万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日朝首脳会談には慎重さを要するのでは-拉致被害者が取引材料となるリスク

2018年03月14日 14時17分39秒 | 国際政治
日本政府、北朝鮮との首脳会談を模索へ=政府関係者
 米朝首脳会談の5月までの開催が予定される中、日本国政府内でも、この一連の流れを受けて日朝首脳会談の開催を探る動きがあるそうです。拉致事件の解決が独自開催の理由として説明されておりますが、状況次第では、拉致被害者が取引材料とされるリスクがあるように思えます。

 米朝首脳会談の席が、北朝鮮による事実上の“無条件降伏”の場を意味し、アメリカの要求通りに検証可能な形で非核化が実現するならば、日本国政府は、その余勢を駆って日朝首脳会談において拉致被害者の帰国を強硬に要求することができることでしょう。アメリカが事前に日本国政府の対北拉致事件解決要求を承認していれば、日朝首脳会談は、米朝首脳会談と同様に成功裏に終わるはずです。

 しかしながら、識者等の凡その見方は上記のシナリオとは違っています。たとえ基本方針として北朝鮮の非核化が米朝間で合意されたとしても、良くてアメリカ本土の脅威にならない程度の核・ミサイル開発の暫定的な凍結となるのではないか、とする見方が有力です。イラクやリビアの事例を教訓としている北朝鮮が検証可能な形で核を放棄するはずはなく、条件闘争の結果次第では、北朝鮮は、一定の範囲で計画を維持するか、あるいは、何らかの“あめ”を見返りとして受け取ると見ているのです。そして、最悪のケースとして、またしても過去の失敗を繰り返し、時間稼ぎに利用された挙句に北朝鮮によるICBM実戦配備が実現してしまうとする悲観的な予測もあるのです。

 仮に、アメリカが北朝鮮を捻じ伏せたのではなく、後者の予測通りに米朝首脳会談が両国首脳による“ディーリング”の場となるならば、北朝鮮もまた何らかの要求を持ち出すはずです。おそらく、上記の核・ミサイル開発の凍結に加えて、“金王朝”と称される軍事独裁体制の保障や米朝関係の正常化などなのでしょうが、この時、日本国の拉致問題が絡んでくるとなりますと、北朝鮮側は、米朝会談では触れないとしても、日朝会談においてその見返りを日本国に求める可能性があります。言い換えますと、拉致被害者の帰国は北朝鮮の手の内にある交渉カードの一枚となり、日米側は、このカードを北朝鮮に切られた場合、何らかの譲歩を余儀なくされかねないのです。それは、凍結方式の容認であるかもしれませんし、北朝鮮は、常々、日本国から資金を引きすチャンスを窺っていましたので、莫大な経済支援の提供かもしれません(事実上の人質に…)。

 こうしたリスクを考慮しますと、拉致事件と核・ミサイル開発の両問題の解決とは、一先ずは切り離しておき、同一の交渉テーブルには載せない方が安全なように思えます。“バスに乗り遅れるな”式で首脳会談の開催、並びに、拉致問題の解決を急ぐと、無法国家である北朝鮮を利することになりかねないのですから。拉致問題は、北朝鮮危機に一定の見通しが付いた時点において、筋の通った解決を目指すべきではないかと思うのです。

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コメント (2)
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