境目の城~長比(たけくらべ)城
戦国時代の近江では江北を支配する京極氏・浅井氏と、江南を支配する六角氏が勢力争いを繰り広げており、現米原市域は両者の勢力圏の境界に位置していました。またその東側は美濃と国境を接しており、領国の境界でもありました。こうした境界警備を目的として築かれた城を「境目の城(さかいめのしろ)」と呼んでいます。米原市長久寺の長比城はそうした境目の城のひとつで、元亀元年(1570)、浅井長政が織田信長に敵対し、近江と美濃との国境付近に築いた城です。標高400mの野瀬山の山頂部にあり、土塁(どるい)や食い違い虎口(くいちがいこぐち)などの遺構を見ることができます。
今回の講座では、濃尾国境に位置する長比城跡を、文化財専門職員の案内で御覧いただきます。
日時 平成27年11月15日(日) 10:20~16:30
場所 講義:米原市柏原生涯学習センター(米原市柏原)講義・昼食
講師 講題「戦国期の近江と美濃」 松下浩氏(滋賀県教育委員会文化財保護課)
現地見学:柏原宿歴史館・旧中山道柏原宿・長比城跡(米原市柏原・長久寺)・成菩提院
現地探訪ガイド 桂田峰男氏(米原市柏原宿歴史館館長)
行程・柏原宿歴史館(自由見学)→柏原宿本陣跡→八幡神社→長比城跡(※急峻な山登り)→成菩提院→JR柏原駅 全行程約4km
柏原宿歴史館の近くに(箕浦館)
柏原宿本陣跡
八幡神社
長比城跡(※急峻な山登り)→
お城の概要
長比城は、江濃国境(近江と美濃の国境)近くの中山道(現国道8号線)沿いにある標高(約390m)の山の山頂付近に築かれた山城である。
長久寺の神明神社鳥居をくぐり、神明神社と秋葉神社方面への分かれ道を秋葉神社側にに登る。神明神社方面から登ると、道なき急斜面を登ることになる。
秋葉神社の北からは、5m程で左へ尾根道をのなるが、神社の横を30~40分ほども登ると虎口を設けた曲輪に出る。
曲輪は東西30m、南北20mほどで周囲を高さ1.5m~2mほどの分厚い土塁を廻らせ、東側に虎口を配し、食違い虎口としているのが印象的だ。
食違い虎口を抜け、更に登ると山頂の主曲輪に出る。周囲は土塁で固められているが、南側、および北側の土塁は低くあまり明瞭ではない。
主曲輪の南側は山の斜度がきついために防御する必要性がなかったのか。北側の食違い虎口を抜けると北に延びる尾根へと続く。
歴 史
長比城は須川山砦,大峰砦,干畳敷遺構(別名を田中の城)等と共に中山道沿いにあって、浅井氏の江濃国境(近江と美濃の国境)の防塞ラインの重要拠点として補強改築砦城である。
元亀元年(1570)4月、織田信長は越前・朝倉氏攻めの軍を起こすと、近江路を経て若狭・国吉城に逗留した後、越前に攻め込んだ。
織田軍は4月25日には疋壇城、手筒山城(天筒山城)を落とし、手筒山城とは峰続きの金ヶ崎城を攻める織田信長に「浅井長政離反」の報せがもたらされた。
信長は朽木谷の朽木元綱の協力を得て、越前敦賀から朽木を越えて(朽木越え)、京へ逃げ延びた。これが世にいわれる「金ヶ崎の退き口」である。
しかし、守将の堀秀村・樋口直房が信長の調略に乗り、戦うことなく呆気なく開城してしまった。
美濃へ帰国して軍を立て直す信長に対し、浅井長政は江濃国境を固めるために中山道を押さえる長比城、および北国脇往還道を押さえる刈安尾城と上平寺城を改修した。
この時のことが、信長公記に
・・・たけくらべ・かりやす取出の事・・・・
さる程に、浅井備前、越前衆を呼び越し、たけくらべ・かりやす、両所に要害を構へ侯。信長公御調略を以つて、堀・樋口御忠節仕るべき旨御請なり。
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「たけくらべ」は長比城のことであり、「かりやす」とは刈安尾城、および上平寺城のことである。また、堀とは門根城城主で浅井氏の重臣・堀次郎のこと、また樋口とは堀氏の家老・樋口三郎兵衛直房のことである。
嶋記録には姉川の戦いの中で、「さるほどに元亀元年春の頃、織田信長、浅井下野守久政、同備前守長政がことにおよびしかば、小谷(小谷城)より箕口おさえとして、野瀬、堀次郎、同家の子樋口三郎兵衛之丞を入れおきけるが、その頃堀若年なりしが、三郎兵衛の所存にて、たちまち心変わりし野瀬の要害へ信長勢を引き入れ、おのが居城鎌の刃(鎌刃城)へ引きしりぞきしかば、刈安をはじめ近辺の城々ことごとく、あけしりぞけり、されば、今井小坊師丸母は堀次郎が伯母なり云々」とある。
なお、嶋記録に記述されている「箕口」とは美濃口、つまり関ヶ原に通じる今須口のことである。
成菩提院へ
皇帝ダリア満開
2015.11.15 (日)連続講座「近江の城郭」【境目の城~長比(たけくら)城】「戦国の近江」
主催:滋賀県教育委員会 協力:米原市教育委員会
参加者:60名(事前申込制) 参加費 無料
〒521-1311 滋賀県近江八幡市安土町下豊浦6678 城郭調査事務所
TEL0748-46-6144 FAX0748-46-6145 E-mail ma16@pref.shiga.lg.jp
参考資料:『滋賀県中世城郭分布調査』・『日本城郭大系』・『信長公記』
本日も訪問、ありがとうございました!!感謝!!