「絽ちりめん」という夏の素材がある、いえあったと過去形になった
このパンデミックで製造中止になったと聞く
縮緬糸で絽目を作っている素材、普通の平絽よりちょっと重くドレープが多い
それがどうして湿気の多い5月の末からの生地なのだろうかと疑問を持っていたある日
今は亡くなった竺仙の先代の社長が
「絽ちりめんは、縮緬浴衣として素肌に着ていた女人が昔はいた」
と教えてくれた
「ほうー」
と思いすぐ実行、いやー気持ちがいい贅沢だし、極楽極楽
こういう贅沢でおしゃれな着物の着方があったのだ!
もちろん縮緬浴衣を着る女人は「堅気」の人ではない。「黒塀」に住んでる人だ
大店、政治経済界の大物の囲い者、場合によってはやんごとなき世界の人たちのーーーというのもあったらしい
一軒家を与えられ、身の回りの世話をする人、庭番などの使用人と暮らす。こんな優雅なことはない
身に着けた三味線や、琴、常磐津、などの師匠をして日銭を稼ぐ
お手当もあるが日銭もあるから結構裕福
黒塀に女人を囲っても本家は安泰
男も女も大人の生き方ができていたのだ
黒塀の女が湯上りに縮緬浴衣を素肌に着て旦那を待つ
日本画の世界だな
囲い者のおかげで
建築、建具、庭師、什器、衣服すべて美にあふれたものが作られていく
これもまた日本の文化だったとおもう
絽ちりめんの着物を表に着ている自分の野暮さ加減を笑う