万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アメリカは統合を放棄したのか?-韓国系ロビー問題

2014年01月18日 15時36分47秒 | アメリカ
日本海の韓国呼称併記を=バージニア州上院委が法案可決―米教科書(時事通信) - goo ニュース
 アメリカ国内における韓国系のロビーの活動は凄まじく、バージニア州上院の委員会では、その言い分を認めて教科書に日本海と東海の呼称を表記することを定めた法案が可決したそうです。本会議での採択の行方は不透明ですが、この事件、アメリカの国家としての統合が弱体化しつつあることの兆候なのかもしれません。

 連邦政府は、日本海の単独表記を表明しておりますので、国家統合の観点からしますと、併記決定は、教科書に関する権限を介して、連邦と州との間に距離が生じたことを示しています。併記案に賛成票を投じた議員達は、韓国系住民への配慮を理由として述べておりますので、この理由が通用するならば、将来的には、各州ともに、住民の民族構成によって法律の内容に相当の違いが発生する可能性もあります。また、国民統合の観点から見ますと、本法案の成立は、全アメリカ市民が地名や歴史を共有しなくてもよいことを、公式に認めたようなものです。同一の物事に対して、各州が住民の要請によって違う名称を付けますと、全国レベルでは、市民間のコミュニケーションの阻害要因となります(韓国系米国市民が”東海”と呼んでも、バージニア州以外に居住する米国市民は、何処の海であるのか理解できないのでは…)。また、”歴史観”の対立から、法的には共にアメリカ市民でありながら、出身国の違う市民の間で、深刻な対立が起きるかもしれません。さらには、名称や歴史認識に飽き足らず、人口が増しつつある中国系米国人も加わって、中国語や韓国語の公用語化を求める日が訪れたとしたら、その対処に困惑することになるでしょう。アメリカを統合してきた”自由と平等”の理想は都合よく解釈され、中国系や韓国系米国市民の自国中心的な要求を受け入れることを意味してしまうのですから…(分裂作用へ…)。

 多民族国家には、住民の多様性に起因して分離に向かいやすいという問題点がありますが、資金提供や票に目がくらんで韓国ロビーの要求を受け入れた州や地方自治体の議員の方々は、その行く先を見通しているのでしょうか。この法案は、地方レベルの問題に過ぎないと見なされつつ、その実、アメリカ合衆国全体の将来像に関わる連邦レベルの問題でもあると思うのです。

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コメント (8)
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