万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米朝首脳会談仲介国の韓国は“誠実なメッセンジャー”なのか?

2018年03月12日 15時55分42秒 | 国際政治
金委員長がトランプ氏に伝えた「特別メッセージ」=韓国で関心高まる
報道に拠りますと、トランプ米大統領は、北朝鮮側からの米朝首脳会談の申し入れに対して、二つ返事で承諾したと伝えられております。かくも同大統領がトップ解決に期待を寄せた背景には、韓国が派遣した特使団が伝えた非公開とされる北朝鮮側からの“特別メッセージ”に気をよくしたためと推測されます。

 口頭で伝えられたとする北朝鮮側のメッセージの内容は詳らかではなく、おそらく“米側が望む非核化は可能”というものなのかもしれません。しかしながら、あくまでも北朝鮮側からの“伝言”であり、金正恩委員長からの親書と言った文書形式ではないところに一抹の不安を覚えます。何故ならば、古今東西を問わず、仲介者が伝言の内容を換えてしまうケースがないわけではないからです。

 伝言に加筆や改竄が行われる理由は状況によって様々ですが、対立関係にある当事者の双方を対談の場に引き出したり、合意形成を促すことが目的の場合もあれば、両者の対立を仲介者が自らに有利な方向に利用するためである場合もあります。実のところ、日本国の歴史にもその事例があり、江戸幕府の対李氏朝鮮の交渉窓口となっていた対馬藩は、両国の間を取り持つために、双方が合意可能なレベルに落とし込むように伝言内容を巧みに“調整”していました。時には、内容の違いが発覚し、幕府から詰問されたり、トラブルとなることもあったのですが…。些か不名誉なお話かもしれませんが、この事例からは、外交交渉の大役を担っていた対馬藩が、紛糾しがちな日朝の間で苦しんだ様子が窺えます。

 翻って今般の南北会談から米朝首脳会談への流れにおいて韓国が重要なメッセンジャー役を担っている点に注目しますと、先ずは、南北会談で北朝鮮側から託されたとされる“特別メッセージ”、即ち、金正恩委員長の真意なるものを正確に掴む必要があります。南北会談における北朝鮮側の実際の発言とトランプ米大統領に伝えられた“特別メッセージ”との間には違いがあるかもしれないからです。そして、仮に内容に違いがあるとすれば、それは、何としても話し合い解決に導きたい文大統領が独断で書き換えたのか、それとも南北が共謀して書き換えを行ったのかを確かめる作業も要します。あるいは、アメリカを騙すために、北朝鮮が、敢えて真意とは異なる内容のメッセージを、口頭伝達という逃げ道を用意した上で、韓国に託した可能性も否定はできません。

 何れにしましても、トランプ大統領の高揚した発言からしますと、少なくとも韓国の特使団は、北朝鮮の急転直下とも言える“変身ぶり”を“特別メッセージ”として伝えたのでしょう。しかしながら、謀略が渦巻いてきた朝鮮半島の歴史に鑑みますと、メッセンジャーを介した口頭伝言には要注意であり、米朝両首脳が直接に対峙する会談では、トランプ大統領が、相手方との認識の違いに唖然とさせられる展開もあり得ないわけではないように思えるのです。

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