万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

電力の商品市場化のリスク-気候・気象連動型に?

2014年01月19日 15時45分01秒 | 日本政治
電力を融通し合えば年1700億円節約 経産省試算(朝日新聞) - goo ニュース
 福島第一原発の事故以来の電力危機を発端として、電力自由化問題が議論されています。電力自由化とは、基本的には、発電事業者が自由に電力を売買できる状態を意味しています。事業者間の自由競争による価格低下も期待されていますが、本当に良いとこずくしなのでしょうか。

 先日は、新聞紙上においても、電力自由化を見越して、経産省は電力市場の先物取引を認める方針との記事が掲載されていました。電力価格の変動をヘッジするための仕組みとして説明されており、電力会社にとっては、電力買取に際してのリスク回避に役立つそうです。この想定では、電力会社は、電力の”卸事業者”となり、新規参入してきた発電事業者から電力を、商品取引市場を介して買い取る立場となります。その一方で、経産省は、電力の小売り自由化も目指していると報じられており、”産直方式”との整合性が不透明です(高値買取制度を実施している再生エネの扱いも不明…)。しかも、四季の移り変わりがある日本国では、電力使用量は、冬場と夏場にピークが集中し、気候・気象の影響から逃れることができません。穀物などの商品市場でも同様の傾向はありますが、電力市場の場合、価格の変動は需給バランスで決まりますので、事実上、日本国の電力は、気候・気象連動型となる恐れがあるのです。これでは先物によるリスク・ヘッジにも限界があり、電力消費量が高まる時期には、必ず電力価格が高騰する仕組みとなります。加えて電力市場に内外の投機マネーが流れ込みますと、事前に厳冬や極暑といった気象情報が伝わった途端に、まずは先物市場からバブルが発生する可能性もあります(自由競争は再生エネ分野に導入した方がまだまし…)。

 日本国は、エネルギー資源は輸入に頼っていることもあり(足元を見られてさらに投機マネーが世界中から集まる…)、事業者間の自由競争の効果は限定的でもあります。電力自由化が電力価格の低下を約束するとは思えず、むしろ、電力料金の高い国は、再生エネの普及のみならず、電力市場の価格高騰の影響を受けているのかもしれません。商品市場化には向かない商品もあるのですから(産業と生活の必需品であり、日本限定、かつ、備蓄が困難…)、”自由化”という名の電力の商品市場化には、慎重であるべきと思うのです。

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コメント (2)
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