万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

都知事選の原発一点争点化は混乱への道

2014年01月16日 15時17分42秒 | 日本政治
都知事選 細川元首相、出馬会見また延期「公約などの準備整っていない」(産経新聞) - goo ニュース
 小泉氏の応援の下で細川護熙元首相が都知事選に立候補することになりましたが、細川陣営は、原発の是非を選挙の争点に設置する方針を示しています。しかしながら、既に各方面からの指摘があるように、都知事選は、原発を問う場としては相応しくないと思うのです。

 第1に、東京都には、エネルギー政策として電源比率を決定する権限はありません。東京都は、原発が立地されている”地元”でもなく、国家の管轄事項を地方自治体の長の選挙の争点とすること自体が、”ちぐはぐ”なことなのです。第2に、仮に、国家と国民に関わる重大な決定を、生活者、あるいは、電力消費者としての東京都民だけで決めるとなりますと、産業界や他の道府県の住民など、その他の人々の意見や利益を無視することにもなります(他の利害関係者の不満や反発が高まる…)。経産省もまた、原発維持を明記したエネルギー基本計画の決定時期について、都知事選の結果を考慮して遅らせる方針とのことですが、都知事選が一部の意見・利益表明に過ぎないことを考慮しますと、経産省の判断にも疑問符が付きます。第3に、都民は、原発よりも首都直下型地震や東京オリンピックへの対応など、原発以外の政策から判断して投票するとしますと、脱原発陣営の得票率は、必ずしも脱原発賛成率と一致しません。そして、仮に細川陣営が勝利したとしても、先述したように、エネルギー政策は国の権限ですので、都は東京電力の大株主とはいえ、脱原発が実現しないとすると、即、公約違反となります。小泉氏の得意とする一点争点型の選挙ともなれば、選択結果が実現しない場合、事実上、全投票が”死票”と化すのです。都政に対する信頼性の喪失が、第4番目の問題点です。

 以上に述べたように、都知事選挙を”脱原発選挙”と化すことは、郵政民営化を争点として選挙で大勝した過去の成功例の再現を狙う小泉氏のアイディアなのでしょうが、今度ばかりは状況が違うのですから、この手は使えないのではないでしょうか。都知事選は混迷を深めておりますが、原発一点争点化は、東京都のみならず、国政にも混乱や対立をもたらしかねないと思うのです。

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コメント (12)
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