万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ヘーゲル理論に基づく国際陰謀の推理-三つ巴が”止揚”される結果とは

2014年01月12日 16時13分28秒 | 国際政治
 第二次世界大戦前夜における国際情勢は、およそ、自由主義国、共産主義国、全体主義国の3陣営による三つ巴であったことは、以前のブログで指摘しました。仮に、ヘーゲル理論に基づいた国際陰謀が存在するとしたら、この思想上の三つ巴は、どのような未来を描くのでしょうか。

 ヘーゲルは、相互に矛盾するものが止揚することにより、より高次のレベルに到達する過程を、弁証法を以って観念的に理論化しました(マルクスも影響を受けている…)。この理論に基づいて、先の三つ巴に関する陰謀の内容を推測してみますと、興味深い仮説を得ることができます。フランス革命に際しては、自由、平等、フラタニティ―が、スローガンとして掲げられました。フラタニティ―とは、日本語では”博愛”と訳されますが、原義に基づけば”兄弟愛”です。つまり、特定の集団内部の成員間に限定した仲間意識に基づく”友愛”を意味しており、ナショナリズムもその一つに数えることができます。

 その推理とは、相互に矛盾すると指摘されている三つの価値、”自由、平等、フラタニティー”を、それぞれ、自由は自由主義、平等は共産主義、フラタニティ―は全体主義として割り振ったのではないか、というものです。そして、仮に、陰謀者が善意の者であるのならば、善意の陰謀者は、これらの3勢力を相互に対立させることを通して、自由、平等、フラタニティ―という三つの価値がヘーゲルが主張するように高次に止揚されて調和されるのではないか、と期待したのかもしれません。

 しかしながら、陰謀者が悪者であった場合、陰謀の結果も邪悪なものとなります。3つの矛盾する価値の相互対立の結果は、現実には、必ずしも高次のレベルに止揚するとは限らず(無限にある可能性の一つに過ぎない…)、逆に低次のレベルに堕ちることも当然にあり得るからです。この視点から全世界を巻き込む悪意の”陰謀論”を組み立ててみますと、陰謀者は、これらの3つの価値を代表させる三つの対立する勢力をつくって、相互に相手の真の価値を壊させることになります。その結果、これらの諸価値は、悪しき部分のみが結合された形で残って低次元化を起こします。すなわち、強者の”自由”の最大化と、搾取される弱者の”平等”と、強者にのみ限られた”友愛”という…。つまり、ジョージ・オーウェルが描いた『1984年』の世界に行き着くかもしれないのです(”金融資本による一党独裁”とも…)。

 もちろん、上記のシナリオは筆者の推測に過ぎませんが、現実を観察しておりますと、悪意の陰謀の存在を完全に否定しきれないところがあります。仮に19世紀の理論に基づく陰謀があったとしても、21世紀の叡智を以って、これを過去のものとして葬り去るべきではないかと思うのです。

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コメント (6)
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