万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

冷戦敗戦の歴史を消したい中国

2014年01月05日 15時15分08秒 | 国際政治
近隣国と関係改善を=中韓念頭に米国防長官(時事通信) - goo ニュース
 安倍首相の靖国神社参拝に対する批判から読み取れる中国の戦略は、日本国が軍国主義復活を目論んでいると宣伝する一方で、第二次世界大戦における連合国の枠組みを復活させることです。敗戦国である日本国は、”東京裁判史観”を受け入れ、連合国が造った戦後の国際秩序を守れ、と…。

 ところが中国は、第二次世界大戦の終結を待つまでもなく、冷戦という新たな陣営対立が発生した事実については、無視を決め込んでおります。第二次世界大戦の終結は、平和の到来を意味するものではなく、超大国を中心とした二極対立が戦後の国際政治の基本構図となるのです。冷戦という名の”戦争”に凡そ決着がつくのは、1989年の東欧革命に続くソ連邦の崩壊であり、この時、誰の目にも、西側陣営に対する東側陣営の敗北が明らかとなったのです。冷戦期にあっては、中ソ対立がありながらも、中国は、基本的には東側陣営の一員でした。そして、80年代後半に至り、社会・共産主義陣営の退潮が認識された頃から、中国は、自らの立ち位置の修正を開始し、”敗者側”から”勝者側”への巧妙な乗り換えを試みるのです(昨日指摘した改革開放路線への転換を含めて…)。日本国を、”連合国”共通の敵に仕立てる政策は、この乗り換え政策の一環と見なすこともできます。しかしながら、時系列的に見ますと、第二次世界大戦の延長線上に冷戦が存在してるのですから、通過点に過ぎない1945年の時点への回帰は、全く意味のないことです。しかも、中国の主張する戦後の国際秩序とは、国連憲章が掲げた主権平等と民族自決を原則とするものでもなく、枢軸国=日本国を”敵国”と見なす自由主義国と共産主義国の結託、即ち、米中G2構想でしかないのですから。

 第二次世界大戦では、自由主義国は、大戦の大義として自由と民主主義の擁護を掲げながら、ソ連邦というスターリンが君臨する一党独裁国家と手を組むという矛盾を抱えていました。中国が唱える”連合国”の枠組み自体が、人類の歴史において評価され得るものではないのです。中国こそ、自らの利己的ではた迷惑な”復古主義”が、国際社会の混乱要因となっており、かつ、国連憲章の精神にも反していることを認識すべきなのではないでしょうか。

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コメント (6)
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