今野英山
現代短歌 2015年7月号 作品7首(闘山羊)
・味深き山羊汁の香(か)ただよひて奥山里の春はたけなは
・山羊汁の青き匂と覚えつつ四十年はまたたく間(あひだ)
・軟骨は前脚それとも後脚年齢などはと思ひて食らふ
・立ちあがり角ふりおろす山羊二頭ここには雄のかなしき本性
・幼子に角触れさせし若山羊も血だらけとなりて角ぶつけあふ
・公民館を見守り立てる「羊魂碑」勇気と感謝と懺悔の筆跡
・闘山羊の籤一等賞は若き山羊辞することな女(をみな)ひきゆく
去る5月21日(木)に吟行会(兼懇親会)を開催しました。
訪問先は流山市本町の『流山江戸回廊を歩く』
案内は「NPO法人流山史跡ガイドの会」幹事の<岡 敏幸>さんがボランテア・ガイドを引き受けてくださいました。
参加者は三谷会長、雁部先生ご夫妻を含めて13名。AM;10:00 JR馬橋駅集合。流山電鉄に乗り換え8分で「平和台」下車。
ガイドの岡さんの案内で次の史跡を散策しました。
「流山糧秣廠跡」→「光明院」(新撰組分宿の真言宗院)→「赤城神社」(流山地名伝説発祥の地・大しめ縄あり)→「一茶双樹記念館」(みりん醸造で財をなした<秋元本家>跡)→「見世蔵」(明治22年に建築の<寺田園茶輔>が万華鏡ギャラリーに。建物は国の有形文化財に指定。)→閻魔堂(義賊市之丞と三千歳の墓)→「近藤勇陣屋跡」(慶應4年に新撰組が本陣とした醸造家の跡地)→「浅間神社」(新政府軍が仮本陣を敷く。富士塚あり)→江戸川堤を散策→
「割烹 柳家」にて昼食の後、14:30自由解散。
当日は晴天に恵まれ皐月の薫風に吹かれながら、江戸川に位置するまち流山の江戸回廊を散策、参加者同志の懇親を深め、楽しいひと時を過ごしました。
(文責 山崎)
新アララギ 2015年5月号より
・一字欠けし左千夫の墓に額づきぬ文明先生と来し日思ひて 亀戸・普門院にて
・これがかの梓の木なりと示されき五十年へて繁りにしげる
・その時の若者五人みな病めり一病息災いのちつながむ
・本堂を閉ざし立木は伸び放題この寺アパシーの気配濃厚
・普門院に有る筈といふ左千夫歌碑訪ねたづねてつひにまみえず
・「和尚さんは話出したら止めぬ人」荒れし寺には触れず鰻屋の親父
新アララギ 2015年5月号より
・五年以上になつてゐたのか月一度歌語らひに通ひし甲府
・ここに見ゆる四方の山の大方は曽てこの脚にて登りたりしなり
・われよりも年輩の人もをるならむ休み休み階段を登り来る見れば
・たちまちに過ぎてしまひし五年一箇月四季の盆地の移ろひ見つつ
・短歌を語り合ふ時誰も皆一つ心となりてゐたりき
・「ニュー北京」の半面焼きを食ふことも楽しみの一つといつかなりゐき
三谷和夫:土の山に上れば低き街並見ゆ戦国の城といふを諾ふ 我孫子城跡(新アララギ2015.5)
佐々木フミ子:「新アララギ」見守りてゐむ志摩みどりさん逝きまして十月(とつき)月々のみ歌(新アララギ2015.5)
木村和子:漢方医は「遠いところから」と労ひて受診の訳から聞きはじめたり(新アララギ2015.5)
須田博:サイパンに玉砕したる叔父の墓遺骨無きまま七十年経ぬ(歌会2015.5)
今野英山:墓と家と似通ひ入りくむ丘の上来む世と現のあまりに近く(新アララギ2015.5)
高橋毬枝:アラビアは童話の世界と親しみしに今無秩序の国際宗派テロの紛争(新アララギ2015.5)
小熊宗克:八十路過ぎ人の名忘れ字を忘る自嘲しつつもかにかく生きる(歌会2015.5)
山崎日出男:息つめて鋭きサーブへ構え待つ握るラケットに蜻蛉寄り来る(歌会2015.5)
麦島和子:*真っ青な空を映しし手賀沼の水面に浮かぶ数羽の白鳥(新アララギ2015.5)
岸野トモヱ:*新鮮な香りそのまま洗わずに筍の皮ひたすらに剥く(歌会2015.5)
大倉康幸:*人がいる方がなにやら落ち着かぬいつもは人が通らぬ夜道(新アララギ2015.5)
小那覇暁美:*そのままの流れに乗ればよいものを鯉は激しく尾びれ振りたり(歌会2015.5)
前澤重成:濃く赤き海棠の花は晶子(あきこ)なり桜散る様(さま)登美子に似たり(歌会2015.5)
相川盈子:*菜園のレタスにつきしアブラムシ桶に振るなりああ無農薬(新アララギ2015.5)
宮本通代:首筋にすつくと伸びし白き線遠くを見やる尾長鴨二羽(新アララギ2015.5)
手賀沼湖畔文学の広場にある「文学掲示板」、2015年6月は手賀沼アララギ短歌会の歌が6首掲載されます。
・水張田映りていたる昼の月さざなみ立ちて消えてゆきたり(我孫子 山崎日出男)
・朝光にきらめく若葉の下の道ペダル踏みゆく我が足軽し(柏 麦島和子)
・藪歩き草をかき分け飛び退る足元に一つまむし草咲く(柏 前澤重成)
・携帯には長い人生詰ってる桜も咲きて孫も生まれて(我孫子 羽渕順子)
・朝早く空に伸びゆく飛行機雲真白き富士の高嶺に向かう(印西 小那覇暁美)
・間から競うごとくに顔を出すつつじの花は離れて見たし(柏 大倉康幸)