南シナ海問題仲介に意欲=米越首脳、北朝鮮問題など協議
トランプ米大統領は、アジア歴訪第4番目の訪問国であるベトナムにおいて、南シナ海問題に関する極めて微妙な発言をいたしております。その発言とは、「仲介や仲裁が必要なら、いつでも知らせてほしい」というものです。
南シナ海問題については、国連海洋法条約第15部に基づくフィリピンの提訴により常設仲裁裁判所において裁判が行われ、2016年7月12日に、中国の主張する「九段線」等を完全に否定する判決が下されております。トランプ大統領の上記発言の真意は不明ですが、仮に、トランプ大統領の云う“仲介や仲裁”が、同判決を白紙にして新たにアメリカが仲裁の役割を担うという意味であるならば、国際社会は重大なる危機を迎えます。言わずもがな、それは、国際法秩序の事実上の崩壊をもたらすからです。
“敗訴”となった中国は、仲裁裁判の判決を“紙屑”扱いしておりますが、アメリカまでもが同判決の効力を否定するとなりますと、米中揃って国際法秩序を蔑にしたことになります。云わば、中国が提案した“新たな大国関係”にアメリカが同意したようなものであり、先に批判的であったロシアを加えますと、軍事大国3国が法の支配の否定において揃い踏みとなるのです。法というものが、強きも弱気も等しく権利を保障する存在であることを想起しますと、大国による法の無視ほど中小国にとりまして危険な状況はありません。国家間の軍事力に著しい差がある場合には、“話し合い”という平和的手段も、軍事力を背景とした脅しの場となるか、得てして政治力学に従うのが常です(強国が弱小国の正当な権利を奪う事態に…)。この危険に満ちた状況が、今まさに出現しようとしているかもしれないのです。
南シナ海問題も、アメリカが誠実な仲介や仲裁役を務めたとしても、米中協力の下では、中国の主張を配慮せざるを得なくなることでしょう。上記の国際仲裁で否定された「九段線」が完全、あるいは、部分的に復活し、法的、並びに、歴史的根拠が皆無であるにも拘わらず、中国は、南シナ海で一定の権益を確保することでしょう(仮に、尖閣諸島問題でも同様の方法が提案されるとすれば、日本国は、中国に対して同島の凡そ半分を割譲させられる可能性がある…)。中国は、公海まで侵奪しているのですから、この行為がアメリカの仲介や仲介において許容されれば、その被害は、東南アジア諸国のみならず、国際社会全体に及びます。また、トランプ大統領の発言は、“仲介や仲裁の必要”がなければ、アメリカは介入しないと言うメッセージと解される可能性もあり、南シナ海問題からアメリカを排除したい中国は、陰でほくそ笑んでいることでしょう。
本来であれば、アメリカを始めとした国連安保理常任理事国が判決の執行を引き受けてもよいぐらいなのですが、同大統領の発言が以上の意味であるならば、事態は至って深刻なのですが、別の解釈も成り立たないわけではありません。何故ならば、常設仲裁裁判所での判決は、直接には領有権問題には踏み込んでいないからです。つまり、同判決は、国連海洋法条約上の権利上の争いについては判断を示したものの、南シナ海における各国の領有権争いは未解決であり、この解決のために、先の仲裁判決を判例としつつ、アメリカ大統領が仲介や仲裁を引き受けるとする文脈であれば、同大統領の発言は、上記の危機的状況を招くことはないのです。トランプ大統領の本意が後者であることを願うばかりなのです。
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トランプ米大統領は、アジア歴訪第4番目の訪問国であるベトナムにおいて、南シナ海問題に関する極めて微妙な発言をいたしております。その発言とは、「仲介や仲裁が必要なら、いつでも知らせてほしい」というものです。
南シナ海問題については、国連海洋法条約第15部に基づくフィリピンの提訴により常設仲裁裁判所において裁判が行われ、2016年7月12日に、中国の主張する「九段線」等を完全に否定する判決が下されております。トランプ大統領の上記発言の真意は不明ですが、仮に、トランプ大統領の云う“仲介や仲裁”が、同判決を白紙にして新たにアメリカが仲裁の役割を担うという意味であるならば、国際社会は重大なる危機を迎えます。言わずもがな、それは、国際法秩序の事実上の崩壊をもたらすからです。
“敗訴”となった中国は、仲裁裁判の判決を“紙屑”扱いしておりますが、アメリカまでもが同判決の効力を否定するとなりますと、米中揃って国際法秩序を蔑にしたことになります。云わば、中国が提案した“新たな大国関係”にアメリカが同意したようなものであり、先に批判的であったロシアを加えますと、軍事大国3国が法の支配の否定において揃い踏みとなるのです。法というものが、強きも弱気も等しく権利を保障する存在であることを想起しますと、大国による法の無視ほど中小国にとりまして危険な状況はありません。国家間の軍事力に著しい差がある場合には、“話し合い”という平和的手段も、軍事力を背景とした脅しの場となるか、得てして政治力学に従うのが常です(強国が弱小国の正当な権利を奪う事態に…)。この危険に満ちた状況が、今まさに出現しようとしているかもしれないのです。
南シナ海問題も、アメリカが誠実な仲介や仲裁役を務めたとしても、米中協力の下では、中国の主張を配慮せざるを得なくなることでしょう。上記の国際仲裁で否定された「九段線」が完全、あるいは、部分的に復活し、法的、並びに、歴史的根拠が皆無であるにも拘わらず、中国は、南シナ海で一定の権益を確保することでしょう(仮に、尖閣諸島問題でも同様の方法が提案されるとすれば、日本国は、中国に対して同島の凡そ半分を割譲させられる可能性がある…)。中国は、公海まで侵奪しているのですから、この行為がアメリカの仲介や仲介において許容されれば、その被害は、東南アジア諸国のみならず、国際社会全体に及びます。また、トランプ大統領の発言は、“仲介や仲裁の必要”がなければ、アメリカは介入しないと言うメッセージと解される可能性もあり、南シナ海問題からアメリカを排除したい中国は、陰でほくそ笑んでいることでしょう。
本来であれば、アメリカを始めとした国連安保理常任理事国が判決の執行を引き受けてもよいぐらいなのですが、同大統領の発言が以上の意味であるならば、事態は至って深刻なのですが、別の解釈も成り立たないわけではありません。何故ならば、常設仲裁裁判所での判決は、直接には領有権問題には踏み込んでいないからです。つまり、同判決は、国連海洋法条約上の権利上の争いについては判断を示したものの、南シナ海における各国の領有権争いは未解決であり、この解決のために、先の仲裁判決を判例としつつ、アメリカ大統領が仲介や仲裁を引き受けるとする文脈であれば、同大統領の発言は、上記の危機的状況を招くことはないのです。トランプ大統領の本意が後者であることを願うばかりなのです。
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