熊本熊的日常

日常生活についての雑記

読書月記 2017年4月

2017年04月30日 | Weblog

井伏鱒二 『珍品堂主人』 中公文庫

会員制雑誌『青花』の秦秀雄特集を読んで、Amazonで購入。面白いとは思えなかった。物語のなかで語られている蘊蓄の類も感心するようなものはなかった。秦秀雄関連の書籍のなかに、本書で描かれているエピソードの元ネタだとか、登場人物の誰が実在の誰のことであるとか書いたものがけっこうあるが、だからどうだというのだろう。そういうことを除けても、後味の悪い小説だ。

 

廣野由美子 『批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義』 中公新書

仕事とは価値を生む行為だと思っている。「価値」は必ずしも金銭で表現するものではないのだが、それでも誰かを喜ばせたり安心させたりするものには違いない、と思っている。学者の仕事とはなんだろう?

この本を読んでそんなことを考えた。この本は今となってはいつ何を思って購入したのか全く記憶にない。たまたま未読本の山のなかにあって、通勤途上で読んだ。「フランケンシュタイン」があの怪物の名前だとずっと思っていたのだが、それが大きな間違いであることをこの本を読むことによって知った。ま、だからどうということはないのだが。

そういえば、昔『人体解剖入門』というような名前のDVDボックスを持っていた。オランダの大学での解剖講義を記録したものらしいのだが、1巻目の途中まで観たところで、ボックスごと売ってしまったか、誰かに譲ってしまった。自分には解剖は無理だと思った。

それでこの本だが、小説を書くことも批評することも自分には無理だと思った。

 

寺田吉孝 『音楽からインド社会を知る 弟子と調査者のはざま』 臨川書店

みんぱくのフィールドワーク選書もようやく後半に入った。ここまではどれもそれぞれに面白く全20巻まとめて買っておいてよかったと思っている。

それで本書だが、懐かしいなぁ、という感じ。初版発行が2016年2月29日だが記述の中心は筆者が1986年3月から18ヶ月にわたって行ったフィールドワークのことである。私は遊びでしかないが1985年2月から3月にかけてインドを旅行した。そのときのことはこのブログにも書いてあるが、通りすがりの旅人としてではあっても当時の自分にはかなり印象の強い土地であった。社会人になるに際しての不安やさまざま思いが吹っ切るきっかけを得た土地でもある。本書を読んでいて、その当時のことが思い起こされた。