万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

出雲市の外国人呼び込み政策の波紋―地方自治体と国の国境管理権

2018年03月05日 11時26分57秒 | 日本政治
 昨日3月4日の晩に、NHKのニュース7を視ておりましたところ、トップ映像として、地方自治体における外国人人口の増加を報じておりました。全般的に地方自治体における永住外国人人口が増加傾向にあるとする内容でしたが、特に驚愕させられたのは、出雲市の取組みです。

 出雲と申しますと、年に一度、神無月には八百万の神々が集う日本国の神話的な世界の舞台でもあり、出雲大社の所在地としても知られております。それ故に、国民の関心度も高いのですが、出雲市では、目下、少子高齢化による住民の人口減を補い、地方経済を活性化するために積極的に外国人を受け入れ、その定住を進めているそうです。同市の市長の談として、人口の30%までの外国人人口の増加を目指すということですから驚きです。

 地方振興策としての外国人呼び込み政策は、出雲市に限ったわけではありませんが、30%という高い目標設定は、一般の日本国民の目には脅威に映っても不思議ではありません。凡そ三分の一に当たる30%とは言いましても、一般的には移民系の家庭の出生率は高く、十数年もすれば、過半数の50%を容易に越えてしまうからです(一般の日本人がマイノリティーに転落…)。そして、この問題は、地方自治体による移民政策が、国民全体としてのコンセンサスを要さずして独り歩きしてしまうリスクをも示唆しています。

 イギリスのEU離脱決定の最大の要因は、EUにおける人の自由移動の原則にありました。域内では、国籍に拘わらず、自由に加盟国間を移動できるため、イギリスの国境管理の権限を侵害するとする認識が強まったのです。言い換えますと、欧州統合が国家統合を破壊するという深刻な問題を引き起こしたのです。その一方で、EUでは、従来、一加盟国における積極的な移民受入政策が他の加盟国の移民規制政策を無効化してしまう問題が議論されてきました。加盟国一国で入国が許可された外国人は、その後、どの加盟国に自由に移動しても構わないからです。この問題も、人の自由移動の原則に起因しており、EUレベルでの国境管轄権を強化する根拠ともなったのですが、何れであれ、EUの事例は、‘一部の構成国の移民政策が全体、あるいは、他の全メンバーに与える深刻な影響’という問題を提起しているのです。

 こうしたEUが提起した問題点を日本国内に当て嵌めて考えて見ますと、事の重大さが理解できます。何れかの地方自治体が積極的に移民受入政策を実施した場合、日本国内では当然に移動の自由が許されていますので、一旦、永住権を獲得した移民は、以後、日本全国何処にでも移住できるからです。一つの地方自治体が自らの自治体のみを対象として同政策を実施したとしても、その影響は、他の全ての地方自治体を含む全国に及んでしまうのです。

 外国人受け入れ政策は、地方自治体レベルで実施されているのが現状のようですが、長期的には、影響の全国的な波及性を考慮しますと、“移民に関連する政策権限を地方に認めるべきか、否か”という政策権限の所在の問題は、国政レベルにおいて提起されて然るべきなのではないでしょうか。まさか出雲市が、大和朝廷ならぬ外国や国際組織に対して“現代版の国譲り”を行っているとは思いたくないものです。

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コメント (10)
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