万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米朝会談-如何なる方法で北朝鮮を非核化するのか

2018年03月11日 16時07分19秒 | 国際政治
IAEAの北朝鮮査察費用負担へ 日本、人員や機材調達の3億円超
 アメリカのトランプ大統領は、米朝首脳会談の行方については楽観視しているようです。おそらく、北朝鮮は、検証可能な形での核放棄に応じると読んでいるのでしょう。

 仮に、北朝鮮が核放棄を決断するとしますと、次なる問題は、如何にして合意の核となる“検証可能”を確保するのか、という手段、及び、手続きに移ります。そこで浮上しているのが、IAEAによる特別査察官の北朝鮮への派遣です。IAEAによる特別査察は、過去において北朝鮮が国外退去の処分としたことから日米中ロ韓による非核化協議の枠組であった六か国協議が破綻する原因ともなりましたが、今日、再びこの方法が選択肢の一つとされているのです。

 もっとも、IAEAによる特別査察方式では、完全なる核放棄には至らず、核開発の凍結に留まる可能性もあります。過去の特別査察においても、査察官のその主たる任務は核施設の停止、及び、封鎖状況の確認であり、実力行使による非核化ではないからです。このことは、北朝鮮の独裁者が決断すれば、前回と同様に、何時でも合意を反故にして核開発を再開できることを意味します。また、如何なる例外も認めない無条件査察でない限り、秘密施設における核開発を防ぐこともできません。軍事独裁国家である北朝鮮が、山岳部や地下を含む全土において核査察を許すとも思えないからです。言い換えますと、過去と同じ手法では、北朝鮮に三度も騙されることとなります。

 過去の失敗を繰り返さないためには、幾つかの方法が考えられます。第一の方法は、IAEAの査察方式ではなく、米軍が非核化を担当する特別部隊を結成し、北朝鮮の全土を隈なく調査した後に、秘密施設等を含む全ての核施設を破壊すると言うものです。この方法では米軍の実力行使を伴いますので、最も確実な非核化の方法です。

 上述したIAEAの特別査察をさらに厳格化した上で、北朝鮮側が合意を反故にした場合の軍事制裁を明確化するのが第二の方法です。この方法において特にポイントとなるのは、非核化の保障措置、即ち、軍事制裁という合意違反に対する罰則措置の明確化です。従来の方法では、北朝鮮がIAEAの査察官を国外に追い出した時点で、国際社会はお手上げ状態となりました。同手法を踏襲したのでは、北朝鮮に時間的猶予を与えるのみとなりますので、今度ばかりは合意違反に対して明確な歯止めをかける必要があります。

 第三の方法は、比較的中立的な国や軍事機構等に北朝鮮の核施設破壊を任せるというものです。おそらく、米軍が単独で北朝鮮領内に部隊を直接に展開すれば、北朝鮮のみならず、そのバックに控える中国やロシアからの強い反発も招く可能性があります(日本国の自衛隊でも反発が予測される…)。そこで、北朝鮮の非核化を担う多国籍部隊の結成を定める国連安保理決議を成立させることができれば、国際社会の合意と監視の下で同作業を実施することができます(NATOやEU等も候補に挙がるかもしれない…)。中国は、自らこの作業を買って出る可能性もありますが、同国はもとより北朝鮮の同盟国であり、また、国家としての信頼性も低いことから、同作業を任せるに適した国ではありません。

 日本国政府は、IAEAによる特別査察が選択される場合に備えて、既に、3億円ともされる初期の準備費用の負担を表明しております。しかしながら、より確実に北朝鮮を非核化するためには、上記の案を含め、様々な手法があるはずです。米朝会談は5月までに開催される予定なそうですが、それまでの間、アメリカ、並びに、日本国を含む国際社会は、非核化の手法について“詰めの作業”を行うべきではないかと思うのです。

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コメント (4)
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