『走ることについて語るときに僕の語ること』
村上 春樹
我が家には、村上春樹ファンと
(最近ほとんど走っていないけど、一応)マラソンランナーがいます。
で、この本の公告を新聞で見つけたとき、ちょっとした話題になりました。
私 「へ~、マラソンのこと書いてはるんや」
本の表紙にもなってるランナーの後ろ姿の写真を見て、
主人「この後ろ姿、本人?
これは、かなり走ってる人やで」
なんとなくジョギング程度のイメージしかもってなかった私は、
それを聞いてびっくり。
私 「うーん、違うかも・・・」(←かなり、いい加減)
その後この本を読んで、私がいかに村上春樹氏に対して、
一部間違ったイメージを持っていたかを知り、
軽いショックを受けたのでした。
この本は、彼自身前書きで書いているように、
彼が「走ること」を軸にして書かれたメモワールです。
それも、とても個人的な。
走ることは健康にいいよ、とか、
どうやったらフルマラソンを完走できるか、などといった
ハウツー本ではもちろんありません。
だから、マラソンランナーが読んでも、
共感できる部分もあるでしょうし、
いや違うと反発するところもあるでしょう。
(実際、主人がそうでした)
そして、マラソンどころか、
50メートル走っても息切れする私が読んで興味を感じたのは、
「彼の走ること」ではなく、
「彼の書くこと」に対する姿勢のようなもの
(あるいは彼がどんな生き方をし、作品に向かってきたか)でした。
そう、この本は「彼の走ること」を書きながら、
「彼の書くこと」についても書いてある
なかなか興味深い本だったわけです。
彼のエッセイ集を読むのはたぶん初めてなのですが、
それでもここまで自分自身のことを、
真正面から書いておられるのは意外でした。
村上春樹氏にとって、「書くこと」と「走ること」は
とても密接に繋がっています。
そのことを今回初めて知って、
彼の小説の文体というか、リズムのようなものが、
いつも一定であることにとても納得しました。
作品に対して一定の距離を保っているとでもいうのでしょうか。
すごく思い入れがあったり、
あるいは突然突き放したりする、というようなところがなく、
淡々と一定のリズムで描かれているような。
うまく説明できないんですけれど。
それが、
ああ、マラソンナンナーがキロ何分というように、
同じペースで走ることと同じなんだ、
と、私には思えて納得したのです。
それから彼の文章を読むと、なんとなくマラソンランナーの
「たっ、たっ、たっ・・・」と一定のリズムで走る
足音が聞こえるような気がしてなりません(笑)
書くということは、それだけ地道で、
持久力のいる行為なんですね。
そして、彼は「書くこと・走ること」に対して、
実に誠実で、律儀で、ストイックなんだなあ、と
つくづく思いました。
我が家のマラソンランナーである主人は、
結局まだこの本を手にしていませんが、
春樹ファンの長女は一段と彼に魅了されたようです。
彼の、けっしてかっこいいとは言えない部分も、
レースの惨憺たる結果も、誠実に書かれた文章も、
すべて含めて。
で、私はというと、
今また彼の本を読み始めています。
ずっと前に読んだはずの『ダンス・ダンス・ダンス』。
当時、他の作品に比べて印象が薄くて、
内容がほとんど記憶に残っていません
おかげで、新しい本読んでるみたいでなかなか新鮮(爆)
・・・いえ、そういうことではなくて。
彼の書くものに対して、
もう一度きちんと読んでみよう、という気になったのでした。
あー、この本!!
もう読まれたのですねー。私は未読なんです。
ブログで行ったり来たりしている友に、大の春樹ファンがいて、
その方がすでに読み終わり、その中味の濃さに、
読了後、しばしぼっーとしてしまい、他の本が読めなく
なったと聞いていました。
私も1か月くらい前に、買おう!と思っていたのですが
なんか機会を逃してしまい、お正月休み中は、春樹訳の
「誕生日の子どもたち」カポーティ を読んだりして
いました。買おうと思えばすぐに手に入るのに、
こうなると、なんで我慢しているの自分?っていう
なんか自虐的な感じになってます(笑)
PCの向こうの向こうの窓から、雪がちらついているのが見えます。
うう~、寒い!
冬場、このあたりのマラソンランナーは思うように走れないんですよね。
TVでマラソンや駅伝のレースを見て、自分も走ったような気になってるみたいです(笑)
ここまで自分のことを書かれるとは思っていなかったので、読んで正直びっくりしました。
年齢的にも「自分を振り返る」時期だったのかもしれません。
彼の書くこと、走ること(=彼の生き方)共にとても興味深く読みました。
彼の誠実さや律儀さがよく伝わったし。
春樹ファンならたまらないでしょうね(笑)
長女も「惚れ直した」みたいなこと言ってましたよ。
読んでから日にちが経ってしまい、一番印象に残ってたことしか書けませんでした。
rucaさん、ぜひ、じっくり味わってくださいね。