熊本熊的日常

日常生活についての雑記

モディリアーニとジャンヌ

2007年04月19日 | Weblog
モディリアーニの作品は占いの水晶玉のようだ。対象がなんであれ、見た目は同じような作品に見える。しかし、そこに描かれている人の表情は様々であり、同じモデルでも同じ表情の作品は無い。彼は対象となる人物の心のうちを描こうとしたという。水晶玉のなかに占う相手の未来を見出そうとする占い師のようではないか。もっと長く生きて活躍していれば、彼の作品はどのような変貌を遂げたのであろうか。

妻ジャンヌも画家である。尤も、まだ完成されたスタイルを確立するには至らず、その時々に影響を受けた画家のスタイルが反映されている。少なくとも夫よりは写実的な方向を指向していたように見える。

夫婦揃って同じ職業の場合、互いの対抗心から夫婦の関係に齟齬が生じることが多いという。モディリアーニの場合、ジャンヌが発展途上であったため、対抗心が生じる以前の段階で夫婦が終わってしまったと言えるかもしれない。あるいは互いに全く異質のスタイルで程良い刺激を与えあいながら生きていたかもしれない。

「モディリアーニと妻ジャンヌ展」は、どちらかというとジャンヌに焦点が当てられた展覧会に仕上げられている。ジャンヌの作品を通して、モディリアーニの作品や生涯を表現しようとする興味深い展覧会である。