万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

「政治主導法案」の問題点

2009年11月12日 17時33分59秒 | 日本政治
「政治主導法案」を通常国会に提出=戦略室、刷新会議を強化-官房長官(時事通信) - goo ニュース
 莫大な財政赤字を抱え、肥大化する予算に歯止めをかけるために、事業の見直しを行うことは、国民の多くが賛成しているはずです。しかしながら、民主党政権の手法が適切かどうかは、また別の問題のように思うのです。

(1)立法と執行の順序が逆
 議会制民主主義と法治行政の原則から考えますと、国会で法案が制定された後に、その制定された法律に基づいて執行が行われませんと、これらの原則からの重大な逸脱となります。戦略室も、刷新会議も、国会での与野党間の充分な議論を経て「政治主導法案」が可決されてから設置されるべきであり、現状では、法律の根拠なく作業が行われていることになります。

(2)国会での予算審議のオミット
 予算の提出権は内閣にありますが、事業仕分けとは、国家予算に関わることですので、国会の権限が強い分野でもあります。にもかかわらず、政府が、その選出母体である民主党の議員と任命された民間人だけで事業の要不要を決定するのは(国民新党の議員も参加するとのことですが・・・)、いささか乱暴です。事業の仕分け機関は、国会の内部に設置することもできるのですから、民主党の排他性が際立っているとも言えます。

(3)事業廃止の権限は?
 廃止が決定された事業もまた、法律に根拠があるはずです。事業を廃止する権限は、法律を制定した国家にあると考えられますので、行政刷新会議に事業廃止権限があるのか、この点も疑問なところです。

 予算の無駄の削減を大義名分に掲げながら、実のところ、国会の形骸化と民主党への権力集中が進められているように見え、日本国の国政の重大な変革が、議論もなく進行していることに危惧を抱かざるを得ません。無駄を減らすことには異論はありませんが、その手段を誤りますと、日本国の政治が政党独裁型に移行するステップになってしまうのではないでしょうか。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。

にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする