今野英山
現代短歌新聞 2015年2月号 力詠13首(受難の果物)
・植物をゑがきし画家はこの島に果物時計草(パッションフルーツ)の圃場拓けり
・パッションとは情熱なりやキリストの荊冠なりやこの酸い味は
・請はれ来し沖縄の地に軋みつつ日々を過ぎゆく吾のパッション
・颱風の来襲さらにはミバエの被害君の語りし受難の果物(パッションフルーツ)
・台湾より紛ひの果汁出まはりて築きし信用たちまち落ちき
・TPP通らばふたたび海外の粗悪な果汁に潰えむ悪夢
・座して待つより打つて出よミンダナオ島に畑と工場つくりし君は
・観光の農園ではなくサイエンスガーデンと言ひつつ君は何を企む
・熱帯の花咲き果物たわわなりアンリ・ルソーの「夢」は続きて
・睡蓮の点描のごとき彩りにモネの絵重ねし君かと思ふ
・とりどりの花にくつろぐ君のカフェ ボタニカルアートは蝶々の視点
・潮入りのわづかな違ひにせめぎあふメヒルギ オヒルギ ヤエヤマヒルギ
・平和ぼけもよいではないか浅葱色の珊瑚の海こそ必死に守れ
開催日 平成27年4月12日(日)午後1時~4時30分
会 場 我孫子駅前 けやきプラザ8階和室
講 師 「新アララギ」選者 雁部 貞夫先生
内 容 短歌作品の批評、添削指導
会 費 1500円/月
4月2日(木)必着で歌稿(短歌3首)を提出してください。
☆見学もできます。(見学の場合は1000円/回) 事前に短歌3首を提出すれば批評・指導が受けられます。
☆雁部先生は全国で屈指の短歌結社「新アララギ」の編集委員・選者です。登山家としても知られています。
歌集「ゼウスの左足」で島木赤彦文学賞を受賞しました。
☆参加を希望される方は下記にメールしてください。
yohkuraq@gmail.com 手賀沼アララギ短歌会
新アララギ 2015年2月号より
・山も歌もこの兄ありて吾のありベッドに小さく眠りたまへり
・手を握れば「痛え」と一言声をあぐ生きる証と我は聞きたり
・この富山に母逝き弟を失ひき今また兄の命細りて
・兄のため延命水といふを汲む遥か立山よりの伏流水か
・尺余の雪踏み分け甲斐黒岳に兄と立ちき富士の輝き背向ひにしつつ
・業界の親善野球盛んなりき広岡ばりのノンステップスローを真似ゐし兄よ
新アララギ 2015年2月号より
・この世にてめでし物を彫りたるか徳利バイオリンそして原稿用紙 多磨墓地
・帰り道に近きが故に寄るならず今日も賀川豊彦の墓に詣で来ぬ
・水の面(も)に靄のたちつつ神田川と善福寺川と合流しゐる
・「七変化」と呼ばるるランタナベランダに今し七色目の紫となりぬ
・本門寺の消防団の法被着て隣室の若主人出でて行きたり
・霜とけし土に早くも出でゐるは福寿草の蕾ならむか
三谷和夫:いく人の登りたりけむ登山路に踏む石の面(つら)黒く光れる(新アララギ2015.2)
佐々木フミ子:立秋の今朝晴れ渡る空に透き皇帝ダリアの大き花咲く(新アララギ2015.2)
木村和子:市民らが行き交ふ道の「ギャラリーロード」に高ぶり掲ぐ我ら十八名の歌(新アララギ2015.2)
千葉照子:片貝の浜辺に足を沈めつつ初日出づるを君と待ちたり(歌会2015.2)
須田博:国破れ山河残りて七十年戦後なる語の消ゆるは何時か(歌会2015.2)
今野英山:片降り(かたぶい)の激しく降りつつ夏日照る今にこだはることなどやめよう(新アララギ2015.2)
高橋毬枝:日溜まりの窓辺に白百合一輪を挿して逝きにきわが弟の(新アララギ2015.2)
小熊宗克:ありがたや朴(ほう)の落葉のじゅうたんを踏んで薬師の鈴鳴らしけり(歌会2015.2)
山崎日出男:冬の日に春想はせる光浴びつややかな花蝋梅の花(歌会2015.2)
麦島和子:*庭隅の餌を啄む雀らを傍らにそっとコガラ見ており(新アララギ2015.2)
岸野トモヱ:*日比谷から麻布を抜けて神宮へ一人歩みしかの日なつかし(歌会2015.2)
大倉康幸:*スパゲティー食べているとき思い出すボローニャでの気さくな雰囲気(新アララギ2015.2)
小那覇暁美:*サイドミラー必要なしとガイドは言う前進あるのみハノイのバイク(歌会2015.1)
前澤重成:大晦日術後の我は第九聴く生きる力をかき立てながら(12月31日)(歌会2015.2)
相川盈子:*弟妹も夫も息子も見送りて母は逝きたり野分の夜に(新アララギ2015.2)
宮本通代:晩秋の山に分け入り出会ひしは唐橘の澄める赤き実(新アララギ2015.2)
羽渕順子:一本の冬木が作るその影は我を消すには少し足りなく(歌会2015.2)