万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ホロコースト犠牲者追悼式典―ユダヤ人は唯一の被害者か?

2014年01月29日 15時35分55秒 | 国際政治
スピルバーグ監督「虐殺忘れるな」…国連で演説(読売新聞) - goo ニュース
 ユダヤ系米国人であるスティーブン・スピルバーグ監督は、ホロコーストの犠牲者を追悼する国連の式典で、”虐殺を忘れるな”と呼びかけたそうです。ホロコーストの記念式典ですので、スピルバーグ監督は、ナチスによるユダヤ人虐殺を念頭に演説したのでしょうが(訂正:ルワンダ虐殺と何故か”南京虐殺”には触れたらしい…)、ユダヤ人だけが特別な犠牲者なのか、しばし考えさせられます。

 世界各地に残る記録や史書等は、戦争の度に虐殺が繰り返されてきたことを物語っています。ヘロドトスの『歴史』にも、敵国の住民を女性だけを残して全て虐殺してしまったとする記述も見られます。古代のみならず現在においても、チベット人やウイグル人などの人々は、紛れもない”ジェノサイド”の犠牲者であり、中国政府の手によって今なお組織的に虐殺され続けているのです。そして、隠れた虐殺も、もしかしますと世界のどこかで起きているかもしれません。ユダヤ人虐殺は、確かに人類史上の悲劇でありましたが、そのユダヤ人もまた、被害ばかりを言い立てられない面もあります。ユダヤ人思想家のマルクスが生み出した共産主義は、暴力革命を説いて自国民を虐殺することをも正当化しました(ロシアの共産主義者の大半は、ユダヤ人であったとも…)。また、ウクライナで多数の餓死を招いたソ連邦によるホロモドールを記録するために開設された記念館に展示されていた写真が、実は、1929年の世界恐慌の時のアメリカのものであったとする事実を知った時には、愕然とさせられました(もちろん、ホロモドールも虐殺の一つ…)。ユダヤ系が支配しているとされる金融における失敗や無責任な投機行為は、間接的ではあれ多くの人々の命を奪っているのです。反ユダヤ主義を唱えたナチスが政権を獲得したことにも、ユダヤ人自身の行動に問題があった可能性もあるのです(ドイツ人多数に国を裏切ったのではないかと疑われてしまった…)。

 ユダヤ人を特別な被害者と見なしたことは、むしろ、ユダヤ人が自分自身を顧みる機会を失わせてしまったかもしれません。虐殺というものが、人間の他者の生命や権利、そして運命に対する冷酷な軽視に起因するものならば、全人類は、特定の民族や集団ではなく、全ての虐殺の犠牲者を等しく悼むべきと思うのです。

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コメント (4)
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