希望を求めて-再生へこう考える 能力理解し補い合う
-教師に必要な能力について分析した「教師 力ピらミット」を考案されました。 「教師の仕事は10年前と比べて格段に難しく なったと感じたのが、きっかけです。行政と生徒・ 保護者からは水も漏らさぬ対応が求められ、仕 事は多様になっています。保護者対応でのトラブルは絶えず、マス コミなどの学校批判も続いています」「一方で、多くの教師は誠実に 仕事と向き合っていますが、いじめや学級崩壊などの問題が依然発 生しています。学校の外にいる人も教師自身も、教師に必要な能力 と実態を知ることが、問題解決の出発点になるのではないか。そう思 い、考えたのが『教師力ピラミット』でした」
教師の力を3分類
-ピラミットの特徴は。 「日ごろの仕事について、教師に求められている 力を分かりやすく、網羅しています。三角形の底 辺から頂点までを、能力習得の難しさで三段階 にランク分けしました。『モラル』と『生活力』が教師の土台となるの は、当然でしょう」 -二段目の指導力と事務力とは。 「『指導力』は、悪いことは悪いと生徒にしっかりと伝える『父性型』、 悩んでいる生徒を包み込む『母性型』、生徒と一緒に楽しむことがで きる『友人型』に分けられます。この型を時と場合によって使い分ける 能力が必要です。批判の多くも、この部分に集中している感じがしま す」「一方で、見落とされているのが『事務力』です。成績処理や進 路事務などには高い『緻密性』が求められ、新たな授業法を開発す る『研究力』も必要です。複雑な時間割作りや年間計画の策定など、 教育課程の編成にかかわる『教務力』も不可欠です」 「以前は指導力と事務力の割合が9対1でしたが、今は五分五分と いう感じでしょうか。事務に追われ、子供たちと向き合えないことに悩 む教師が多いという実態も、ここに要因があるのです」 -先見性、創造性とはどんな力でしょう。 「いじめや不登校などの問題が起れば、教師や学校は『予兆がとらえ られなかったのか』と責められます。行事などは生徒の多くが活躍する、 華のある運営が求められ、学校改革では、最新のデ-タを用いて学校 独自の特色も創造しなければなりません」
情報交換を蜜に
-求められる能力は、多種多様ですね。 「そこで私が強調したいのは、一人の人間がすべての能力を持つの は無理だということです。私は今、中学3年の学年主任と担任、運 動クラブの顧問をしています。指導力では『父性型』と『友人型』を使 い分けていますが、『母性型』は持っていないため、同じ学年の同僚 教師の力を借りています。また、主任として、若手の学級運営に対 する目配せを強く意識しています」 「3年前に勤務校に赴任して以降、学校・学年単位で教師が互いの 長所と短所を理解し、カバ-し合うことを念頭に置いてきました。保 護者会の機会を多く持つなど家庭と緊密に情報交換し、初期段階の 対応に腐心しました。これらの相乗効果で学校の運営は安定し、今 はクレ-ムを受けることがほとんどなくなりました」 「学級崩壊にしてもいじめにしても、対応が担任任せになったり、担 任自体が問題を抱え込むケ-スがいまだに多いように思います。 個々の力を向上させるのはもちろんですが、いかにチ-ム力を発揮 する環境を整えるか。その視点が、今後ますます重要になっていくと 思います」