あしたはきっといい日

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心の傷を癒すということ

2021-02-13 15:02:28 | 映画を観る

祝日の夜、今年1作目の映画鑑賞に出かけた。

心の傷を癒すということ』、昨年1月にNHKで放映されたドラマが映画作品として再編集された。ドラマもほぼリアルタイムで視て、その時に「4話じゃ短いな」と、もっと長く安和隆医師と、彼を通じてモデルになった安克昌医師の生涯に触れたいと思った。そう、安先生を演じる柄本佑さんは、同じ時期に放映された『知らなくていいコト』で同性でもその色気に圧倒されるようなカメラマンを演じていて、その対比に彼の演技の幅を感じた。

在日韓国人として育った彼が、自らの存在について悩み、その後、医学の道を選ぶ。そこで出会った生涯の師の影響もあり、精神科医となることを決めた。その選択を批判する父親に対し自らの意志を伝える様子は、今思うと自分自身の気持ちを固める意味があったのだろうか。

後に家庭を築くことになる終子との出会いも、いくつかの偶然が重なったとはいえ、別れ際にかけた言葉の強さもまた、その出会いを必然にしようとする彼の強い意志によるものだったのだろう。ところで、終子を演じた尾野真千子さんは、これまでアクの強い役の印象が強かったけど、その包み込むような優しさを演じた彼女に対しても、今までとはまた違った魅力を感じたのを思い出した。

精神科医として患者さんと真摯に向き合う安先生の姿は穏やかで、この人なら心を預けてもいいかなと思えた。後でプログラムを読むと、柄本佑さんの役作りについての記述があり、その直向さによって最後まで彼が安先生を演じきれたのだと知り、

阪神・淡路大震災で被災しながらも、家族を、そして住む場所を奪われた人々に真摯に向き合う姿に、そして、自らの生に期限が切られてしまってからも、彼を頼りにする患者さんや家族に対し温かく接する姿に、彼の強さを感じた。

安克昌さんは、妻と幼い3人の子供を残し、39年の生涯を閉じた。お子さんの成長する姿を見届けたかっただろうし、また仕事もこれからというときだっただろう。僕も、生前に安先生の存在を知っていたらと思うとともに、そして彼の不在を余計に淋しく感じた。

昨年ドラマを視た時には今の状況が想像できなかったけれども、映画を観た今は、多くの人が不安に心を痛め、傷ついている。僕も今、これまで経験したことのない様々な状況に対し試行錯誤しながら向き合う中で、少なからず心に傷を負っているという、微かな自覚がある。こんな時に話を聞いてくれる誰かがいてくれたらと思うけど、ここ数年で仲間との繋がりも自ら断ち切ってしまっていた。

「誰も、ひとりぼっちにさせへん」という台詞を、映画を観終えた後に反芻してみた。母と暮らしているとはいえ、常に孤独を感じている僕だから、だからこそ、誰かの孤独に向き合えるということもあるのかなと。そういえば、ボランティア活動をしていた時に、初めて参加する人が輪に入り難そうな雰囲気を感じ、敢えてくだけて話しかけていた。それは、僕自身がそうされたかったからなのかもしれない。実際にそうされたら嬉しかったかどうかは疑問だけど、そう思ったのは間違いない。

今、誰かと繋がる機会も限られている中で孤独の中にいる人たちが、この作品に触れてほしいと願う。そして、誰もが誰かを頼ってもいい世の中に近づけられたらいいな。

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