万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ギリシャ危機―税金逃れより怖い現実逃避

2012年05月31日 16時05分23秒 | ヨーロッパ
「ギリシャ人は税金逃れ」 IMFトップ発言“炎上”(産経新聞) - goo ニュース
 IMFのラガルド専務理事が”ギリシャ人は税金逃れ”と発言したことに対して、ギリシャ国内では激しい反発が起きたそうです。ラガルド氏も、”ギリシャには同情する”と鎮静化に努めていますが、ギリシャでは、脱税が財政危機の原因となっていることは、周知の事実です。

 この発言に憤慨した人々は、きちんと納税している人々であり、誠実に納税義務を果たしながら、脱税者呼ばわりされたのではたまらない、ということなのでしょう。しかしながら、富裕層や政府との間にコネのある一部の人々が、脱税の常習者となっていることは、ギリシャ人にとりましても、深刻な問題なはずです。むしろ、ラガルド氏の発言を追い風として、脱税の摘発や徴税制度の改革に取り組むほうが、ギリシャの財政危機の克服には役立つはずです。氏の発言に感情的に反発したのでは、脱税者を擁護し、税制改革を遅らせることにもなりかねないのです。あるいは、こうした点を考慮しますと、氏の発言に反発した人々は、本当は、税金逃れをしてきた人々なのかもしれませんが…。

 事実を指摘された場合には、怒るよりも冷静に素直に受け止め、是正と克服に向けて歩み出す方が、結果がよいことがあります。税金逃れにも問題はありますが、現実からの逃避は、さらに問題を悪化させるのではないかと思うのです。

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