「時間がとれたら、日帰り旅行に連れて行ってくれんかい?」
80歳を回った父からそんなことを言われた。
三崎高校を卒業して、戦死した父親に代わり一家を支えてきた。
働いて、働いて。雨の日も休みなく働いて。
そんな家に嫁に来た母。山仕事なんてしたことはなかった。
それからというもの、父とともに働いて、働いて。
働くことは、生きることだと見て育った。
旅行なんて、夢のまた夢。
家族を持ち、親孝行のつもりで旅行に誘った。
中でも出雲大社への旅は、思い出深い。
子どもたちが成人してからは、みんなそろっての旅行はなくなったが、日帰り旅行に行っている。
コロナ禍、昨年は宇和のカフェ苔筵(こけむしろ)、小田、砥部、そして孫娘が通う大学へ。
今年も娘を誘ったら、一緒に行くことになった。
今年の行先は、しまなみ海道。
昼前、今治で昼食。B級グルメで有名になった焼き豚たまご丼の老舗に入った。
「うまい、うまい。」
そう言いながら、かなりの量を食べきった。
続いて、しまなみ海道がよく見える、大島の亀老山展望台へ。
「これは、きれいじゃのー」
と、大満足の声。
そして、思い出の大三島大山祇神社へ。
ここは、20年以上前、祖母も一緒に来た場所。
両親ともに、昨日のようによく覚えていた。
時間だけが流れた感じがする。
あのときは、まだ生まれていなかった娘が「じいちゃん、ばあちゃん」と言って、世話をしてくれた。
最後に予定外で回ったのが、伊東豊雄建築ミュージアム。
島の風景にコントラストをあたえている。
大三島の新たな動きであり、風景だ。
帰り道、大島大橋で夕日を見た。
これもまた忘れられない景色となった。
こんな旅もあと何度行けるか分からない。
数年後、今回の旅が思い出深いものになっているのは、まちがいないだろう。
岬人(はなんちゅう)
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