思い込み

左半身に日差しを受け、右半身は冷たい風に晒され、乗り換え電車を待っている。このままだと体が反り返ってしまいそうで、振り返るそぶりをして回れ右をしたものの、なんとなく不自然で、長くは続かない。

ようやく電車が来て乗り込んだが、奥に座ろうと思っていたに何故か扉の脇の席を選んでしまった。開いた扉からは冷たい風が吹き込むし、背後には窓がないので、ポカポカも期待できない。

それでも席に着けたんだからいい。そう思えば、今日はいい日になりそうだと感じられる。そうしよう。

胸を張る

３月になった途端に寒さが戻ってきたように感じる。耐えられず、鞄にしまっていたマフラーを取り出し、首に巻き付けた。

二度寝から目覚めると、家を出ようと思っていた時間の少し前だった。食事抜きならギリギリ間に合うが、せめて規則正しく食事をとりたいという思いと、昨夜遅くに仕込んでおいた鍋を作っておかなければならなかった。今夜も遅くなることは確実だ。

幸い、小さいながら雛人形は週末に飾っておいた。ひなあられは鰹節を買ったときについでに買い求めておいた。女の子がいるわけではないが、まあ、季節の行事だから…

自分が何を祝うということもない。だが、消極的ではあるが、誰一人女性を不幸にしていないだろうことは、この日に胸を張れるだろうか。

俯きがちの人生は変えられない。だが、せめてほんの一時は背筋を伸ばさないと…と、通勤電車の中でダラッとした姿勢で考えている。