は比較的良い手が来ていたのですが、最高手になりそうな純チャン・ダブルイーペイコウの7竹待ちも上がれませんでした。

今回は全体的に流れが悪く、STさんの体調も考慮して半荘4回で終わりにしましたが、H君が3回トップの一人勝ちで私は結局4,3,2,2となんとか2位で終わりました。

久しぶりの麻雀でやや疲れましたが、十分満喫できました。

小惑星リュウグウ試料から有機分子2万種を発見

2023-03-12 10:36:54 | 化学
私は基本的に宇宙にほとんど興味はなく、宇宙開発というのは莫大なコストがかかるだけで、あまり意味が無いものと感じています。

ただ今回の小惑星リュウグウの試料の分析などは、生命誕生の謎を解く手がかりがある可能性から、若干興味を持っていました。生命誕生には宇宙飛来説などもあり、私は地球発生説を推していますがその辺りの解明も面白いような気がしています。

探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った砂状資料を分析している宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究チームは、試料から約2万種もの有機分子が見つかったと発表しました。

地球生命の源となる物質は宇宙から飛来したとする仮説を、補強する材料になりそうです。見つかった有機分子は、炭素を骨格として水素や窒素、酸素、硫黄などが多様に組み合わさっています。生物の体に必須のアミノ酸のほか、カルボン酸や炭化水素などが含まれていたようです。

私は生命の起源とは別に、有機化学者としてこの原始の惑星ではどんな化学反応が起きていたかには興味があるのですが、残念ながらすべての化合物の構造を調べるほどの量はなく、未知の化合物を同定することはできそうにないでしょう。

アミノ酸にはヒトの左手と右手と同様に、互いに鏡に映したような関係である左手型と右手型があり、地球の生命を構成しているのは左手型です。

リュウグウ試料のアミノ酸の多くは左手型と右手型の比率がほぼ1:1で存在しており、アミノ酸が地球で混ざったのではなく、宇宙空間で合成されたことの証拠になるとしています。これは当然ですが、私はこんな微量の試料の光学純度まで測定できる分析技術の進歩に驚いています。

また別の分析で、試料が大量に含む黒色の個体有機物を調べたところ、複数の炭素などが無秩序に結合した高分子構造であることが判明しています。

最古の太陽系物質である炭素質隕石に含まれる有機物の構造とよく似ており、炭素質隕石のもとはリュウグウのような炭素質小惑星であるとする説を初めて直接的に証明しました。

これらから生命の材料となり得る物質が存在するリュウグウのような炭素質小惑星の一部が、何らかの理由で隕石になるなどして地球に飛来し、生命の源をもたらしたとする仮説の補強が一歩進んだとしています。

私はこの結果は、単に地球を含む太陽系はどこでも有機化学反応が進む環境であったことの証拠にすぎず、宇宙発生説を進める材料ではないと感じています。

生命が発生するためには大量の有機物の存在が不可欠で、隕石に付着する程度ではとても高濃度にはなり得ず、やはり地球発生説ではないかと考えています。

それでも他の惑星にどんな有機物が存在するかは、興味あるテーマといえるのかもしれません。