万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ハルビン氏の靖国参拝批判-真珠湾攻撃と9.11テロは同列ではない

2014年01月14日 17時49分56秒 | 国際政治
靖国参拝はお粗末な大誤算(ニューズウィーク日本版) - goo ニュース
 安倍首相の靖国神社参拝については、アメリカ内部でも批判の声があり、米下院外交委員会の元首席補佐官デニス・ハルピンなどは、真珠湾攻撃を指揮した東条英機元首相を、9.11テロの首謀者であるウサマ・ビンラーディンに譬えて糾弾しているそうです。卑怯な奇襲攻撃によって米国本土に被害を与えたと…。

 アメリカの第二次世界大戦観からしますと、真珠湾攻撃の首謀者が祀られている神社に詣でることは許すまじき行為なのでしょうが、日本国の名誉のために弁明を試みるとしますと、9.11テロと真珠湾攻撃との間には、幾つかの点で明確な違いがあります。第一に、真珠湾攻撃は宣戦布告が遅れたために奇襲攻撃となりましたが、それ以前から日米交渉が続けられていました(1941年4月から11月)。アメリカ側も、戦争回避の条件を示すハル・ノートを提示しており(日本側は最後通牒と解釈…)、戦争は、いつ始まってもおかしくない状況にあったのです。しかも、ヨーロッパ戦は既に始まっており、日本国が1940年9月に日独伊三国同盟を締結している一方で、アメリカも1941年8月の大西洋憲章でイギリスとの連携を表明していました。第二に、9.11テロでは、世界貿易センタービルへの航空機の突撃とビル崩壊により民間人が無差別かつ大量に殺害されましたが、真珠湾攻撃の対象は軍事施設に限定されていました。この点、日本国は、あくまでも戦争法が許す範囲で行動しています。第三に、当時のハワイはアメリカの本土ではなく、自治領としての準州でした。また、第四の違いとしては、イスラム原理主義者が起こした9.11テロとは異なって、日本国の真珠湾攻撃は政治的な対立を理由とするものであり、狂信的な行動ではありません。真珠湾攻撃によって、アメリカでは、日本国に卑怯な国とする印象が染み付くことになりましたが、少なくとも、背後から襲うような不意打ちではなく、民間人を無差別に攻撃していない点において、真珠湾攻撃が9.11テロと同列に扱われることは、日本人にとりましては、大変不本意なことなのです。

 東条英機元首相は、敗軍の将ではありますが、民間人を無差別に殺害したテロリストではなかったはずです。日米同盟の重要性を考えるならば、ハルビン氏にも、そしてニューズウィーク誌にも、ステレオ・タイプの史観や先入観を排して、史実としての歴史を検証していただきたいと思うのです。

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コメント (6)
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