三谷和夫:また今年も生まれ日を過ぎ筑波山に登らむと出づ九十一歳(新アララギ2020.2)
佐々木フミ子:青空に黄の色きはまる大銀杏風吹くときに光を降らす(新アララギ2020.2)
千葉照子:「打たずにゐる間に棋が上がる」とは小説及び絵画の構想もまた(歌会2020.2)
今野英山:高山に婆娑羅の精神残るらしかく言ふ友はバサラの女(をみな)(新アララギ2020.2)
高橋毬枝:後先に付きて気遣ふ子と孫とくねる木組みの坂道を行く(新アララギ2020.2)
麦島和子:*「お味は如何?」「おいしいです」と料理する傍えの幼は味見も共に(新アララギ2020.2)
岸野トモヱ:*仏事とは疎なる縁の集いにて繋がりあるを確かめ合うか(歌会2020.2)
大倉康幸:*山に行く季節にはまだ早いけどはやくも恋しい我が高尾山(新アララギ2020.2)
相川盈子:*米作りの雀よけなり白き旗田んぼの周りにいくつもなびく バリ島の旅(新アララギ2020.2)
宮本通代:赤き炎は闇を照らしてより赤く己を包みて首里城は燃ゆ(新アララギ2020.2)
葛岡昭男:*自販機の前に暖かき空気あり夜明けの駅のそば屋も並ぶ(新アララギ2020.2)
丸山さち子:*はなまるを付けてその日を待ちわびる東京ドームの教皇のミサ(新アララギ2020.2)
戸田邦行:*宗教も慣いもすべて嫌いたる我の葬りは樹木葬とす(新アララギ2020.2)
鈴木英一:ゴンドラは舳先上がりて不安定少しの揺れにもドキリとするなり(歌会2020.2)
新アララギ 2020年2月号より
雁部貞夫
・夏来なば年々まとふ麻の襯衣父より享けて四十年か
・遺りゐし父の麻服今もあり遺産放棄のしるしなりけり
・京都「深草」枯木町とはどんな町僧坊町には歌の友住む
・「深草」に片仮名書きの町多しキトロにケナサ、ススハキもあり
・植物の片仮名書きに与し得ず白山一華白根葵を吾は愛する
・煙草より「莨」を好む吾この偏屈を許したまはね